経営強化・起業

エンジェル税制

2020年1月内容改訂

起業しよう!——起業家がそう意気込んで事業をスタートさせるとき、最初につまずくのは資金の問題です。そこで、エンジェル投資家の出番です。エンジェル投資家とは、いわゆるベンチャー企業のために資金を援助するまさに"天使のような"個人投資家のこと。国は起業家やエンジェル投資家を税制面から応援するために、「エンジェル税制」という制度を用意しています。

エンジェル税制は、少額投資家の間でも広がりつつあります。そこで、政府は次世代のイノベーションの担い手であるベンチャー企業に対する資金強化のため、令和2年度税制改正で12年ぶりにエンジェル税制を見直すことを決めました。

「エンジェル税制」とは

「エンジェル税制」とは、租税特別措置法と中小企業等経営強化法に基づいて、要件を満たすベンチャー企業に対して個人投資家が「1.投資するとき」、「2.その株式を譲渡するとき」にそれぞれ、所得税の優遇を受けられる制度です。

「エンジェル税制」の目的は、創業促進による経済活性化の観点から、ベンチャー企業に株式投資を行う個人投資家に対して税制を優遇し、個人投資家から起業家への資金の流れを作ることです。対象はあくまでも個人投資家で、法人からの出資は対象ではありません。

また、「エンジェル税制」では以下の4種類の投資方法があります。投資方法により手続きが変わりますので、ご注意ください。認定クラウドファンディング業者は、令和2年度税制改正で追加されることになりました(ただし、適用開始時期は現時点では不明です)。

「エンジェル税制」の優遇措置

「エンジェル税制」で個人投資家が受けられる税制優遇措置は、大きく分けると次の2パターンがあります。

1.投資時:ベンチャー企業へ投資した年に受けられる優遇措置

個人投資家がベンチャー企業へ投資する時点での優遇措置には、次表の(1)と(2)があります。会社設立から5年未満(3年未満から改正)のベンチャー企業は、(1)と(2)のうちいずれか有利な方を選択できます。会社設立後5年以上10年未満の企業は、(2)のみ適用が可能です。

2.株式売却時:未上場のベンチャー企業株式を売却し、損失が発生した年に受けられる優遇措置

個人投資家が未上場ベンチャー企業株式を譲渡する時点で損失が生じてしまった年の確定申告では、次の所得減税制度が設けられています。

(1)その年の他の株式譲渡益とベンチャー企業株式の損失を相殺(通算)できる
(2)(1)で相殺しきれなかった損失を3年間繰り越すことができる

通常、(2)3年の損失繰越は未上場株式では認められていませんが、「エンジェル税制」では特別に認められます。

「エンジェル税制」の対象者

次のとおりエンジェル税制には、優遇措置AとBがあり、個人投資家による資金の払込期日時点で、ベンチャー企業と個人投資家それぞれに適用を受けるための要件があります。

〇ベンチャー企業の要件

優遇措置A

優遇措置B

設立5年未満の中小企業※1
(→3年未満の中小企業から改正)

設立10年未満の中小企業※1

営業キャッシュフロー赤字

新しい事業活動をする会社であること※2

新しい事業活動をする会社であること※2

大企業の子会社等でないこと

大企業の子会社等でないこと

※1 中小企業は、中小企業基本法の第2条で定められている中小企業者と同様の定義です。“中小企業等経営強化法”第2条第1号から第5号に定義する次の中小企業のことをいいます。

出典:中小企業庁「エンジェル税制の対象要件」

※2 投資するベンチャー企業の設立経過年数により要件が異なりますのでご注意ください。

〇個人投資家の要件
(1)金銭出資により対象となるベンチャー企業の株式を取得していること
(2)投資先のベンチャー企業が同族会社(親族等で50%超保有する会社)の場合は、株式保有割合が上位3位までの株主グループに所属していないこと。

このように、適用を受けるためにはさまざまな要件を確認する必要があります。また、関東経済産業局では、「エンジェル税制要件判定シート」を作成しています。質問に答えてボタンをクリックしていくと、エンジェル税制の適用可否を判定することができます。適用を受けられる見込みがある場合には、必要書類一覧も確認できますので、ぜひ活用してみてください。

「エンジェル税制」の手続きの流れ

個人投資家が「エンジェル税制」の適用を受けるためには、ベンチャー企業と個人投資家が基本的にはそれぞれ次のステップに従って手続きをすることになります。

ステップ1と2は、ベンチャー企業が主体となって手続きを進めます。都道府県とは、ベンチャー企業の本社が所在する都道府県です。確認に必要な期間は原則1ヵ月程度とされていますが、通常は2週間程度で確認可能です。令和2年度税制改正では、認定を受けたファンド(投資事業有限責任組合)やクラウドファンディングの事業者を経由した投資については、企業の要件確認が簡素化されます。

ステップ3は、個人投資家が主体となる手続きです。最終的に「エンジェル税制」で優遇を受けられるのは個人投資家ですので、確定申告にベンチャー企業から交付された書類を添付して確定申告を行うことで、一連の手続きが完了します。

このほか、令和2年度税制改正では、ベンチャー企業がエンジェル税制をより利用しやすくするために、手続きの簡素化が図られることが決まっています。

まとめ

  1. 「エンジェル税制」は、個人投資家からベンチャー企業への資金の流れを税制面でバックアップする制度
  2. エンジェル投資家(個人)は、投資時と株式売却時にそれぞれ税制優遇措置を受けられる
  3. 投資時には、設立後5年未満(令和2年度税制改正で3年未満から改正・適用時期未定)の会社は対象企業への投資額を寄附金控除するか、株式の譲渡所得から控除するか選択可能
  4. 投資時には、設立後5年以上10年未満の会社は、対象企業への投資額を株式の譲渡所得から控除可能
  5. 株式売却時に損失が発生している場合には、他の株式譲渡益と損失を相殺でき、相殺しきれなかった損失は翌年以降3年間、繰越が可能
  6. 「エンジェル税制」には、ベンチャー企業側の要件と個人投資家側の要件がそれぞれある
  7. 手続きは、ベンチャー企業が本社所在地の都道府県に確認申請を行い、個人投資家に確認書を交付して、個人投資家がその確認書を含めた必要書類を確定申告書に添付することで行う
  8. 令和2年度税制改正で、認定事業者であるファンドやクラウドファンディング事業者を経由した投資については企業の要件確認が簡素化される
  9. 令和2年度税制改正で、申請手続き自体の簡素化も図られる