ビジネスQ&A

台湾に化学品を輸出する場合の登録手順と営業秘密の取り扱いを教えてください。

2021年2月2日

台湾から当社製品の化学品の引き合いがきました。交渉のなかで、台湾の商社からCCIPは台湾からしか登録できず、登録には全成分を開示しなくてはならないと言われました。技術情報が流出を防ぐため全成分の開示をしたくなく、対応策を教えてください。

回答

台湾では、既存物質も新規物質も製造または輸入状況により異なる登録義務を課しています。
登録要件を台湾環境保護署(EPA)が、台湾に輸入される化学品が化学物質登録スキームの下で全ての要件に準拠していることを確認する化学品輸入事前確認(CCIP)を開発しています。
「CCIPは台湾からしか登録できず」の意味は、台湾の商社(輸入者)がCCIPで事前確認し、
登録は不可避としたものと思います。貴社には中途半端な説明ですが、自ら登録するので、諸情報を用意することを求めたものと思います。

既存物質は100kg/年を超えてから6か月以内に第1段階登録し、新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法に定められた特定既存物質については指定期間内に第2段階登録をします。
新規物質は、100kg/年を超えることが想定される場合は、90日前までに登録が要求されます。
登録は、100kg/年未満少量登録、100kg/年以上1トン/年未満は簡易登録、1トン以上は標準登録が要求されます。

貴社が代理人を立てて登録することや、一定の条件がありますが、営業秘密条項もあります。

(1)CCIPの仕組み

化学物質の製造または輸入は、所管官庁の承認を得た時点で認められます。このため、台湾環境保護署(EPA)は、台湾に輸入される化学品が化学物質登録スキームの下で全ての要件に準拠していることを確認するために、2016年に化学品輸入事前確認(CCIP)を開発しました。

化學物質登錄制度之輸入管理貨品通關事前聲明確認作業指引(第二版)(中国語)に作業手順が解説されています。また、FAQもあります。

対象は、登録の義務がある場合の事前申請(申告)で、日本企業、台湾の代理人(資格要件があります)や輸入者です。日本企業になり替わって申告を支援するコンサル会社はあるようです。
事前申請(申告)内容は、“作業指引”の3.3項に概要があり、3.4項で詳細項目が示されています。

  1. 国内輸入者(登録者)情報:国内輸入者(登録者)の会社名、住所、連絡先情報など
  2. 商品情報:C.C.Cコード(HSコード)と商品名を含む商品情報
    CCCコードの11桁は輸入申告の情報と同じである必要があり、商品名は輸入申告の「商品名」と同じである必要があります。
  3. 商品含有化学物質情報:新規化学物質、既存化学物質、商品登録コードを取得する必要のない化学物質に関する情報を申請者が記入し、製品ごとに登録する
    1. 新規化学物質:商品に新規化学物質が含まれているかどうかを確認する。新規化学物質が含まれていない場合は、化学物質のCAS番号、中国語と英語の化学物質名、承認された登録コード、成分の割合など、化学物質の関連情報を入力する。
    2. 既存の化学物質:既存の化学物質が含まれているかどうかを確認する。既存の化学物質が含まれている場合は、化学物質のCAS番号、承認された登録コード、成分比率など、化学物質の関連情報を入力する。

「CCIPは台湾からしか登録できず」の意味は、台湾の商社(輸入者)がCCIPで事前確認し、登録は不可避としたものと思います。貴社には中途半端な説明ですが、自ら登録するので、諸情報を用意することを求めたものと思います。

(2)登録

貴社の顧客の商社は、台湾でビジネスを展開するために、貴社の化学物質を登録することを検討しているもものと推察します。台湾の化学物質の登録は、EU REACH規則に類似した部分が多くありますが、異なる点もあります。

  • 既存物質と新規物質で義務が違います。
    既存物質は検索できます。

台湾の化学物質登録は、2019年1月16日に「毒性化学物質管理法」を改正した「毒性及關注化學物質管理法(Toxic and Concerned Chemical Substances Control Act:TCCSCA)」で規制されます。

TCCSCAの第4章(化学物質の登録と届出)第30条で以下の規定があります。

  • 毎年一定量の既存化学物質を製造または輸入する者は、所定の期限内に化学物質データの登録を中央管轄当局に申請する。
  • 新規化学物質を製造または輸入する者は、製造または輸入の90日前に化学物質データの登録を中央管轄当局に申請する必要がある。
  • 既存化学物質および新規化学物質(以下、登録化学物質という)は、登録が承認された後に製造または輸入することができる。

新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法(Regulations of New and Existing Chemical Substances Registration )で具体化されています。

(a)新規物質の登録

第5条と第6条に新規物質登録についての規定があります。

  1. 1トン/年以上:標準登録で付表2の情報を提出
  2. 100キログラム/年以上1トン/年未満:簡易登録で付表3の情報を提出
  3. 100キログラム/年未満:少量登録で付表4の情報を提出

登録の種類により提出情報が異なりますが、このあたりはEU REACH規則に類似した部分です。

(b)既存物質の登録

第15条と第16条に既存物質登録についての規定があります。

100キログラム/年を超える既存の化学物質を製造または輸入する場合、超えた日から6か月以内に付表5の第1段階登録で指定された項目に従って化学物質データの登録をします。
なお、100キログラム/年未満でも第1段階登録(自主登録)ができます。
登録データは以下です。

  1. 既存物質の第1段階登録資料
    登録人基本資料
    登録者の身分(代理人など)
    会社名称/住所/電話(内線)/FAX番号/工商登記証番号/・・・
    物質基本識別資料
    CAS Noまたは国家既有化学物質台帳の通し番号
    物質製造/用途資料
    製造・輸入量/物質用途情報
  2. 既存物質の第2段階登録
    第2段階登録は、付表6に特定された物質について、製造、輸入量が1トン/年を超える場合は、標準登録の義務が生じます。
    標準登録は、第1段階登録の時期と年間トン数帯により期限が異なります。
    例えば、2019年12月31日までに第1段階登録を行い、トン数帯が100トン/年以上であれば2021年12月31日が期限となります。
    2020年1月1日に第1段階登録した場合の期限は以下となります。
    1トン以上100トン/年未満:第1段階登録した年の翌年の1月1日から3年以内
    100/年以上:第1段階登録した年の翌年の1月1日から2年以内

(c)代理人

代理人による申請は第2条で以下の要件で認めています。
登録者は、これらの措置に関連する申請または宣言を処理する代理人を任命することができる。代理人は、中華民国の国籍を持つ自然人、または法律に従って設立または登録された法人、機関、または組織である必要がある。
化学物質データの登録を申請する登録者は、身分証明書、会社登録、事業登録、工場登録、またはその他の施設関連文書を提出するものとし、代理人は公証人または認証された任命状も提出するものとする。

(3)営業秘密

新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法の第20条で営業秘密について以下があります。
登録された化学物質情報であって、国防又は企業秘密に関する秘密に係るものは、秘密として取り扱わなければならない。

前各号に掲げる業務上の秘密は、次の各号に適合するものでなければならない:

  1. この種の情報に一般的に関与する者には知られていない。
  2. それは、その分泌的性質のために、実際のまたは潜在的な経済的価値を有する。
  3. その所有者は、その秘密を保持するために合理的な措置を講じた。

第1項の規定により営業秘密と判断された登録情報については、次に掲げるものを保護し、秘密として保持しなければならない:

  1. 登録者の特定。
  2. 化学物質の特定。
  3. 製造又は輸入に関する情報。
  4. 化学物質の使用。

登録者は、次の各号のいずれかに該当するときは、第2項の証拠書類を添えて、秘密情報の保護を申請することができる:

  1. 新規化学物質の登録出願。
  2. 既存化学物質のフェーズ1登録申請。
  3. 既存化学物質の標準登録の申請。
  4. 第14条に基づく既存化学物質のインベントリーに含める3~6ヶ月前。

登録者は、前項の規定により登録及び承認を受けた化学物質の秘密情報の保護を申請しない場合には、その理由を、2の規定に適合する証拠書類を添えて述べ、かつ、登録された新規化学物質の延長申請時又は登録された化学物質について承認された後に、情報保護のため中央権限のある機関に申請することができる。

(4)危害性化學品標示及通識規則

SDSの要求ですが、第18条で営業秘密で、以下が非開示とできます。

  • 有害化学成分名称
  • CAS番号
  • 有害成分濃度
  • 製造者、輸入者または供給者情報

ただ、第18-1条で以下は成分情報の非開示は認めていません。

  1. 急性毒性カテゴリー1、カテゴリー2、またはカテゴリー3。
  2. 皮膚腐食性または刺激性カテゴリー1。
  3. 重篤な眼の損傷または眼の炎症カテゴリー1。
  4. 呼吸器または皮膚感作性。
  5. 生殖細胞の変異原性。
  6. 発がん性。
  7. 生殖毒性。
  8. 特定の標的臓器全身毒性-単一ばく露カテゴリー1。
  9. 特定の標的臓器全身毒性-反復ばく露カテゴリー1。
回答者

中小企業診断士 松浦 徹也

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