ビジネスQ&A

SVHC候補物質非含有の証明は、付属書14収載物質の非含有証明として有効でしょうか。

SVHC候補リストは、その後REACH規則の付属書14、付属書17に収載される認可対象物質として確定すると思います。 
付属書14または付属書17に収載される認可対象物質として確定するとSVHC候補リストからは削除されると思っています。
この場合、サプライヤからSVHC候補リスト物質の非含有証明書を提示することで、付属書14または付属書17の非含有証明になるのでしょうか。

回答

REACH規則の付属書14(認可物質)は、CLS(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation 従来のSVHC候補物質)から特定されます。
認可物質に特定されても、CL(Candidate List)からは削除されず、そのまま残っています。従って、ご質問のCLSとしての「非含有証明書」は、認可物質に特定されても有効であることになります。
一方、付属書17(制限物質)は、CLSとは関係なく、加盟国またはECHAが起案します。ECHAが認可物質から起案することもあります。 
従って、CLSには影響がありません。
付属書17による「制限」は、すべての用途について制限される収載物質もありますが、多くは特定の用途における制限です。制限された用途以外では、使用できます。
そもそも制限物質が非含有であれば、「制限」の義務は満たしますので、制限物質の「非含有証明書」は有効となります。

(i)用語の整理

REACH規則の規制内容を改めて整理してみます。REACHは次の用語からの造語です。
R: Registration 登録、E:Evaluation 評価、A:Authorisation 認可、(R:制限 Restriction)、CH:化学物質 Chemicals
Restrictionは、造語のなかでは明確になっていませんが、SDS(Safety Data Sheet)などによる情報提供の義務と共に重要な義務です。
“R” “E” “A” “R”はそれぞれ、章を分けて規制内容を明確にしています。
なお、CHはChemicalsからの文字ですので、Chとし、REAChと書く場合もあります。

(ii)規制物質の特定手順

“R” “E” “A” “R”の義務と対象物質を整理します。

R: Registration 登録

物質を年間1トン以上輸出する場合は、ECHA(European Chemicals Agency 欧州化学品(物質)庁)に登録しなくてはなりません。

E:Evaluation 評価

登録情報の評価を行い、特定物質についてリスク評価をEU加盟国が分担して行います。この特定物質がCoRAP(the Community rolling action plan:複数年作業プログラム)で、CLS(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation かつてSVHC候補と言われていました)の評価スタート物質の一つになります。
CoRAPは毎年3月頃に発表されますが、向こう3年間の評価計画になっています。

A:Authorisation 認可  付属書14 収載物質が対象

付属書14(認可の対象となる物質)に収載された物質は、認可を受けなければ上市(販売)や使用ができません。
付属書14の認可物質は次の手順で決定されます。
CoRAP(2019年9月現在376物質)や各加盟国からの提案物質(Registry of Intentions)により、リスク評価が行われ、CLSが半年毎に告示されます。
CLSからさらにリスク評価、用途や生産量などを考慮し、認可物質として特定し、付属書14に収載します。2019年9月現在、付属書14には43物質が収載されています。
ただ、認可物質に特定されてもCL(Candidate List)からは削除されず、そのまま残ります。

R:制限 Restriction 付属書17 収載物質の用途の制限

付属書17(危険な物質、混合物、成形品の製造、上市及び使用の制限)には、物質とその用途の制限がEntry No1~No73(途中欠番あり 2019年9月現在)として規定されています。用途の制限は、特定の用途(玩具への使用など)や全面的な使用制限など、物質毎に決められています。
例えば、Entry No28では、一般公衆向けに販売する物質、混合物には「発がん性」物質を特定濃度以上含有させてはならないとし、物質を付録で示している場合もあります。
制限提案は、加盟国によって作成される場合、欧州委員会の要請またはECHAの認可リスト内の物質に対する独自の主導意見で作成される場合があります。加盟国が制限の起案書類を作成する意思をECHAに通知することは法的要件で、ECHAのWebで“Registry of restriction intentions”(48提案 2019年9月現在)として公開されています。
その後、付属書15の一式文書が作成され、リスクアセスメント専門委員会、社会経済分析専門委員会で審議し、欧州委員会で決定します。

(iii)論点の整理

付属書14(認可物質)は、CLS(従来のSVHC候補物質)から特定されます。
認可物質は認可を受けていなければ使用してはならないのですが、基本的には特定物質を除いて0.1%が含有制限濃度です。
認可物質に特定されても、CLからは削除されず、そのまま残っています。従って、CLSの義務もそのまま承継されます。
ご質問のCLSとしての「非含有証明書」は、認可物質に特定されても「非含有」である証明は有効であることになります。
一方、付属書17(制限物質)は、加盟国またはECHAが起案します。ECHAが認可物質から起案することもあります。
従って、CLSには影響がなく、そのままとなります。
付属書17の「制限」は、物質によってはすべての用途の制限もありますが、多くの物質は特定の用途の制限で、制限された用途以外は、使用できます。
そもそも制限物質が非含有であれば、「制限」の義務は満たしますので、「非含有証明書」は有効となります。

「認可」と「制限」は、日本語的イメージからは、「認可」より「制限」が厳しく受け取れますが、REACH規則の義務においては逆です。
「認可」物質は、原則使用禁止で認可申請者のリスク対応を評価し、申請者に限定しし、特定の用途について、認可するものです。
これに対して「制限」は、物質規制ではなく、全面禁止もありますが、特定の用途を規制するものです。例えば、ニッケルはアクセサリのような肌に長時間触れる用途は禁止するが、産業機械の内部部品は禁止しない、などです。

「認可」と「制限」は、異なる意図の規制です。
また、規制検討のスタート物質も異なるものです。

回答者

中小企業診断士 松浦 徹也