ビジネスQ&A

NC工作機械導入のメリット・デメリットを教えてください。

熟練工の高齢化や、取引先の価格引き下げ要求が高まったことにより、少ない人材や若手人材でも高度な加工や、低コストでの加工を行う必要性が高まってきています。そこで当社も、NC工作機械の導入を考えています。NC工作機械を導入することによるメリットおよびデメリットを教えてください。

回答

複雑な形状のものを多量に生産することで、コストダウンが図れるメリットがあります。しかし、設備投資や独特の段取りが発生することにより、新たな費用も発生します。企業の生産特性に合った導入を行うことで、NC工作機械の特徴を最大限に発揮することが期待できます。

顧客からの価格要求・短納期要請、輸入製品との競合等、企業を取り巻く環境は厳しい状況です。企業内部の事情においても、熟練工の高齢化や、人材が不足するなかで、高精度の製品を加工し、短納期要求に対応していくための手段の一つとして、NC工作機械を導入し、生産活動を行う方法があります。

ただし、NC工作機械を導入してもすぐに高精度な加工や、低コストな生産を行えるわけではありません。なお、間違った設備の導入を行うと、かえって企業の収益を圧迫することになります。

【メリット】

最大のメリットは、熟練加工を機械がしてくれることです。NC工作機械には、以下のようなメリットが有ります。

1.品質面

従来の工作機械では、工具の運動は作業員のハンドル操作によって行っていますが、これに対してNC工作機械は、その運動を加工指令情報によって自動制御しています。

プログラムに基づいて2軸以上を同時に正確に動かすことができるため、円弧などの曲面や複雑な形状の加工を、高精度で行うことができます。よって、熟練者でなくても水準の高い加工精度を安定して得ることが可能となります。

また、作業の主体が作業者から機械に移るので、疲労による能率の低下や、作り間違いがなくなり、品質の安定化も図れます。さらに、刃物の摩耗や機械精度のムラをプログラムによって補正することも可能になります。

2.量産化やコスト低減

適正に設定された切削条件をプログラムに入力しておけば、機械の能力ぎりぎりのところで常に加工が行えるので無駄な動きがなく、1個当たりの加工時間は短く量産ができます。

さらに、作業者が機械を監視するだけの手待ち時間を有効活用して、複数台の操作を行い、生産高の向上・人件費の低減が図れます。

1台の機械で複数の機械の機能を持つ、マシニングセンタや複合加工機においては、機械間の運搬時間、待ち時間および段取り時間が短縮できます。

なお、切削工具を自動で交換できる機能がある場合は、段取り時間の短縮が図れます。また、ケガキ作業の簡略化ができるので、それに関わる時間、労力が短縮できます。治具が不要になるため、治具類の制作費、製作時間、保管場所、保管費用も減少します。

3.安全面

作業者が直接操作を行う必要がなくなるために、切屑から身を守る位置で操作を行うことができるために、安全が確保できます。

【デメリット】

最大のデメリットは、費用が高いことです。従来の機械の部分に加えて制御を行うNC制御装置、さらに、ソフトウェアが必要になるために、導入コストが高くなります。

そして、従来の段取り作業に加えて複数の刃物の取り付け、NCプログラムの開発が必要となりますので、段取り作業の時間・労力が増えます。加えて、汎用工作機械等の機械加工の技術や知識に加えて、プログラム入力の知識が必要となります。

また、汎用機にはない制御部分の装置が多く存在するため、故障する箇所が増加する可能性が増します。さらに、設備投資額が高くなるため、その資金を回収するための生産高・売上高が見込まれる必要があります。

NC工作機械を導入すると、複雑な形状の製品を繰り返し加工するには、技術や費用面で優位な生産が行えますが、最初の1つ目を加工するための手間は、汎用機に比べて多く必要となります。よって、企業の生産特性に合った導入を検討することが重要になります。

回答者

中小企業診断士 佐伯 昌之

同じテーマの記事