ビジネスQ&A

私の工場内の「ムダ取り」をしたいのですが、どのようにすればよいのですか?

私の会社の工場は、最近どうも効率が低下しているように思います。そこで「ムダ取り」に取り組みたいと思っているのですが、「ムダ」の部分がよく分かりません。どうしたら、「ムダ」な部分が分かるのでしょうか?

回答

工場内にはたくさんの「ムダ」があります。この「ムダ」を見つけるには、「ムダ」を見えるようにすることが大切です。見えないものは分からないのが普通だからです。5S活動や「目で見る管理」を取り入れて、工場内の「ムダ」を見えるようにしましょう。

【「ムダ」は、普通は見えない、分からない】

よく「私は生産についての知識がないから、工場の中に入っても、何が問題なのか、また、「ムダ」を探せと言われても、さっぱり見当もつかない」という話を聞きます。実はその通りなのです。どの工場でも、「ムダ」と文字で書いてある製品や材料、設備などありません。どんなにその業界に詳しい方でも、ただ工場を巡回しているだけでは、「ムダ」を発見することは難しいのが普通です。長い間工場を見つめていても、見えてくることはないでしょう。毎日工場で作業をしている方々ですら、気づいていないのですから、いきなり「ムダ」を取りに工場に入っても、見つかるわけがないのです。

【「ムダ」を見つける方法】

それでは「ムダ」を見つける方法とは、どのようなものなのでしょうか。結論を言ってしまえば、「目に見えるようにする」ことです。要するに、「目で見えないものは改善できない」ということの裏返しだということです。「ムダ」を目に見えるようにするから、その「ムダ」を排除することができるのです。そして、この「目に見える」ようにする具体的な取り組みが、「目で見る管理」といっているものなのです(図1)。

【材料や設備、スペースなどの「ムダ」発見】

たとえば、材料倉庫にあるすべての材料ケースに、赤い札を貼っておき、その材料を使うときに赤い札を剥がすということを決めます。1カ月後、材料倉庫を確認してみれば、1カ月間使わない「ムダ」な材料がどれなのか、ひと目でわかります。同じように、設備にもスペースにも赤い札を貼り、同様のルールで、「使う」ときに赤い札を剥がします。これで、いつまでたっても赤い札が貼られている物や場所が「ムダ」であることが一目瞭然です。

【生産工程の「ムダ」発見】

また、生産工程の「ムダ」はどうでしょうか。まず第1に、生産工程の「ムダ」な箇所、すなわち、改善するべき箇所を見えるようにします。「ムダ」がある工程を見えるようにするのは、生産計画です。生産計画がなければ、計画通りに生産できていない工程が分からないのです。

逆に、計画通りできていない工程を見つけるには、その工程がどこかを見えるようにする生産計画が必要なのです。もちろん生産計画と言っても、ただ単に「納期までの日程計画を記入したもの」ではありません。しっかりと工程分析などを行い、最短リードタイムを考慮したものである必要があります。

このようにして、作成した生産計画(「ムダ」のない生産リードタイム)と実際の作業の実績(実績の生産リードタイム)を比較することによって、「ムダ」のある工程を「見える」ようにしていきます。

【作業の「ムダ」の排除には工夫が必要】

作業の「ムダ」は、材料や設備と違って、「ムダ」が見えても、その「ムダ」の排除には、工夫が必要になります。「ムダ」のある工程が見つかっても、その工程をなくしたら、製品がつくれなくなってしまうでしょうから、単純に工程全体をなくすことはできません。「ムダ」な部分のみをなくさなくてはいけません。もちろん工程のなかの「ムダ」な部分は、工程によって違いがあることですから、方法は1つではありませんが、たとえば、次のような「ムダ取り」例があります。

工場内にある機械には、実に多くの計器類が付属しているでしょう。たとえば、機械の稼動状態を示している計器であれば、その示す値は常に安全値の範囲でなければなりません。この「安全値」をどうやって確認するかが、「ムダ」を取ることにつながるのです。計器が示す「値」を読み取って、その「値」が危険値と比較して問題がないかを確認する作業は、大きな「ムダ」が含まれています。この「ムダ」を取るために、計器の目盛りに赤い線を入れてしまえば、ひと目で、安全値か危険値かが分かるでしょう。また、危険値になったらブザーが鳴る仕掛けを付け加えたら、計器を常に監視している「ムダ」を排除できます(音が鳴ったら、危険値だと分かるから)。

目で見る管理の考え方を示した図 目で見る管理の考え方を示した図
図1 目で見る管理の考え方

このように、「ムダ」を見つけるには、「ムダ」を見えるようにすることが大切です。見えるようにする方法こそが「ムダ取り」の第一歩です。工場内をどんどん「見える」ようにしてみましょう。

回答者

中小企業診断士 小林 弘幸

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