特集
令和4年 年頭所感:豊永厚志・中小機構理事長
2022年 1月 4日
独立行政法人中小企業基盤整備機構
理事長 豊永 厚志
令和4年の新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
昨年は、新型コロナウイルス感染症への対応に終始した1年でした。人やモノの移動が制限され、経済活動の停滞や事業環境の激変により、多くの中小企業・小規模事業者が困難に直面しました。
秋口以降、国内での感染拡大に落ち着きがみられ、徐々に経済活動が再開されているものの、新たな変異株の出現もあり、引き続き予断は許しません。
さらに、相次ぐ自然災害、世界的な半導体・原材料部品の供給不足、資源価格の高騰に加え、我が国の構造的課題である少子高齢化に伴う国内市場の伸び悩み、後継者難や人手不足、デジタル化の遅れといった懸案もあり、中小企業・小規模事業者にとっては、今後も難しい経営の舵取りが求められることが予想されます。
一方、こうした事業環境下においても、事業を継続・発展させていくためには、いかにしてニューノーマルに柔軟に対応し、デジタル、グリーン、レジリエンスといった新たな需要・ニーズを捉え、新サービスの創出、事業の再構築などに取り組んでいくかにあります。今後はポストコロナを見据え、経営環境の変化を前提とした持続的な組織体制の構築、新たな成長・発展に向けた前向きな取組みを進めていくことが重要です。
このような認識のもと、中小機構は令和4年において、以下の事業に取り組んでまいります。
まず、経営環境の変化への対応と事業の継続を図るための支援を着実に行います。新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、新たな設備投資や、IT導入、成長分野への投資や新分野への展開、業態転換等、生産性向上や事業の再構築に前向きに取り組む中小企業・小規模事業者に対して、中小企業生産性革命推進事業や事業再構築促進事業を通じて支援します。ポストコロナを見据え、グリーンやデジタルなど未来社会を切り開くために資する取組みに対しては、新たにグリーン枠などを設けて、重点的に支援します。
また、サプライチェーンや地域経済の中核となる中小企業等の経営力強化を図るため、中小企業経営力強化支援ファンド等を組成し、事業再構築や事業再編の取組みを促進します。
経営者の高齢化に伴う事業承継・事業再生については、新たに「事業承継・引継ぎ補助金」を設けるとともに、引き続き国の中小企業事業承継・引継ぎ支援全国本部及び中小企業再生支援全国本部を担い、関係機関や金融機関と連携を密にしながら、円滑な事業承継、事業の再生のため複合的な支援を展開します。セミナー・フォーラムを通じた情報提供や後継者育成に向けた研修、相談情報を匿名にしたノンネームデータベースの提供により広域マッチングの実現を目指します。
自然災害の発生や感染症拡大の中でも安定的に事業を継続していくため、事業継続力強化計画の策定も引き続き支援します。自社のみで行う「単独型」、組合や連携体など複数の中小企業等による「連携型」での取組みにより、経営の強靱化を図ります。
また、小規模企業の経営者が事業活動を停止した後の生活安定を図るための制度として機能する小規模企業共済、万が一取引先が倒産した際に連鎖倒産を防ぐため貸し付けが受けられる経営セーフティ共済の2つの共済制度を確実に運営し、経営環境の変化への対応の円滑化を図ります。
中小企業経営者・小規模事業者の伴走者としての支援者の育成にも取り組みます。中小企業大学校において、新たに課題設定型の伴走型支援のためのオンライン研修プログラムを提供し、中小企業・小規模事業者が事業環境の変化に柔軟に対応できるようサポートする人材を養成します。
中小機構は昨年、「中小企業SDGs応援宣言」をいたしました。SDGsは企業にとって、事業の持続性を高めることにもつながります。中小企業がスムーズにSDGsを経営に取り入れられるよう、相談窓口の設置、セミナーや研修、特設ページを通じた情報提供、カーボンニュートラルや脱炭素化をテーマとした商談会の開催などにも引き続き取り組みます。
また、デジタル化やIT導入、海外展開といった経営課題に応じたハンズオン支援、アクセラレーション事業「FASTAR」やインキュベーション施設を通じたスタートアップ支援、ビジネスマッチングサイト「J-GoodTech」を活用した国内外企業とのマッチングやECを通じた販路開拓支援など、今後も様々な切り口で中小企業・小規模事業者をサポートしてまいります。
中小機構は、中小企業・小規模事業者の皆様の成長と発展を促進していく使命をもっております。今後も国からの政策要請に加え、中小企業・小規模事業者の多様な支援ニーズに応えるべく、全国各地の中小企業・小規模事業者の支援に取り組む関係団体・士業の皆様や中小企業応援士と力を合わせ、事業に取り組んでまいる所存です。
皆様方におかれましては、この1年が実り多い年になることを心より祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。