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令和5年 年頭所感:角野然生・経済産業省中小企業庁長官

2023年 1月 4日

角野然生・経済産業省中小企業庁長官

経済産業省 中小企業庁 長官
角野 然生

令和5年という新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

昨年は、長期化する新型コロナウイルス感染症の影響に加え、ロシアによるウクライナ侵略や円安による物価の高騰など、多くの中小企業・小規模事業者の皆様が厳しい経営環境にさらされた1年でした。
こうした中でも、全国の事業者の皆様が、事業を継続し、雇用を守り、地域社会を支えていただいていることに、改めて敬意を表し、感謝を申し上げます。

その上で本年は、足下の物価高を乗り越えて事業を成長させ、GXやDXへの対応を含む事業環境の変化に対応するための自己変革に挑戦することが期待されます。日本の雇用の7割、付加価値の5割以上を占める中小企業・小規模事業者の皆様を起点として、投資、イノベーション、所得向上の3つの好循環を起こし、我が国の経済を成長軌道に乗せていくことを目指します。

特に、持続的な成長や継続的な賃上げを実現するためには、資金繰りの支援をはじめとした事業継続の下支えに加えて、「適正な価格転嫁の実現」「生産性の向上」「差別化戦略」の3つが肝であると考えます。

中小企業庁は、公正取引委員会とも連携しながら、本年も価格転嫁対策に全力で取り組みます。今年から300人体制に拡充された下請Gメンに加え、3月と9月の「価格交渉促進月間」とフォローアップ調査、その結果を踏まえた指導・助言の実施などの取り組みを通じて、交渉と転嫁が定期的になされる取引慣行の定着を目指します。また、皆様が創出した価値に適切な対価が支払われるよう、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言の拡大や実効性の向上を進めます。

さらに、新たな設備導入や研究開発などの生産性向上への前向きな投資を、IT導入補助金やものづくり補助金などを通じて支援するとともに、商品やサービスの差別化を図るため、事業を大胆に転換し、付加価値を高める取り組みを事業再構築補助金により引き続き後押ししていきます。また、円安を好機として海外展開を考える中小・小規模事業者の皆様を、「新規輸出1万者支援プログラム」により、事業計画の策定や商品開発から販路開拓までを一気通貫で支援します。

後継者へのバトンタッチやM&Aにより、貴重な経営資源を次の世代に引き継ぐことで、経営者の若返りと相まって、これまでにないチャレンジを引き出すことも大切です。今後は、これまで講じてきた事業承継・引継ぎ支援策に加え、後継者同士のつながりを強化することにより、一層円滑な事業承継を後押しします。
加えて、事業者との対話と傾聴を重ねることで、本質的な経営課題への気付きを与え、自己変革・行動変容を促す「課題設定型伴走支援」を日本全国に展開します。支援ノウハウの共有・蓄積を進め、伴走支援体制のより一層の強化を図ります。

令和5年の干支である「卯年」は一般に飛躍の年と言われますが、とりわけ本年「癸卯(みずのと・う)」は、冬の時代を越えて世の中に希望が芽吹く年と言われます。中小企業・小規模事業者の皆様のチャレンジを後押しし、皆様の希望の実現に全力を尽くしていく決意です。本年が、皆様にとって実りある年となるよう心より祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。