中小タスクが行く!

第27回:時代のニーズをつかむ編

2020年 3月 2日

第27回:時代のニーズをつかむ編 経営のお悩みスバッと解決 中小タスクが行く!

個食化・簡便化という市場ニーズの変化に対応できているか?

イカイ水産の売上高は右肩下がり。このままではいけないと悩むイカイ水産の社長は、スーパーに行き、どのような商品が並んでいるか市場調査をする。そこで見かけたのは1人用鍋の素を大量購入している中小タスク。1人用の商品も人気があるんだなと唖然としている社長に、中小タスクが話しかける。「単身世帯は1990年から2015年の間に約5割も増加し、今も増え続ています。例えばカレー市場では2017年にレトルトカレーがルーカレーのマーケットを逆転。レトルトカレーの購入額が一番多いのが単身世帯です」それを聞いたイカイ水産の社長は「つまり一人で食べる個食化と作る手間がいらない簡便化が進んでいるということか」とつぶやく。中小タスクは「そう、ニーズが変わってきたのです。時代のニーズをくみ取っていかないとダメです!」と力説。

増加し続ける単独世代

未婚率の上昇や、核家族化の流れを受けて、単独世帯(世帯主が一人の世帯)が増加しています。厚生労働省の「平成27年 国民生活基礎調査」によると、2015年の全国の世帯総数は5,036万1,000世帯で、その世帯構造は、「夫婦と未婚の子のみ世帯」が1,482万世帯(全世帯の29.4%)で最も多く、次いで「単独世帯」が1,351万7,000世帯(同26.8%)、「夫婦のみの世帯」が1,187万2,000世帯(同23.6%)となっています。

「単独世帯」は、20年前の1995年には921万3,000世帯だったのが、この20年で46.7%も増加。この流れは今後も続くと見込まれており、国立社会保障・人口問題研究所の予測データによると、2040年には単独世帯の割合は約40%に達するとされています。特に、65歳以上の単独世帯数の増加は顕著です。

【単独世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移(2020年以降は予測)】

図表4-1-1-1 単独世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移(2020年以降は予測)

(出典)2015年まで総務省統計局「国勢調査」2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」(2018)

時代のニーズは「個食化」「簡便化」

世帯構成の変化により、一食分ずつ小分けする個食化、調理の手間のかからない簡便化へのニーズが年々高まっています。

このことが顕著に表れているのが、カレー業界です。株式会社インテージの全国小売店パネル調査によると、2013年以降、個食パッケージされた「レトルトカレー」が徐々に伸長を続け、2017年には初めて「レトルトカレー」が「ルーカレー」を逆転しました(図1)。

【図1】販売規模(インテージ調べ)

【図1】販売規模(インテージ調べ)

また、レトルトカレーの「購入者当たり購入額」が一番高いのも単身世帯となっています(図2)。

【図2】購入者あたり購入額〔円〕(インテージ調べ)

【図2】購入者あたり購入額〔円〕(インテージ調べ)

では、ニーズの変化を受けて検討すべき次の一手は? マンガの続きを見てみましょう。

中小タスクは続ける。「単身者に人気の冷凍食品は購入先をコンビニに限定すると2014年から2018年の5年間で約2倍になっており、私のような未婚の単身者の利用が多いようです。しかし、御社の場合、切り身が2切れ以上入っているものばかり。 これでは単身者は購入しづらく、小売りにも敬遠されます。」それを聞いたイカイ社長、「1切れ入り商品を開発すれば、店舗に導入されやすくなるかも。ただ、製造ラインの整備に割く時間も金も人手も無いし・・・」と躊躇する。中小タスクは「負担が重いのはわかりますが、消費者ニーズの変化に合わせてメーカー側も変化する必要があるのです!」と説得する。それから1年後、中小タスクがイカイ水産を訪問すると、個食用製造ラインを導入し、受注が上がっていると喜ぶイカイ社長の姿が。「それは喜ばしい!」と言いつつ、持参した御飯で試食する気満々の中小タスクであった。

「シーズ発想」ではなく、「ニーズ発想」で

商品開発には、大きく分けて次の2つのアプローチがあります。

  1. 「企業の物語」や「地域の物語」を活かした『シーズ(Seeds)発想』
  2. 「消費者のニーズ」や「地域のニーズ」を想定した『ニーズ(Needs)発想』

中小・小規模事業者では、特定の原材料や素材ありきであったり、自社でつくれるものは何かといった『シーズ発想』を元に商品開発を行う傾向が見られますが、売れる商品をつくるには、『ニーズ発想』を元にしたアプローチが不可欠です。どちらか一方の発想によるのではなく、両者を行き来して商品を練り上げていくことが重要になります。

シーズとニーズ、2つを満たすひとつの商品を考える

ニーズ発想の考え方やこれまで見てきたデータをふまえると、今後は食品関連企業が個食対応を進めることが非常に重要と考えられます。味の追求に熱心な食品メーカーは多いのですが、それと同じくらい適正量目の追求や使いやすさの追求が重要だという認識を持つ必要があるのです。

長期的な視点で、対応を検討

しかし、個食、もしくは簡便対応の商品開発をしようとすると、製造ラインの整備や新設が必要になるなど、企業には重い負担がのしかかります。そのため、大企業に比べて資金力が弱い中小・小規模企業は対応に二の足を踏むことも多いのですが、消費者ニーズが大きく変化した今、対応の必要性は高まってきています。

製造ラインの整備や新設を考える場合は、食品設備機器メーカーに相談するとよいでしょう。ある程度大きさのある工場の新設を考えるなら、エンジニアリング企業に依頼して省力化や省人化について検討してみることも選択肢の1つとなるでしょう。長期的な視点で対応を検討していきましょう。

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