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令和6年 年頭所感:須藤治・中小企業庁長官

2024年 1月 4日

須藤治・経済産業省中小企業庁長官

中小企業庁長官 須藤 治

令和6年という新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

昨年は、新型コロナウイルスが5類に移行し、中小企業の業況判断DIは全産業で約30年ぶり、賃金上昇率も約30年ぶりの高水準を記録するなど、明るい兆しが見られました。しかしながら、円安による物価高や、エネルギー価格の高騰、構造的な人手不足等、多くの中小企業・小規模事業者の皆様は引き続き厳しい側面もあった1年でした。

こうした中でも、全国の中小事業者の皆様が、工夫して事業を営み、雇用を守り、地域社会を支えていただいていることに、改めて敬意を表し、感謝を申し上げます。

さて、明るい兆しもみられる今こそ、大転換の絶好の機会となっております。物価高・エネルギー価格の高騰に対しては、電気・ガス料金や燃料油価格の激変緩和措置や、コスト増に対応するための価格転嫁対策、資金繰り支援を行い、経営を支えて参ります。不安を抱えている方々の多いインボイス制度につきましても、引き続き相談体制の整備を含めきめ細やかな支援進めて参ります。

その上で、足下の様々な経営課題を乗り越えて事業を成長させるためには、果敢に挑戦していくことが重要となります。日本の雇用の7割、付加価値の5割以上を占める中小企業・小規模事業者の皆様を起点として、投資、イノベーション、所得向上の3つの好循環を起こし、我が国の経済を成長軌道に乗せていきます。

特に、持続的な成長・賃上げを実現するためには、「価格転嫁の強力な推進」「生産性向上」「省力化投資」の3つが肝要です。

中小企業庁は、公正取引委員会とも連携し、本年も価格転嫁対策に全力で取り組みます。年2回の「価格交渉促進月間」とフォローアップ調査、300人体制の下請けGメンによるヒアリングを踏まえた指導・助言の実施などの取り組みを通じて、交渉と転嫁が継続的に行われる取引慣行の定着を目指します。また、皆様が創出した価値に適切な対価が支払われるよう、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言の拡大や実効性の向上を進めます。昨年11月に公表されました調査の結果は、全体として、価格交渉しやすい雰囲気は醸成されつつあるものの、十分な価格交渉や転嫁ができていない面も残るというものでした。受注企業の皆様におかれましては、昨年末に内閣官房と公正取引委員会から示されました「労務費の指針」等を活用しながら、思い切って価格交渉を申し出ていただければと思います。

さらに、中小企業の長年の課題である、生産性向上に対しては、業務効率化や新製品開発に向けた設備導入・DX対応などの前向きな投資をIT導入補助金やものづくり補助金などを通じて支援して参ります。また、目の前の需要拡大を取りこぼすことがないよう、小規模事業者持続化補助金・新規輸出一万者支援プログラムで、事業者の販路拡大を一層支援していきます。

構造的な人手不足を乗り越え、持続的に成長するためには、省力化投資も重要です。カタログから選ぶように省力化対応製品を選べる、簡易で即効性がある支援を5,000億円規模で措置し、大胆に進めていきます。

これらの3つの施策に加えて、「賃上げ促進税制」を拡充します。税額控除率はこれまで最大40%のところ、最大45%となります。加えて、赤字など厳しい状況にあっても、賃上げに取り組んでいただいた皆様が控除しきれなかった金額を翌年度以降に繰り越せる仕組みを作り、その期間を前例のない長期となる5年間とします。これにより、裾野の広い賃上げの実現につながると期待しています。

一方で、持続的な成長・賃上げには資金繰り支援をはじめとした事業継続の下支えも必要です。物価高騰に加え、ゼロゼロ融資の返済本格化がはじまるなど、中小企業の資金繰りは引き続き厳しい状況にあります。ゼロゼロ融資の返済負担を軽減するため、昨年1月よりコロナ借換保証制度を開始し、昨年11月末時点で約11.3万件・2.8兆円の借換を承諾しております。また、借換保証により生じた猶予期間で、金融機関が経営改善計画の策定に積極的に関与していくこととし、中小企業の迅速な経営改善を強力に後押ししていきます。

さらに、後継者へのバトンタッチやM&Aにより、貴重な経営資源を次の世代に引き継ぐことで、経営者の若返りと相まって、これまでにないチャレンジを引き出すことも大切です。今後は、これまで講じてきた事業承継・引継ぎ支援策に加え、後継者同士のつながりを強化することにより、一層円滑な事業承継を後押しします。

挑戦を支えるためには、全国の商工会・商工会議所やよろず支援拠点をはじめとした支援機関の役割も一層重要となります。引き続き連携し、地域の中小企業・小規模事業者に伴走したサポートを展開していきます。

地方では人口流出等を背景にした経済の疲弊が深刻な問題となっております。中小企業の中堅企業、地域中核企業へのスケールアップを通じて地域に魅力ある雇用を創出すると同時に、地域行政やコミュニティを支え社会課題解決に貢献するゼブラ企業を創出・育成するなど、少子化緩和へと繋げ、地域の包摂的成長を実現します。引き続き、地域経済の視点を中小企業施策に反映して参ります。

令和6年の干支である「辰年」は一般に富や財運、幸運に恵まれる年と言われますが、とりわけ本年「甲辰(きのえ・たつ)」は、成功という芽が成長していき、姿を変えていく年と言われます。中小企業・小規模事業者の皆様のチャレンジを後押しし、皆様の希望の実現に全力を尽くしていく決意です。本年が、皆様にとって実りある年となるよう心より祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。