人材関連

両立支援等助成金

2023年 1月内容改訂

「優秀な従業員が子育てを理由に辞めてしまった」、「親の介護でこれまでどおりに働けない」といったように、家庭の事情でやむなく仕事を辞めなければならない方が増えています。人材難の時代、貴重な人材を囲い込むためには、企業の側で仕事と家庭を両立できる仕組みを提供することが求められます。

仕事と家庭の両立

少ない人数で日々の仕事をどうにか回している中小企業では、子育てや介護のために休みをとることが難しいのが現状です。その結果、離職を余儀なくされる方やストレスを抱えて働き続ける方が増えています。このような状況は、企業にとっても従業員にとっても好ましいことではありません。そこで、企業の側でも仕事と家庭を両立できる仕組みを作ることが必要になっています。

働きやすい職場を作ることは、従業員の離職を防止するだけでなく、魅力ある人材の採用にもつながります。ここでは、仕事と家庭を両立するための職場づくりに役立つ「両立支援等助成金」をご紹介します。

両立支援等助成金の概要

両立支援等助成金では、仕事と家庭の両立に役立つ制度を導入し、それを実施する企業に対して一定の助成を行うこととされています。まずは、両立支援等助成金の5つのコースを確認しておきましょう。

※支給額は各コースの中の代表的なもの(生産性向上に関する要件を満たしていない場合)を記載しています。ケースにより支給額は異なりますので、詳細は厚生労働省の案内をご確認ください。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の助成を受けるには

ここでは、(1)出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)、(2)介護離職防止支援コース、(3)育児休業等支援コースを確認します。なお、ここで見るのは代表的な要件のみで、要件のすべてを挙げているわけではありません。詳細は厚生労働省のホームページに掲載されているパンフレット等をご参照ください。

まずは、出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)を受ける要件とその手続きです。出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は、育児休業を取得するケースと育児目的休暇を取得するケースがあります。以下では、育児休業を利用するケースを見ていきます。育児目的休暇を取得する場合も要件はそれほど異なりません。

(1)出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の支給額

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の支給額を確認しておきます。第1種は男性労働者の出生時育児休業取得、第2種は男性労働者の育児休業取得率上昇を対象とします。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の支給額

※支給額は生産性向上に関する要件を満たしていない場合を記載しています。カッコ内は個別支援(育児休業後の待遇等を個別に知らせる、対象の男性労働者との個別面談等を行った場合)加算の額です。詳細は厚生労働省の案内をご確認ください。

(2)出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の助成を受ける要件

<第1種>

ア.育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること

イ.育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること

ウ.男性労働者が子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得すること(所定労働日が4日以上含まれていることが必要)

エ.<代替要員加算>男性労働者の育児休業期間中の代替要員を新たに確保した場合

<第2種>

ア.第1種の助成金を受給していること

イ.育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること

ウ.育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること

エ.第1種の申請をしてから3事業年度以内に、男性労働者の育児休業取得率が30%以上上昇していること

オ.育児休業を取得した男性労働者が、第1種申請の対象となる労働者の他に2人以上いること

(3)出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の助成を受ける手続き

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の助成を受けるためには、子どもが生まれる時期に合わせて、必要な手続きや制度導入・実施を進めていかなければなりません。子どもが出産予定日前に生まれる可能性もありますので、できるだけ前倒しで進めるとよいでしょう。

介護離職防止支援コースの助成を受けるには

介護離職防止支援コースは、以下の4つの場合に助成金が支給されます。以下では、休業取得時と職場復帰時の2つのケースを見ていきます。なお、介護両立支援制度とは、育児・介護休業法に規定する介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置をいいます。

(1)介護離職防止支援コースの内容及び支給額

介護離職防止支援コースの内容と支給額を確認しておきましょう。

介護離職防止支援コースの内容と支給額

※支給額は生産性向上に関する要件を満たしていない場合を記載しています。詳細は厚生労働省の案内をご確認ください。

(2)介護離職防止支援コースの助成を受ける要件

<休業取得時>

ア.介護休業の取得、職場復帰について、プランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること

イ.介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、プランを作成すること

ウ.プランに基づき、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得すること

<職場復帰時>

エ.「休業取得時」の受給対象である労働者に対し、介護休業終了後にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること

オ.対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として3か月以上継続雇用していること

育児休業等支援コースの助成を受けるには

育児休業等支援コースは、(a)育休取得時・職場復帰時、(b)業務代替支援、(c)職場復帰後支援の3つに分けて助成金が支給されます。以下では、育休取得時と職場復帰時の2つを見ていきます。

(1)育児休業等支援コースの内容及び支給額

育児休業等支援コースの内容と支給額を確認しておきましょう。

※支給額は生産性向上に関する要件を満たしていない場合を記載しています。詳細は厚生労働省の案内をご確認ください。

(2)育児休業等支援コースの助成を受ける要件

<育休取得時>

ア.育児休業の取得、職場復帰についてプランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること

イ.育児に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で育児の状況や今後の働き方についての希望等を確認し、プランを作成すること

ウ.プランに基づき、対象労働者の育児休業(産前休業から引き続き産後休業及び育児休業をする場合は、産前休業)の開始日の前日までに、プランに基づいて業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に、連続3か月以上の育児休業(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合は、産後休業を含む)を取得させること

<職場復帰時>

エ.対象労働者の育児休業中にプランに基づく措置を実施し、職務や業務の情報・資料の提供を実施すること

オ.育休取得時にかかる同一の対象労働者に対し、育児休業終了前にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること

カ.対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること

まとめ

  1. 仕事と家庭の両立のための職場環境作りをすると、両立支援等助成金を受けられる
  2. 両立支援等助成金には5コースあり、子育てや介護と仕事を両立する制度導入を支援している
  3. 出生時両立支援コースは、男性の育児休業や育児目的休暇の取得を推進するための助成である
  4. 介護離職防止支援コースは、家族の介護による離職を防ぐ制度作りを支援するための助成である
  5. 育児休業等支援コースは、育児休業の取得の他に代替要員の確保や復帰後の労働者の支援等についての助成もある
  6. いずれのコースも計画や制度を作成し、実際に制度を利用することが必要である
  7. 毎年度、内容が変更されるため、注意が必要である