人材関連
65歳超雇用推進助成金
2023年1月内容改訂
多くの企業で、従業員の高年齢化が課題として挙げられています。日本の生産年齢人口(15歳以上64歳未満の人口)は今後も減少を続け、社会の高年齢化はますます進行します。企業もこれに対応し、65歳を超える方々に安心して働き続けてもらえる職場環境を作っていくことが求められます。
高年齢者の就労を促進するための職場環境づくり
これからの日本では、高年齢者が意欲と能力のある限り、年齢にかかわりなく働くことができる生涯現役社会を実現することが求められています。このような社会の要請を踏まえ、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を推進する際に役立つ「65歳超雇用推進助成金」をご紹介します。
65歳超雇用推進助成金の概要
65歳超雇用推進助成金には3つのコースがあります。それぞれの制度は65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行うことで、高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現するものです。まずは、各コースの概要を確認しておきましょう。
コース |
取組内容 |
支給額 |
---|---|---|
(1)65歳超継続雇用促進コース |
65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを導入した場合に助成 |
160万円 |
(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース |
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置の実施に要した経費の一部を助成 |
措置に係る経費(最大50万円)の60% |
(3)高年齢者無期雇用転換コース |
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合に助成 |
48万円/人 |
※支給額は各コースで最大のもの(生産性向上に関する要件を満たしていない場合)を記載しています。ケースにより支給額は異なりますので、詳細は厚生労働省の案内をご確認ください。
65歳超継続雇用促進コースの助成を受けるには
3つのコースの内容を詳しく見てみます。なお、ここで見るのは代表的な要件のみで、要件のすべてではありません。詳細は厚生労働省のホームページに掲載されているパンフレット等をご参照ください。
(1)65歳超継続雇用促進コースの助成を受ける要件
ア. 労働協約又は就業規則により、a)65歳以上への定年引上げ、b)定年の定めの廃止、c)希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、d)他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施したこと
導入する制度や対象となる高年齢労働者の人数により、助成金の額が異なります。なお、d)は定年後等に雇用されることを希望する者を、その定年後等に他の事業主が引き続き雇用することにより、雇用を確保する制度の導入をいいます。
イ. 制度を規定した際に経費を要していること
制度を規定した労働協約または就業規則の作成・改正、いずれの制度を導入すべきかの検討等、制度導入に際して費用がかかっていることが必要です。
ウ. 制度を規定した労働協約または就業規則を整備していること
すでに労働協約や就業規則がある企業であれば、これらを改正して所定の制度を規定する必要があります。
エ.高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置を実施していること
高年齢者雇用管理に関する措置は、(a)職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等、(b)作業施設・方法の改善、(c)健康管理、安全衛生の配慮、(d)職域の拡大、(e)知識、経験等を活用できる配置、処遇の改善、(f)賃金体系の見直し、(g)勤務時間制度の弾力化で、これらのうちの1つ以上を実施している必要があります。
オ. 高年齢者雇用安定法の規定に違反していないこと
60歳未満の定年を定めている場合や、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講じていない場合が規定違反に当たります。違反の有無は、制度の実施日から起算して6か月前の日から支給申請日の前日までの間で判断されます。
カ.法令に基づいた適切な高年齢者就業確保措置を講じていないことにより、当該就業確保措置の是正に向けた計画作成勧告を受けていないこと
キ. 60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
この雇用保険被保険者は、1年以上継続して雇用されている者でなければなりません。支給申請日の前日が判断の基準になります。
(2)65歳超継続雇用促進コースの助成を受ける手続き
65歳超継続雇用促進コースの助成を受けるためには、定年引上げ等を実施した後、一定の期間(約4ヶ月)以内に必要書類を揃えて、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請します。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成を受けるには
(1)高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成対象となる経費
以下の措置等に対して、(a)雇用管理制度の導入等に必要な専門家等に対する委託費やコンサルタントとの相談に要した経費、(b)措置の実施に伴い必要となる機器、システム及びソフトウェア等の導入に要した経費が支給対象経費となります。
ア.高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善
イ.高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度等の導入または改善
ウ.高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善
エ.高年齢者が意欲と能力を発揮して働けるために必要な知識を付与するための研修制度の導入または改善
オ.専門職制度等、高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入または改善
カ.法定外の健康管理制度(胃がん検診等や生活習慣病予防検診)の導入
(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成を受ける要件
ア. 「雇用管理整備計画書」を(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出し、計画内容について認定を受けていること
「雇用管理整備計画」は、高年齢者の雇用の機会を増大するための能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入、または医師もしくは歯科医師による健康診断を実施するための制度の導入に取り組むものである必要があります。
イ. 「雇用管理整備計画」に基づき、高年齢者雇用管理整備の措置を実施し、その措置の実施の状況、及び雇用管理整備計画の終了日の翌日から6ヵ月間の運用状況を明らかにする書類を整備していること
ウ. 雇用管理整備の措置の実施に要した支給対象経費を支給申請日までに支払ったこと
エ. 高年齢者雇用安定法の規定に違反していないこと
60歳未満の定年を定めている場合や、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講じていない場合が規定違反に当たります。違反の有無は、制度の実施日から起算して6か月前の日から支給申請日の前日までの間で判断されます。
オ. 60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
この雇用保険被保険者は、1年以上継続して雇用されている者でなければなりません。支給申請日の前日が判断の基準になります。
(3)高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成を受ける手続き
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成を受けるためには、2回に分けて手続きが必要です。まずは、計画開始の3ヵ月前の日までに、雇用管理整備計画の認定申請をします。計画期間内に支給対象措置を実施した後、計画期間終了日の翌日から6ヵ月後の日の翌日~その2ヵ月以内に支給申請をします。
高年齢者無期雇用転換コースの助成を受けるには
(1)高年齢者無期雇用転換コースの助成を受ける要件
ア. 「無期雇用転換計画書」の計画内容について認定を受けていること
イ. 有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定していること
ウ. 雇用する50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換すること
エ. 転換された労働者を、転換後6ヵ月以上の期間継続して雇用し、その労働者に対して転換後6ヵ月分の賃金を支給すること
オ. 高年齢者雇用安定法の規定に違反していないこと
60歳未満の定年を定めている場合や、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講じていない場合が規定違反に当たります。違反の有無は、制度の実施日から起算して6か月前の日から支給申請日の前日までの間で判断されます。
カ.法令に基づいた適切な高年齢者就業確保措置を講じていないことにより、当該就業確保措置の是正に向けた計画作成勧告を受けていないこと
(2)高年齢者無期雇用転換コースの助成を受ける手続き
高年齢者無期雇用転換コースの助成を受けるためには、2回に分けて手続きが必要です。まずは、計画開始の3ヵ月前の日までに、無期雇用転換計画の認定申請をします。無期雇用労働者への転換後、賃金を6ヵ月分支給した日の翌日から起算して2ヵ月以内に支給申請をします。
なお、支給額は中小企業では48万円、中小企業以外では38万円となります(生産性向上に関する要件を満たしていない場合)。
まとめ
- 高年齢者の雇用促進のための職場環境づくりに取り組むと、65歳超雇用推進助成金を受けられる
- 65歳超雇用推進助成金には3コースあり、定年引上げや無期雇用への転換の推進を支援している
- 65歳超継続雇用促進コースは、定年制度の改正により65歳を超えて働き続けられる制度を作るための助成である
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高年齢者が就労を継続するための職場環境づくりを支援するための助成である
- 高年齢者無期雇用転換コースは、50歳以上の労働者の安定した雇用を促進するための助成である
- 毎年度、内容が変更されるため、注意が必要である