人材関連
障害者の雇用に関する助成金
2023年1月内容改訂
多くの企業で人手不足が経営課題となっています。この課題を解決するためには、これまで活用が不十分だった人材を積極的に採用していくことが重要です。このような人材として高齢者とともに挙げられるのが障害者です。
障害者の就労を促進するための職場環境づくり
障害者の働く環境は改善しつつありますが、依然として雇用義務のある企業の約3割が障害者をまったく雇用していない状況にあります。障害者が希望や能力、適性を十分に活かし、障害特性等に応じて最大限活躍できるようにするため、福祉就労の場を障害者がやりがいをより感じられる環境に変えていく必要があります。ここでは、障害者等の職場適応・職場定着を図ることを目指す企業に対する支援として、「障害者介助等助成金」と「職場適応援助者助成金」の2つをご紹介します。そのほかに障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した事業主への助成として、キャリアアップ助成金に障害者正社員化コースが設けられています。
障害者介助等助成金の概要
障害者介助等助成金は、障害者を労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施しており、以下のように多くの支援メニューが設けられています。
- 職場介助者の配置助成金
- 職場介助者の委嘱助成金
- 職場介助者の配置の継続措置に係る助成金
- 職場介助者の委嘱の継続措置に係る助成金
- 手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金
- 障害者相談窓口担当者の配置助成金
- 重度訪問介護サービス利用者等職場介助助成金
- 職場支援員の配置又は委嘱助成金
- 職場復帰支援助成金
- 健康相談医師の委嘱助成金
- 職業コンサルタントの配置助成金
- 職業コンサルタントの委嘱助成金
- 在宅勤務コーディネーターの配置助成金
- 在宅勤務コーディネーターの委嘱助成金
ここでは、職場支援員の配置または委嘱助成金と職場復帰支援助成金の2つを見ていきます。
(1)職場支援員の配置または委嘱助成金
職場支援員の配置または委嘱助成金は、雇用障害者の職場定着を図るために職場支援員を配置または委嘱した事業主を対象として助成するものであり、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的としたものです。
対象障害者に対して、職場支援員の配置または委嘱の措置を実施し、6ヵ月以上職場に定着させた場合に助成金が支給されます。対象障害者は措置の実施日の時点で、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害のある方に該当する方で、これらの方の業務の遂行に必要な援助や指導を行う職場支援員を配置(=雇用)または委嘱することで以下の額が支給されます。
※中小企業に対するもののうち、代表的なものを示しています。詳細はパンフレット等をご確認ください。
次に支給対象要件を確認しておきましょう。要件には事業主に関するものと労働者に関するものがあります。
<事業主の要件>
ア.支給対象障害者に対し、支援計画を作成し、機構の受給資格の認定を受けた事業主であること
イ.計画期間に職場定着に係る措置に取り組んだ事業主であること
ウ.支給対象障害者を支援計画の期間を超えて雇用し、かつ、継続して雇用することが確実であると認められる事業主であること
エ.事業所において、出勤簿・賃金台帳・労働者名簿等の書類を整備、保管している事業主であること
オ.支給申請時点において、支給対象障害者を解雇等事業主都合により離職させていないこと
カ.支給対象障害者の雇入れ、勤務時間延長、配置転換、業務内容変更、職場復帰または企業在籍型職場適応援助助成金に係る支援の終了の日から6ヵ月以内に職場支援員を配置または委嘱する事業主であること
キ.支給対象障害者を、各支給対象期間の初日から6ヵ月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して、各支給対象期分の賃金を支給した事業主であること
ク.措置を実施した日以降の期間について、支給対象障害者を常用雇用労働者として雇用している事業主であること
<労働者の要件>
ケ.申請事業主の常用雇用労働者(1年超の雇用が見込まれる雇用保険被保険者等。精神障害者にあっては週所定労働時間が15時間以上の者を含む)であること
コ.措置の開始日の時点で、一定の障害者であること
サ.就労継続支援A型事業における利用者でないこと
シ.法人の代表者若しくは役員等、それらの家事使用人、事業主と同居の親族又は学生のいずれにも該当しないこと
<認定申請期限および支給対象期間>
認定申請期限は、職場支援員の配置または委嘱を行った日の翌日から起算して3ヵ月後の応当日までです。また、支給対象期間は、職場支援員の配置または委嘱を行った日の直後の支給対象障害者の賃金締切日の翌日から起算して最大2年間(精神障害者については最大3年間)となります。
(2)職場復帰支援助成金
職場復帰支援助成金は、中途障害者等に対して、療養のための休職の後の職場復帰後の本人の能力に合わせた職務開発その他職場復帰のために必要な措置を講じる事業主を対象として助成するものであり、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的としたものです。
対象障害者に対して、職場復帰支援措置を実施し、6ヵ月以上職場に定着させた場合に助成金が支給されます。対象障害者は職場復帰の日の時点で、身体障害者、精神障害者、難病患者、高次脳機能障害のある方に該当する方で、中途障害等により休職を余儀なくされた労働者に対して、時間的配慮や職務開発等の職場復帰のために必要な職場適応の措置を行い、雇用を継続することで以下の額が支給されます。このほかに、職務開発等に関する措置に伴い講習を行った場合、その講習に要した対象経費に応じた支給もあります。
支給月額 |
支給対象期間 |
各支給対象期における支給限度額 |
---|---|---|
6万円 |
最大1年 |
36万円×2期 |
※中小企業に対するもののうち、代表的なものを示しています。詳細はパンフレット等をご確認ください。
次に支給対象要件等を確認しておきましょう。要件は事業主に関するものと労働者に関するものがあります。
<事業主の要件>
ア.支給対象障害者に対し、支援計画を作成し、機構の受給資格の認定を受けた事業主であること
イ.計画期間に職場定着に係る措置に取り組んだ事業主であること
ウ.支給対象障害者を支援計画の期間を超えて雇用し、かつ、継続して雇用することが確実であると認められる事業主であること
エ.事業所において、出勤簿・賃金台帳・労働者名簿等の書類を整備、保管している事業主であること
オ.支給申請時点において、支給対象障害者を解雇等事業主都合により離職させていないこと
カ.支給対象障害者に対して、その職場復帰を促進するため、職場復帰の日から3ヵ月以内に職場復帰のための措置を開始し、休職等の期間中も含めて、常用雇用労働者としての雇用を継続する事業主であること
キ.支給対象障害者を、支給対象期の第1期の場合は措置実施後6ヵ月以上、第2期の場合は第2期支給対象期の初日から6ヵ月以上の期間継続して雇用し、その労働者に対して、各支給対象期分の賃金を支給した事業主であること
ク.本助成金の申請に要する経費(意見書等の発行手数料)を全額負担する事業主であること
<労働者の要件>
ケ.申請事業主に雇用される常用雇用労働者であること
コ.職場復帰の日の時点で、一定の障害者であること
サ.医師の意見書により、1ヵ月以上の療養のための休職等が必要とされた者であること
シ.就労継続支援A型事業における利用者でないこと
ス.法人の代表者若しくは役員等、それらの家事使用人、事業主と同居の親族又は学生のいずれにも該当しないこと
<職場復帰のための措置の具体的内容>
1)時間的配慮等
- 医師の意見書および支給対象障害者の同意の下の労働時間の調整
- 就業規則等に規定する有給休暇制度以外の通院または入院のための、特別な有給の休暇の付与
- 支給対象障害者の同意の下に実施する独居を解消し親族等と同居するための勤務地の変更
2)職務開発等
- 外部専門家の援助を得て行う職務開発
- 外部専門家による援助の結果、休職等の前に従事していた職務について実施できない業務がある場合に、これを踏まえた職種の転換
3)2)に伴う講習
- 支給対象障害者の障害特性に応じて、新たな職務の遂行に必要となる基本的な知識・技術を習得するための講習であること
- 講習の時間が1回につき1時間以上であること
- 講習の講師が、講習の内容に直接関連する職種の経験が3年以上ある者であること
<認定申請期限および支給対象期間>
認定申請期限は、支給対象障害者の職場復帰の予定日の前日から起算して3週間前の応当日までです。また、支給対象期間は、職場復帰のための措置を開始した日の直後の支給対象障害者の賃金締切日の翌日から起算して最大1年間です。最初の6ヵ月を第1期、次の6ヵ月を第2期の支給対象期といいます。
(3)申請手続き
最後に受給までの流れを確認しておきます。
職場適応援助者助成金の概要
職場適応援助者助成金は、職場適応援助者による援助を必要とする障害者のために、職場適応援助者による支援を実施した事業主に対して助成をするものです。(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施しており、訪問型職場適応援助者助成金・企業在籍型職場適応援助者助成金の2つがあります。訪問型職場適応援助者助成金は、社会福祉法人等の障害者の雇用の促進にかかる事業を行う法人が対象となるものですので、以下では一般の事業主が対象となる企業在籍型職場適応援助者助成金について見ていきます。
企業在籍型職場適応援助者助成金の概要
企業在籍型職場適応援助者助成金は、職場適応援助者による支援体制の社内整備を進める事業主が、自社で雇用する障害者に対して、企業在籍型職場適応援助者を配置して実施する職場適応援助措置を行った場合に対象となります。
<支給額>
支給額は、以下に示す対象障害者1人あたりの月額に、支給対象期間の月数を乗じて得た額です。このほかに、企業在籍型職場適応援助者を養成するための研修の受講料を事業主が全額負担し、かつ、養成研修受講修了日から6ヵ月以内に、初めての支援を実施した場合に、その受講料として事業主が支払った額の1/2の額が加算されます。
※中小企業に対するものを示しています。詳細はパンフレット等をご確認ください。
<事業主の要件>
規則に規定する、その雇用する支援対象障害者に必要となる援助を行う企業在籍型職場適応援助者の配置を行う事業主が対象となります。
<労働者の要件>
企業在籍型職場適応援助者による職場適応援助を行うことが必要と認められる身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病)にかかっている者、高次脳機能障害であると診断された者等が支給対象障害者となります。
<支給対象となる措置>
1)支援対象障害者および家族に対する支援
2)事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整
3)関係機関との調整
4)その他の支援(地域センターが必要と認めて支援計画に含めた支援)
まとめ
- 障害者の雇用を増やすのであれば、障害者介助等助成金および職場適応援助者助成金を活用することができる
- 障害者介助等助成金には多くの支援メニューがあり、障害者を労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に用いることができる
- 職場適応援助者助成金は、職場適応援助者による援助を必要とする障害者のために、職場適応援助者による支援を実施した事業主に対して助成をするものであり、このうちの企業在籍型職場適応援助者助成金は支援体制の社内整備を進める場合に用いることができる
- 毎年度、内容が変更されるため、注意が必要である