よくわかる食品原価管理の基本とポイント

第4回 材料費の計算方法

かつての日本企業は「コスト」についてあまり厳しくありませんでした。つくれば売れる時代であり、コストに利益を上乗せするだけでモノは売れたからです。

しかし、いまは簡単に売上を上げることはできません。多くの競合品がある中で、自社の製品だけを高く売ることはできません。企業が生き残るためには、コストを下げる努力と価値あるモノをリーズナブルな価格で販売しなければなりません。

「特別企画 食品原価管理の基本とポイント」では、加工食品におけるコストダウンの基本とポイントをわかりやすく説明します。

材料費の計算では、「仕入れた材料費が製品の材料費」と考えてはいけません。仕入れた材料がすべて製品に使用されるとは限りません。大量に仕入れることで仕入れ価格を下げるといったケースもあります。「使用した分だけを材料費とする」ことが基本になります。

それを計算式にすると以下のようになります。

材料費=消費数量×消費単価

計算式は単純ですが、「消費数量」と「消費単価」を決めることは思ったよりも難しいことです。まず消費数量の把握方法について説明します。

消費数量を把握する

【消費数量の把握する2つの方法】

  1. 棚卸計算法
    棚卸しによって在庫を調査し消費量を計算する。
    「期首棚卸量」+「当期仕入量」-「期末棚卸量」=「消費量」
  2. 継続記録法
    材料の種類ごと、出庫のたびに記録する。
    材料A ○月○日  120kg
    材料B ○月×日  100kg

一般的に消費量の把握には「継続記録法」が採用されます。特に食品原料として使用される食肉や水産物などは、工業品のように決まった組成ではないことが多いため食材の水分などによって出来高が変わってきます。日々の消費量を正確につかんで原価計算に組み入れることが大切です。

消費単価を計算する

つぎの消費単価(使用した材料の単価)を求める方法について説明します。

【消費単価の計算方法】

  1. 先入先出法
    先に仕入れた材料から先に出した(消費した)と考えて計算する。
  2. 後入先出法
    後から仕入れたほうから先に出したと考えて計算する。
  3. 移動平均法
    仕入れるたびに計算し直した平均値で計算する。
  4. 総平均法
    1カ月間に仕入れた平均で計算する。
  5. 最終仕入原価法
    最後に仕入れた単価で計算する。
  6. 予定価格法
    過去の仕入価格と今後の市場価格を参考に予定価格を決める。

以上のように消費単価を計算する方法はいろいろあります。仕入れた材料を全部消費してしまえば最終消費金額は同じになるので特に心配する必要はないといった考えもあります。しかし、すべてを消費するまでの途中段階では計算方法によって算出される原価の金額が異なることになります。特に水産物のように季節によって大きな価格変動が生じる場合には注意が必要です。

よって自社にあった「消費数量」と「消費単価」の把握方法を採用することが大切です。

例えば、原料とする水産物の相場が漁獲量の激減によって大きく高騰した場合、後入先出法を採用していると後の高い価格で消費金額が計算されます。先入先出法を採用していた場合は、当面の在庫がある期間は先に買った安い価格で消費単価を計算させることになります。

いずれの方法を採用するかによって金額が大きく異なるため、場合によっては会社の状況判断に間違いが生じる可能性があるのです。

(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)