ビジネスQ&A

新聞や雑誌に記事として取り上げられる方法を教えてください。

当社は健康食品の製造販売を行う中小企業です。多くの新製品を送り出していますが、新製品情報やニュースがお客さまにうまく届きません。取引先の素材メーカーなどはいつも新聞記事に取り上げられ、上手に情報伝達を行っています。マスコミとはいかないまでも、業界新聞などに取り上げられるような広報のやり方はありますか?

回答

広報は社長に直結した重要な部署です。はじめに、この部門が戦略的に重要な機能をもつことを認識してください。次に、ここに優秀な人材と予算を投入し、全社的な戦略として情報発信を行う決意が必要です。そして、実務としての広報では、コネクション形成と相手の立場に立つことが大切です。

「宣伝広報」と二つのテーマが一緒に語られる場合が多いのですが、この二つの概念と実務はまったく異なっています。

また、「運が良いから記事になった」、「知り合いがいるから取材してもらった」というような事例ばかりが語られていますが、実際は実務家の努力によってマスコミをにぎわす記事になったことのほうが多いのです。

【広報という仕事は頭を下げて、記事を書いていただくという弱い立場】

宣伝は、お金の力で媒体のスペースを購入し、自社の主張を広告表現で掲載する、どちらかといえば購買に近い仕事です。逆に、広報の一般的な手順は以下のとおり、地味な作業です。

  1. 新製品やイベントなど、広報したい事実の把握を行います。
  2. 事実をもとに「記事の素材」を制作して、「デジタル情報」として加工します。
  3. 媒体社に取り上げられやすいように「見やすくわかりやすく」そのまま記事に使える形に原稿を仕上げます。
  4. タイミングをよくみて、効率良く配信します。記者発表会も有効です。
  5. 配信したことを電話、面談で伝え、記事掲載をお願いします。
  6. ベタ記事でも、掲載されたらお礼を欠かしません。
  7. 記者とのコネクション構築のため、情報交換の交流会を行います。
  8. ライバル社の動きを察知し、先行情報を収集します。
  9. 媒体社のニーズを探り、ネタの提供を行います。
  10. トップとの面談を欠かさず、当社の戦略や将来の方向を理解します。

ここまでできれば、上場会社の広報担当者になれますね。

【広報業務のテクニック】

記事の掲載に当たっては、編集長が最大の権力を持っていますが、ときとして外部の力が働きます。たとえば有力な広告主からの依頼、所属団体からのオファーなど、目に見えない圧力の中で、記事採用の判断がなされています。

1.担当記者の状況を知ること

ネタ集めに苦労していないでしょうか。予定していた原稿が締め切りに間に合わず、スペースが落ちたり、広告キャンセルで誌面が空いたり、時間との戦いで記事を書いている現場では、ときどきこんなチャンスが巡ってきます。

2.記者に使い勝手の良い形の記事として提供します

時間がない中で記事をつくりますから、写真・データ・商品説明、さらには裏取り(事実であることの証明、第三者や公共機関からの承認)の手間を省きます。つまり、どうやって印刷所に入れるか事前に聞いておくのです。写真とテキストの入稿データ形式やフォーマット、メディアの種類(MO・CD-R)、メール添付で送るときのファイル容量とサイズ規制など。

3.広告臭さを排除すること

あくまで担当記者が自分で書いたように、宣伝としての押し付けや、売らんかなの表現は避けます。

4.時事ネタとしての季節感を

夏の記事なら、海・青い空・氷、スイカですね。

5.大ネタとの、かぶりを避けて

「政局転換」「壁の崩壊」などの時局とぶつかると、企業の広報ネタは飛んでしまいます。

6.一工夫はその媒体の味わいをいかして

専門誌の場合は、業界や専門商品の世界を背負っています。好き者が書いていますから、「マニア」的な表現が好まれます。略語や符丁、その世界での常識などを入れ込んだ表現が良いとされています。

7.人間関係に依存しすぎるのは危険です

いくら仲が良くても、知り合いでも、安易には依頼はできません。重要なときに使える切り札として温存しましょう。

8.自社に不利な情報の取り扱いに関して

自社に不利な情報の取り扱いに関しては、トップが即断しなければなりません。とくにクレームやリコール、事故などの発表と、謝罪が必要な場合です。こうした場面で、トップが逃げ出したり、開き直って強硬な姿勢をとったりしたために、大きくイメージを毀損した例は枚挙にいとまがありません。リスクを前にしたとき、どのような広報体制で臨むのかは、事前にシミュレーションが必要です。

また、情報の伝達経路の確認や、非常連絡網の整備は、企業のリスク管理のスタートラインです。

一行の記事でも生き物です。こんな小さな記事から、これほどの商いが生じるとは…。

情報を求めている人にとって、それが必要であれば記事の大小ではありません。活字になること、メディアに載ること、メルマガでもインターネットニュースでも同じことです。

回答者

中小企業診断士 内藤 博

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