法律コラム

改正育児・介護休業法(第3回)-産後パパ育休とはどんなもの-

2022年 11月30日

「令和3年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)によると男性の育児休業取得率は13.97%でした。政府では、令和7年までに男性の育児休業取得率を30%に引き上げることなどを目標に掲げています。

1.男性の育児休業取得を阻むもの

男性の育児休業取得に関する状況を探ってみると、我が国の企業の中には「男が育児休業をとるなんて」「重要な仕事の最中に抜けるのか」「戻っても同じポストは用意出来ないな」といった声が、まだまだ多く聞かれるようです。

そうした会社内の雰囲気が男性に育児休業を取りにくくさせている大きな要因になっています。

近年でも男性の育児休業取得率はだいたい1割前後で推移しており、まだまだ男性が育児休業を取得しやすい状況にあるとは言い難いですが、最近では若い世代を中心に「育児に参加したい」という男性が徐々に増えつつあるようです。

育休は女性だけでなく育児を行う夫婦がそれぞれ取得することができる権利です。

事業主には、従業員、特に管理職層に対して、あらゆる角度からの教育を継続的に行うことによって、社員の意識改革、組織風土の改革を推し進めていくことが求められます。

2.産後パパ育休の創設

これまでは、通常の「育児休業」のほかに「パパ休暇」と「パパ・ママ育休プラス」という制度がありました。

「パパ休暇」は、妻の産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、もう1回育児休業を取得できるというものでしたが、今回の法改正に合わせ廃止されました。

「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦がともに育児休業を取得することで、育休期間を2か月延長できるという制度で、こちらは今回の改正後も存置されています。

そしてこれまでの「パパ休暇」の問題点等も踏まえて、新たに創設されたのが「産後パパ育休」(出生時育児休業)なのです。

産後パパ育休は、子が1歳(最長2歳)までの育児休業制度とは別に取得可能で、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能とされます。申出期限についても、原則として1か月前までとされている育児休業制度と異なって休業の2週間前までとされています。ただし、労使協定で定めた場合は、1か月前までとすることができます。

また、今回の改正で、産後パパ育休の申し出・取得、産後パパ育休の期間中の就業を申し出・同意しなかったこと、妊娠・出産の申し出をしたこと等を理由に、事業主が解雇や退職強要、正社員からパートへの契約変更等といった不利益な取り扱いを行うことは禁止されています(本稿「第1回 育児休業取得のための環境を整える」を参照)。

産後パパ育休は、だれもが育児休業を取得しやすい環境整備を進めることを背景として、特に男性の育児休業の取得促進を目的として、創設された制度だと言えます。男性が子どもの出生直後に育児休業を取得し、子育てに積極的に関わることで、女性の雇用継続や夫婦が希望する家族像の構築につなげるといったねらいもあるようです。

育児休業中の給付金と社会保険料の免除

○「育児休業を取得しても、その間の収入がなくなるのは困ります」という方は少なくないのではないでしょうか。育児休業あるいは産後パパ育休の取得期間中は、通常会社からの給与は支給されません。しかし、条件を満たせば雇用保険の「育児休業給付金」、「出生時育児休業給付金」が支給されます。
その支給条件は次の通り。

  • 雇用保険に加入し、保険料を支払っている
  • 育児休業後、退職予定がない
  • 育休中の就業日数が各1か月に10日以下
  • 育休中に休業開始前の1か月の賃金の8割以上が支払われていない
  • 育休前の2年間で11日以上働いた月が12カ月以上

○また、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に、事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。
その要件は

  • その月の末日が育児休業中である場合
    育児休業等の期間中または育児休業等終了後の終了日から起算して1か月以内の期間中に行わなければなりません。
  • その月の末日に育児休業中でなくとも、同一月内で14日以上の場合に保険料免除
  • 賞与に係る保険料については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限り保険料を免除

監修

社会保険労務士法人三平事務所 三平和男代表社員