法律コラム

改正育児・介護休業法(第2回)-有期雇用労働者の場合でも取得できるか-

2022年 11月25日

人手不足に悩む中小企業においては、有期雇用労働者は貴重な戦力です。現在では「同一労働同一賃金」が導入され、ますますその重要性が認識されています。

1.有期雇用と無期雇用とは

「有期雇用契約」とは、その名の通り雇用される期間を定めた労働契約のことで、有期雇用契約は、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員等の非正規雇用社員に多い契約形態といえます。

これに対して「無期雇用契約」とは、雇用される期間を定めない労働契約で、原則として定年(就業規則等に定められた年齢)まで働き続けられる、正社員等の正規雇用社員に多い契約形態といえます。

かつて有期雇用労働者は、無期雇用労働者と比べて、仕事内容はほぼ同じでありながら、給与などの待遇面で格差が付けられることがありましたが、改正された短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)が令和3年4月1日に施行され、中小企業にも「同一労働同一賃金」が適用されるようになった結果、現在では改善されているようです。

2.有期雇用労働者でも育児休業・介護休業は取得可能

これまでは引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用労働者は、育児休業や出生時育児休業、介護休業の取得を希望しても、制度上取得することはできませんでした。

しかし、令和4年4月1日に施行された改正育児介護休業法によって、有期雇用労働者が育児休業、出生時育児休業、介護休業を取得する際の要件が緩和されています。

これまでは取得要件として、「引き続き雇用された期間が1年以上であること」あるいは「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないこと」の2つがあげられていましたが、このうち「引き続き雇用された期間が1年以上であること」が撤廃され、雇用された期間が1年未満の有期雇用労働者でも、無期雇用労働者と同じように育児休業、出生時育児休業、介護休業を取得できるようになりました。

ただ、もう1つの要件である「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないこと」はそのまま存置されるため、これに該当する有期雇用労働者は、育児休業、出生時育児休業、介護休業を取得できません。また、労使協定を結べば対象から除外することは可能となります。そういった意味でも、雇用契約で契約期間と更新条項を明確にしておくこと、就業規則の変更手続きをしておくことがとても大切になってきます。

無期転換ルール

平成30年4月1日に施行された改正労働契約法において、新たに「無期転換ルール」が導入され、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期雇用労働者(契約社員、アルバイト、パート等)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換することができるようになりました。

無期雇用労働者になっても、必ずしも正社員になれるというものではありませんが、「無期労働契約への転換」、「雇い止め法理の法定化」、「不合理な労働条件の禁止」といったルールが適用されることになります。

ただし、派遣社員の場合は、派遣元である派遣会社側が「同一の使用者との間で有期労働契約の更新があり、通算5年を超えた場合、労働者の申し出で無期労働契約に転換される」という「無期転換ルール」に対応していなければなりません。

監修

社会保険労務士法人三平事務所 三平和男代表社員