よくわかる食品環境対策の基本とポイント
第3回 食品関連事業者のリサイクル事例
食品を取り扱う事業者(食品の製造・加工業者、卸売・小売業者、飲食店等)は、食品の製造から廃棄の各段階で、食品廃棄物等の発生抑制・減量と食品循環資源の有効活用を図り、環境負荷の少ない社会の構築に貢献することが重要です。
「特別企画 食品環境対策の基本とポイント」では、食品事業における環境対策の基本とポイントをわかりやすく解説します。
本連載の第3回では、実際にリサイクルを行っている事業者の事例を紹介します。
事例1:堆肥づくりを通じ、循環型農業の構築へ
【取組み開始の背景】
A社では以前から、化学肥料を中心とする農業生産から昔ながらの有機肥料を活用した循環型農業の見直し・実践へと転換したいと考えていました。同じ頃、近隣の食品製造会社でも食品製造後の食品残さ(魚粕類)の再利用を検討していたため、A社ではこの食品製造会社と連携して食品残さを使用した堆肥製造を始めました。
現在は食品残さを乾燥させた堆肥とそれに微生物を投入した発酵堆肥を製造しています。
【取組みの特徴】
A社(食品製造会社であり、農産物加工品も製造・販売)では、堆肥や有機肥料には有益な微生物やミネラルなどが含まれており、これを投入することで食味がよく、病害虫に強い農産物を生産できると考えています。
リサイクルされた堆肥・肥料は近隣農家に販売しています。化学肥料に比べて投入量が多いなど労力もかかりますが、良質な農産物ができ、また人と環境に優しい循環型農業が可能であるため、農家からの関心も高くなっています。
また同社では、リサイクル製品を利用する農家と連携し、堆肥等有機質資材を利用し、農薬使用回数を削減して生産した農産物を消費者に予約販売する取組みも行っています。
事例2:食品廃棄物ゼロエミッションの取組み
【取組み開始の背景】
B社の食品工場は地域でも大規模の工場であり、そこから排出されるごみ、消費するエネルギーなどは環境負荷として大きいものです。特に廃棄物は生ごみ、おからなど総量で日量25トン近くが排出されており、おからのように畜産農家で飼料として活用されているものはあるものの、削減は大きな課題でした。
同工場から排出される廃棄物は再資源化が可能であると判断し、エネルギーや家畜飼料としての再生利用を目指して、施設内にバイオマスを活用した発電施設とおから乾燥施設を設置することになりました。
【取組みの特徴】
生ごみ約5トンと排水汚泥1トンは、高温メタン発酵による高速化・コンパクト化したメタン発酵設備で処理し、1,440kwh/dの電力と7t/dの蒸気に変換して工場内のエネルギーとしてリサイクルするとともに、発電機(60kw/h)の廃熱をメタン発酵槽・可溶化槽の加温に利用するなど「何も無駄にしない」という思想で設備を構築しました。
夏場は、腐敗により産廃処分を余儀なくされていた生おからを乾燥設備で含水率5%以下に乾燥させ、日持ちのよい高付加価値商品に転換します。また、乾燥の燃料に廃食用油を用いることで、燃料費と廃棄物の削減を図っています。
乾燥おからを飼料会社とのタイアップによって販売し、近郊の農場で有効に利用しています。
(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)