よくわかる食品環境対策の基本とポイント

第1回 食品リサイクル法を知る

食品を取り扱う事業者(食品の製造・加工業者、卸売・小売業者、飲食店等)は、食品の製造から廃棄の各段階で、食品廃棄物等の発生抑制・減量と食品循環資源の有効活用を図り、環境負荷の少ない社会の構築に貢献することが重要です。

「特別企画 食品環境対策の基本とポイント」では、食品事業における環境対策の基本とポイントをわかりやすく解説します。

環境への負荷の少ない循環型社会の形成を目指し、食品廃棄物等の排出抑制と資源としての有効利用を推進するために平成12年に食品リサイクル法が制定されました。

当初は以下の4つの方針で取り組まれました。

  1. 再生利用等の優先順位は「抑制→再生利用→減量」
  2. 再生利用の手法は、飼料化、肥料化、油脂・油脂製品化、メタン化の4つ
  3. 再生利用等実施率の目標は事業者一律20%
  4. 登録再生利用事業者制度・再生利用事業計画認定制度による法律(廃棄物処理法、肥料取締法、飼料安全法)の一部特例措置の採用

しかし、食品産業でも消費者に近い小売業・外食産業では取組みが低迷していたため、その活性化を目指して平成19年に法律改正が行われました。

改正のポイントは以下の通りです。


  • a 再生利用に炭化製品とエタノールが追加

これまでの「再生利用」は、飼料化、肥料化、油脂・油脂製品化、メタン化の4つの手法が認められていました。今回の改正で、再生利用をより促進するため、炭化製品(燃料および還元剤としての用途)とエタノールの2つの手法が追加されました。


  • b 再生利用等に「熱回収」を追加

食品廃棄物の再生利用等に取り組む優先順位は、製造、流通、消費の各段階で食品廃棄物等そのものの発生を抑制します。次に、再資源化できるものは飼料や肥料などへの再生利用を行います。再生利用が困難な場合に限り、すなわち、以下の条件を満たせば熱回収の手法も再生利用等として認められます。

条件1:当該食品循環資源の再生利用が可能な施設が半径75km圏内にない場合
条件2:得られる熱または電気の量が1トン当たり160MJ以上(廃食用油等の場合は1トン当たり28,000MJ以上)である場合


  • c 個々の食品関連事業者ごとに再生利用等の実施率の目標を設定

当初一律20%を目標に取組みが開始され、この改正で平成19年度の基準実施率20%をベースに、増加ポイントを加算した新たな基準実施率が毎年設定され、事業者ごとに改善が求められます(例:平成19年度20%未満の事業者の場合、平成23年度の目標は28%)。また、平成24年度に業種全体で達成が見込まれる実施率目標が業種別に設定されました。


  • d 食品廃棄物等多量発生事業者に定期報告義務を設定

前年度の食品廃棄物等の発生量が100トン以上の事業者の場合は、14項目にわ たる定期報告書を主務大臣に報告する義務が付されました。


  • e 取組みが不十分な食品廃棄物等多量発生事業者には、指導・勧告・公表・命令等を経て罰則を適用

食品廃棄物の年間発生量が100トン以上になる場合、定期報告書の提出義務がありますが、これを怠った場合や虚偽報告が判明した場合、また、再生利用等への取組が基準に照らして著しく不十分な場合には、罰則が適用されることもあります。


  • f 食品関連事業者の取組を円滑にするため、再生利用事業計画の認定制度を見直し

食品廃棄物等の排出者(食品関連事業者)、特定肥飼料等の製造業者(再生 利用事業者)およびその利用者(農林漁業者等)が、共同して再生利用についての計画を作成し認定を受ける制度で、廃棄物処理法や肥料取締法・飼料安全法の特例が認められます。


以上が改正のポイントです。食品を取り扱う事業者として認識しておくことが重要です。

食品関連事業者がまず行うべきこと

ではまだ何も着手していない事業者が行うべきことは何でしょうか。

まず、現在どのような食品廃棄物がどれくらいの量出ているのかを把握します。例えば、工場で1日ポリバケツ何杯分の食品廃棄物が出るかのデータを取り、それに実稼働日数を掛けて数量をつかみます。

次に再生利用等の優先順位を踏まえ、自社にとってどのような取組みが可能かを検討します。さらに、その方法を試しにやってみます。

そして、企業の実態を踏まえながら、最もよい方法を実行していきます。

(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)