よくわかる食品事故発生時の対応の基本
第1回 事故に対する基本的な考え方
近年、食品の表示ミスや品質に関する事故が頻繁に発生しています。それにより、消費者の食品に対する信頼が大きく揺らいできていると言えます。当然、消費者は食品メーカーやその製品に対してより一層厳しい目で監視することになります。
したがって、食品メーカーは消費者からの信頼を回復するため、これまで以上に高い品質の食品を提供していかなければなりません。
そこで「よくわかる 食品事故発生時の対応の基本」では、食品メーカーのリスク管理と事故対応時の基本について4回にわたりわかりやすく説明します。
食品メーカーにおけるリスク管理
食品メーカーにおけるリスク管理とは、消費者に安全な食品を提供して発展していくために、企業を取り巻くさまざまなリスクを予期し、事故の未然防止策の検討と、事故が発生した場合の適切な対応策を打つための経営手法です。
リスク管理には大きく分けて2つの取組みが必要です。
1.事故が発生するリスクを排除または低減する取組み
事故が発生するリスクを排除もしくは低減するために、以下の3段階のステップで進めます。
ステップ1:どのようなリスクが考えられるかピックアップする
以下のようなさまざまな情報源からリスクを予見する。
- 消費者からの指摘、意見
- 警察署、保健所、医療機関等からの情報
- 国や地方自治体からの情報
- 業界団体、消費者団体、取引業者からの情報
ステップ2:事故はどのような原因で発生するかを分析する
考えられる原因をすべて抽出し、原因別の相互関係を明らかにする。また、重要性、緊急性を考慮し、発生リスクの高い順に整理する。
ステップ3:リスク発生原因への対策を検討し、未然防止のための計画を立てる
リスクチェック(C)→確認と対策検討(A)→計画立案(P)→実行する(D)→再びリスクチェック(C)→効果確認、今後の対策(A)といったPDCAサイクルをまわす。
2.実際に事故が発生した場合に、被害や混乱の拡大を最小限に抑える取組み
実際に事故が発生した場合の被害や混乱の拡大を最小限に抑えるために以下を実行します。
- 速やかな事実確認
- 被害を最小限に抑えるための初期対応
- 関係者、行政、マスコミ等への対応
- 原因究明と再発防止対策
リスク管理はどのようなリスクが存在するかを明らかにすることから始まります。食品メーカーにとって考えられるリスクについて例を示します。
(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)