経営ハンドブック

資金繰り改善のための資金調達手段

使途の明確化で調達の金額と手間が少なくなる

企業は、損益計算書上は黒字であったとしても、倒産することがある。手元の現金・預金が不足し、買掛金や借入金の支払いめどが立たなくなる場合だ。「黒字倒産」を避けるには、手元の現金・預金が支払予定金額を常に上回るようにしておかなければならない。
もし現金・預金が足りないようなら、集めておく必要がある。その資金調達の手段と考え方について説明する。

資金調達に当たって押さえるべき3つのポイント

  1. 自社の資金繰り状況を確認する
  2. 資金調達は借り入れか、資産売却か
  3. 資金使途に合わせて長期と短期を適正化する

1.自社の資金繰り状況を確認する

自社が事業でいくら稼いでいて、いくら使っているのか——。毎日の入金額と支出額を記録するだけで、お金の流れが分かる。

入金予定や支払予定をまとめたのが資金繰り表だ。経営者が自社の資金繰りを正しく把握していれば、日頃から在庫を圧縮したり債権管理を徹底したりできる。これによって、手元の現金が増えるので、必要以上に資金を調達しなくても済むため、利子などの支出を抑えることができ、財務体質の強化につながる。

2.資金調達は借り入れか、資産売却か

どうしても手元の現金・預金が不足することが判明したら、その日までに資金を調達する必要がある。

中小企業にとって最も身近な手段は、政府系や民間の金融機関からの借り入れである。普段から金融機関に月次決算書や事業計画書などを開示、会社の状況を理解してもらうようにし、良好な関係を築いていれば、不況期であっても借り入れしやすいだろう。公的機関の支援としては、都道府県や市区町村による制度融資、商工会議所・商工会へ申し込むマル経融資、中小機構が運営する小規模企業共済や経営セーフティー共済などがある。

最近は、多くの金融機関がビジネスローン(中小企業等向け無担保融資)を取り入れている。審査が早いうえに、基本的に第三者保証も不要だ。その代わり、融資に当たって、信用格付に基づく貸し倒れリスクを織り込んでいるために、金利が高くなっている。そのため、利用するのであれば、必要最低限の金額を極力短期で借り入れるようにしたい。

遊休資産や債権などを売却するという「資産を現金化する」方法もある。買い手が見つかれば、迅速に現金を手にできる。ただし、支払期限が近づいていて急いで売却しなければいけない場合など、相場よりも安い価格になってしまう。

もう1つ、手段として「資本を増やす」方法があり得る。具体的には、株式を発行して第三者に購入してもらう増資だ。この手段であれば、返済する必要がないというメリットがある。ただし、実現までに時間がかかるというデメリットもあるうえ、株式公開を目指しているような中小企業でない限り、その会社の株式に関心を持つ第三者が現れることは考えにくいことも理解しておく。

3.資金使途に合わせて長期と短期を適正化する

金融機関などから借り入れる資金調達には、短期(1年未満)と長期(1年以上)があり、支払利息などの調達コストも異なっている。

経営者が意識しなければいけないのは、資金調達する際には資金使途をはっきりさせることだ。例えば、工場の建設といった長期にわたる設備資金を、「金利が低いから」と言って短期借入金で調達してしまうと、返済期限の都度に借り換えせねばならず、手間がかかる。

短期の借り入れは運転資金のような一時的な資金需要に、長期の借り入れは設備投資のような高額となる資金需要に利用する。資金使途に応じて、短期と長期を使い分けなければいけない。

長期に関しては、将来にわたってどのように返済していくか、返済能力があることを示す事業計画書や経営計画書の提出を金融機関から求められる。事前準備の手間を考えると、早めに行動を起こしたほうがいい。資金調達の環境や自社の経営状況によって、長期の借り入れが難しい場合もある。

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