経営お悩み相談室

特売の考え方「陳列で特売に差をつけよう」(相談室8回目)

文:山崎泰嗣(中小企業診断士)

Taiji YAMAZAKI

皆さま、こんにちは。相談員の山﨑泰嗣です。

新年を迎え、いかがお過ごしでしょうか。今回は、ファッション衣料店を経営している50代女性の方からご相談を受けました。この時期によく行われる冬物バーゲン。「特売を予定しているのですが、売場陳列で気をつける点は?」というものです。

通常販売時の特売といえば、一般的には2通りあります。食品スーパー等で通常商品を期間限定で値下げする特売と、衣料品店等で季節商品を季節の終わりに値下げする特売です。今回は、ご相談いただいたお店に合わせて、冬物衣料の特売バーゲンを例に考えていきましょう。

気をつけるポイントは次の5つです。

  1. 通常商品と特売商品は同時に陳列
  2. 通常商品と特売商品の売場は混じり合う形で
  3. きれいに整理整頓が今風
  4. 値札をPOPに
  5. 特売のタイミングは地域の傾向に合わせる

(1)通常商品と特売商品は同時に陳列

特売バーゲン中でも、通常商品は陳列されているものです。店内すべてを特売商品にしてしまうこともありますが、できれば通常商品や次の季節の商品も一緒に陳列しましょう。

次の季節の魅力的な商品を見てもらうことは、お店の広告宣伝になります。特売を目指して、多くのお客さまがいらっしゃるということは、普段扱っている商品を見ていただく機会も増えているということ。

ですので、多くてもバーゲン品は売場の7割程度。3割程度は通常商品を並べ、入荷したばかりの「New Arrival」商品も一緒に展開することで、取扱い商品のPRをして、特売をお客さまの再来店につなげましょう。

(2)通常商品と特売商品の売場は混じり合う形で

通常商品をお店のPRにするために、特売商品は、売場を2分するような形でなく、店内に混じり合う形で陳列する方法もあります。商品のカテゴリーや使われ方が近いものを、通常・特売ともに近い位置で展開するのです。

特売につられて、通常商品が目に触れる機会が増えれば、本当に欲しい商品として、通常商品が選ばれる機会も増えます。ただし、お客さまが通常商品と特価商品の区別に気が付かない場合もあるので、購入するつもりで選んだ商品に、通常商品と特売商品が混じっている場合は、一言、通常商品は特価ではないことを伝えるなど、より親切な接客を心がけるとよいでしょう。

(3)きれいに整理整頓が今風

今年のお正月も、多くの百貨店や専門店が福袋を出しました。以前は、どんなものが入っているかかわからない、開けてみてのお楽しみというものが多かったのですが、最近では、中身が確認できたり、何が入っているのか、カテゴリーやサイズ、色などで整理された福袋になっています。

特売も同じです。以前はジャンブル陳列といって、ワゴンに「ごちゃごちゃ」に入れてお客さまが取り合うような陳列が特売の定番でした。しかし最近では、セールやバーゲンでも、きちんとディスプレイされた陳列で商品提案する店舗が増えています。「ごちゃごちゃ」感は、安さを演出し、活気を呼ぶにはよいのですが、一方で雑に扱われたようにも思われてしまいがちです。

「安さ」ではなく、商品を「お得」に買いたいと思っているお客さまに向けては、大切に扱われている「お買い得商品」として見ていただけるよう、整理整頓された陳列をするとよいでしょう。

(4)値札をPOPに

POPとは「Point of purchase advertising」の頭文字を取った略語で、日本では 購買時点の広告と訳されます。特売は、価格訴求がポイントの販売方法ですから、購買時にもっとも確認されるであろう「値札」にきちんと「広告」の機能をもたせましょう。

(1)「セール」「バーゲン」対象品であること、(2)価格がどれくらい下がっているか。(○%OFF)、(3)その結果、販売価格がいくらになったのか、という点は必須です。掲示の際は、迫力を出すために「文字は大きく」「数多め」がポイントになります。これによって「セールで売りたい」という店の意思を明確に打ち出しましょう。

また値札にPOPをつけることは、お店の管理にもつながります。価格管理の手法には、バーコード管理や一般的な伝票・台帳管理がありますが、どちらにせよ、間違った価格での販売の防止する上でも、きちんと行うとよいでしょう。

(5)特売のタイミングは地域の傾向に合わせる

特売のタイミングは、地域の標準に合わせます。地域の大きなショッピングセンターや百貨店が行う時期を見計らい、それより数日早いタイミングで行うことをおすすめします。

ただし、早すぎるのも、遅すぎするのも、そして長期間やりすぎるのもおすすめできません。早すぎると店の利益面でマイナスですし、遅すぎると売り切ることが不可能になります。また、長期間やりすぎると正価で売れない店になり、長期的には店が疲弊していきます。その年の売れ行きによる部分も大きいですが、地域のお店の傾向をよく見ておきましょう。

特売は、商品の活性化だけでなく、新しいお客さまを取り組むことにつながります。新年最初の特売を成功させ、年間の売上UPを目指しましょう!

掲載日:2012年1月 5日