よくわかる食品生産管理の基本とポイント
第3回 食品生産の基礎的管理
食品工場の生産管理とは、「お客さまの注文通りに製品をお客さまのお手元に決められた期日までに届ける仕事」です。まさに工場内の司令塔といえましょう。
具体的には、お客さまの要望を十分に聞いた上、従業員の生産性を考慮しながら生産計画を作成して生産部門へそれを落とし込むことです。
「特別企画 食品生産管理の基本」では、加工食品における生産管理の基本とポイントをわかりやすく説明します。
生産管理に本格的に取り組もうとしても、基礎的な管理ができていないと足元から崩れるおそれがあります。生産管理を磐石なものとするためにも基礎となる管理体制が必要です。
生産管理の基礎として、5S、設備管理、品質管理、工程管理、購買管理、物流管理などさまざまな管理があります。以下では、その中でも重要な基礎的管理である「品質管理」と「5S」を紹介します。
1.品質管理
品質管理はQuality Controlと英訳され、この頭文字をとって「QC」と呼ばれます。品質管理とは、顧客(買手)の要求を満たす品質の品物あるいはサービスを経済的につくり出すための管理技法であり、すべての基本となります。
品質管理の最も大きな目的は、品物やサービスの品質を一定以上の水準に確保して顧客に提供することです。そのための活動を品質保証と呼んでいます。品質保証は、幅広い品質管理活動の中でも中核をなす活動です。
品質管理は、
「不良品を出荷しない」→「不良品を製造しない」→「不良品を企画・設計しない」 という考え方に変わってきました。
品質管理のもう1つの重要な目的に「改善」があります。改善には、品物やサービスの品質に関する改善(品質改善)と業務の改善があります。
企業では、利潤を確保するためにあらゆる業務で効率的かつ効果的な仕事の進め方が要求されます。そのためには業務の中で発生するさまざまな問題を解決し、より有効で新しい方法を常に探索することが必要です。これが業務の改善です。改善活動は問題解決活動とも呼ばれています。
2.5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)
5Sとは、工場における基本姿勢の項目です。整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つの頭文字のSから「5S」と呼ばれます。各職場における5Sの徹底が工場のQCDを維持し、生産活動の体制を支えます。
5Sの定義は以下の通りです。
【整理】
いるものといらないものに区分して、いらないものを処分する。
【整頓】
いるものを所定の場所に、その表示をしてきちんと置く。
【清掃】
きれいに掃除する。
【清潔】
いつ誰が見ても、誰が使っても、不快感を与えないようにきれいにしておく。
【しつけ】
職場のルールや規律を守る。
5Sは、工場のコストダウンに対して直接的、間接的な役割をします。直接的な効果としてムダの排除があります。また、間接的な効果としては、5S運動を通じて従業員の自主改善能力が高められ、改善の進め方を理解する点にあります。
5S運動を進めるためには以下がポイントになります。
- 5S委員会の設置と職場リーダーの選任
- 5S運動開始の意識づけ
- 5S点検チェックリストに基づく点検
- 大掃除でのスタート
- 整理の推進
- 整頓の推進
- 清掃の推進
- 5S運動定着の推進
(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)