よくわかる食品衛生管理の基本とポイント

第3回 清掃・洗浄・殺菌

おいしさを語る前に食品は「安全」でなければなりません。安全とは食品をつくるための土台です。安全な食品を日々製造することで消費者から信頼を得られ、その信頼によって消費者にも安心感が生まれます。

「特別企画 食品衛生管理の基本とポイント」では、安全な食品製造に不可欠な衛生管理の基本とそのポイントをわかりやすく説明します。

清掃、洗浄、殺菌はまさに食品工場における衛生管理の基本です。清掃、洗浄そして殺菌にはそれぞれどのような違いがあるのか。なぜ殺菌までするが必要なのか。順次、説明します。

1.清掃に必要な用具

工場内で使用する清掃道具は作業場ごとに区分します。また、作業場内でも清掃する場所によって清掃道具を区分します。例えば、ブラシも床面、作業台の脚部分、作業台の上など使用部位に応じて白、青、赤のそれぞれに色分けします。

使用するバケツも同様に区分します。そうしたことによって、床面の汚染が作業台の上に広がることを防止します。

2.洗浄に必要な用具

工場の洗浄は、物理的に擦ること、化学的な洗剤を使用すること、お湯により熱をかけることが基本です。また、洗浄する個所によって使用する用具も変わります。作業台、コンベアなどそれぞれの個所にあったスポンジやブラシを使用します。

床面を洗浄するためには専用の洗浄用蛇口が必要であり、さらに蛇口からお湯が出ることも必要となります。

3.殺菌に必要な用具

食品工場の設備や道具はきれいに洗浄したあとに殺菌します。きれいにしないで殺菌すれば、あとで細菌が増殖してしまうので殺菌の意味がありません。

殺菌には、蒸気加熱、乾燥殺菌庫、アルコール殺菌などの方法があります。どの方法でも殺菌したあとの処置が重要です。例えば蒸気加熱殺菌した容器でも、殺菌していない台車に載せた時点で殺菌効果がなくなります。また、殺菌でアルコールや塩素などを使用する場合はその濃度が重要です。アルコールは濃度が一定より薄くなると効果がなくなります。

設備や道具の殺菌が確実に行われているかどうかを判定するため、拭き取り検査を行って殺菌の状況を確認することが必要です。

4.床の掃除

床掃除には清掃、洗浄、殺菌があります。工場の床に食品残さなどが落ちて従業員の靴の裏についた場合、そこから汚染が広がります。食品残さはすぐに取り除くことが必要です。床の清掃がしやすいように、床と棚の間隔は20cm以上あけることが必要です。

最近はドライ化された床面もありますが、床面に油分などが落ちていていることなどがあります。床面は洗剤で定期的に洗浄して汚れを取り除く必要があります。

作業場の床に乳酸菌などが付着して汚染の原因になっているケースがあります。床面は殺菌剤を撒いて放置してきれいに洗浄することが必要です。

5.トイレの清掃

工場で働く人でトイレを使用しない人はいません。だから自分が毎日使いたいトイレにします。工場で一番清潔であるべき場所がトイレです。トイレをいかに清潔にするかは工場全体を管理するうえで重要なポイントです。

便座はきれいでしょうか。便座は取り外しが可能ですので汚れがつく前に掃除をします。ニオイがある場合は、必ずそのニオイの原因がありますので、その原因を見つけて絶つことが必要です。そして日々のチェックを行うことで問題がないかを確認してください。

食品工場で最低限必要な衛生管理ルール

(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)