闘いつづける経営者たち
「杉浦 広一」スギホールディングス株式会社(第2回)
02.転換点を迎えたドラッグストア業界
他業態が大衆薬の販売に参入
ドラッグストア(DS)業界は、2009年6月に施行された改正薬事法により大きな転換点を迎えた。
これまで、一般用医薬品(大衆薬)は原則として薬剤師が対面販売するのが基本だった。そのため、その販売先はDSや薬局にほぼ独占されていた。しかし、新たな資格制度である「登録販売者」が導入され、副作用リスクの少ない大衆薬の販路が広がることになった。
医薬品販売の参入障壁が低くなったわけで、これにより家電量販店や大手スーパー、コンビニエンスストアなどが大衆薬の販売に参入した。特に24時間営業しているコンビニの参入は脅威。DSは同業同士の競争から他業態を巻き込んだ再編に突入することとなった。
現在、DS業界は共同仕入れやプライベートブランド(PB)の共通化などを目的とした連合が、7グループある。業界1位のマツモトキヨシ率いるマツモトキヨシグループや、イオン系列の中堅DSとツルハホールディングス(HD)連合のハピコムがその代表格だ。しかし、スギHDは76年の創業以来、関東と関西の中小DS2社を子会社化したのみ。現在の店舗網の大半を自力で出店してきた。ただ、再編と無縁だったわけではない。
ジャスコ(現イオン)との提携
00年1月、スギ薬局(現スギHD)はジャスコ(現イオン)と資本・業務提携し、日用品を中心に共同仕入れを始めた。当時の売上高は現在の10分の1の292億円。まだ地方の中堅DSにすぎなかった。
しかし、この提携は06年にあっけなく幕を閉じた。提携当時の杉浦社長(当時、現会長兼CEO)には、提携によって仕入れコストを下げるとともに、岡田元也ジャスコ社長の経営手腕を身近で学べるという思いがあった。この目的は数年間の提携期間中に、ほぼ達せられたという。
だが、一方でジャスコ系DSが立地する関東地区に出店しにくいという問題も新たに浮上。「岡田社長から得るものは大きいが、このままでは関東への出店がままならない」。こう考えた杉浦は岡田社長との話し合いの末、提携を解消した。
他社との競争に勝ち抜く秘策
DS大手同士の合併はますますさかんになり、寡占化が進むだろう-。杉浦は今後のDS業界をこう予想する。その結果、5年後のDS業界は、現在の家電量販店のように、売上高5000億円規模の企業5社程度がリードする構図になると見ている。
「近いうちに店舗網が薄い関東圏で、300億-400億円程度のDSを買収したい」(杉浦)。業界が新たな再編に突入した今、スギHDはいよいよ本格的なM&Aに動く考えだ。そして、スギHDには今後予想される他社との競争に勝ち抜く秘策があった。
プロフィール
杉浦 広一 (すぎうら ひろかず)
1950(昭和25)年愛知県西尾市生まれ。74年岐阜薬科大製造薬学部卒。76年に昭子夫人とスギ薬局を創業した。82年スギ薬局(現スギホールディングス)を設立し、社長に就任。09年会長兼CEOに就任し現在に至る。座右の銘は「不易流行」「和顔愛語」。
企業データ
- 企業名
- スギホールディングス株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1982年3月
- 資本金
- 154億3400万円(2010年2月現在)
- 従業員数
- 連結合計3924名(2010年2月末現在)
- 所在地
- 〒446-0056 愛知県安城市三河安城町1丁目8-4
- 事業内容
- スギ薬局グループ全体の経営管理、運営
- 売上高
- 2935億1100万円(2010年2月期)
掲載日:2010年8月19日