ビジネスQ&A

若い従業員の離職率を下げるにはどうすればよいですか?

最近の若い社員は我慢ができないのか、すぐに仕事を辞めてしまいます。せっかく仕事を教えても短期間に人が替わってしまうので、教える方も大きな負担になっています。どうしたら若い人を定着させることができるのでしょうか。

回答

離職原因の一つとして、「心のエネルギー不足」が考えられます。上司は、若い社員に対し、自己成長感、自己達成感を与え、やる気をもって自発的に行動できるように導く育成方法が求められます。まずは、相手の存在を認める「承認」のメッセージを発信することから始めましょう。

従業員が辞めてしまう理由はさまざまですが、とくに若い従業員の場合、「情熱をもって仕事に取り組めるかどうか」が勤務態度に大きな影響を与えます。仕事にやりがいを見出せなくなる「心のエネルギー不足」が、離職原因の一つとして考えられます

米国を代表する企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)の元会長、ジャック・ウェルチは、リーダーに必須の条件として、次の4つの「E」をあげています。

  • Energy(変化に対応するエネルギー)
  • Edge(困難な問題に判断をくだせる鋭さ)
  • Execute(ビジョンを結果につなげる一貫した実行力)
  • Energize(相手に活力を与える能力)

リーダーとしてはどれ一つとして欠くことのできない重要な要素ですが、先ほどの「心のエネルギー不足」に対応する「エナジャイズ」こそ、若い従業員の定着率にもっとも大きな影響を与える要因であると言えるでしょう。

エナジャイズとは、その名のとおり、他人にエネルギーを与える力、やる気を引き出し、行動へと導く能力です。そしてその「エナジャイズ」の基本は、相手の存在を認め、受け入れる、「承認」のメッセージです。

相手が自分のことを憶えていてくれる、見ていてくれる、それだけでうれしく思ったことはないでしょうか?このように、人は「受け入れてもらっている」という感覚だけで、安心したり、モチベーションが高まったりするものなのです。つまり、上司が部下に対して、「あなたを大切にしている」、「尊重している」、「スタッフの一員として認めている」といった気持ちを伝えるすべての言葉・姿勢が、「承認」のメッセージなのです。

ここで気をつけたいのは、単に「誉める」ことだけが承認ではないということです。

「よくやったね」という賞賛は、相手に対してのあなたからの意見や評価と取られ、素直には受け入れられないことがしばしばあります。ですから、結果を評価する言葉ではなく、相手に現れている違いや変化、成長や成果という具体的な「事実」を伝えましょう。相手が達成感をもち、さらに前向きにものごとに取り組もうという気に自然となるような言葉や姿勢が重要なのです。

新入社員に対するコミュニケーションを考えると分かりやすいでしょう。華々しい成果はあげていなくても、「こういうことができるようになった」、「ここまできた」という「事実」は日々積み重ねられているはずです。それらをタイミングよく、気持ちを込めて指摘していけば、これで十分な承認のメッセージとなります。

もっとも望ましいのは、「相手が自分自身では気づいていない変化や成長」をいち早く察知して、それを伝えることです。

「ここまで来たね」ということを事実として伝えられることで、相手は自分の成長や変化を知ります。そしてそのことに喜びを覚え、そのこと自体に達成感をもつのです

このような自己成長感、自己達成感は、「やる気」や「自発的な行動」にとって、非常に大きな推進力となります。つまり、仕事自体を楽しむようになるのです。

手軽にはじめられるのは、「従業員一人ひとりへ声を掛けること」、「従業員の状況を覚えていて、それを伝えること」、「従業員の名前を呼んであいさつすること」、「従業員をねぎらうこと」といった、存在を認めるメッセージの発信でしょう。

「何だ、そんなこと」と思われるかもしれません。しかし、この効果をあなどることはできません。

ここでいう「存在を認める」とは、「相手のよいところを見て、心に留め、それを表現する」ということです。上司から声をかけられたり、変化に気づいてもらったりするだけで、部下は「上司が自分に関心をもってくれている」ということを確認します。そして、人は自分の重要性を感じたとき、つまり「自分は上司から重要な人物だと扱われている、存在を認められている」と感じたときには、自分から動きたくなるものなのです。

まずは、「いつも明るい元気な声だね」、「今日は一段と笑顔がいいね」などと、日頃のあいさつに「観察した事実」を付け加えてみてください。さらに、言葉をかける際には、「○○さん」と名前を添えたいものです。名前を呼ばれるたびに、部下は「存在を認められている」という安心感を得ることができるのです。離職率の低下は、ここから始まります。

回答者

中小企業政策研究会

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