よくわかる レトルト食品の基本

第2回 レトルト食品の生産と流通

レトルト食品とは、レトルト(高圧釜)により120℃・4分以上の高温・高圧で殺菌されたパウチ(袋状のもの)、または成形容器(トレー状など)に詰められた食品のことを言います。昭和40年代に市場に登場してから40数年間の累計で生産総額は2000億円以上になります。

軽量で取扱いやすく簡単に開けられること、わずかな時間で温められること、さらに容器の廃棄処理がしやすいことなど、その商品特徴が多くの生活者のニーズに応えることから消費が大きく伸び、いまや一般の家庭では欠かせない食品のひとつとなっています。

そこで「よくわかる レトルト食品の基本」では、レトルト食品における基礎知識とその技術活用について説明します。

1.レトルト食品の国内生産量

レトルト食品の年間生産量は、2003年に30万トンを超えました。その後も徐々に生産量は増加しています。直近でみると、2011年は33万トン台であったものが2012年には36万トン近くまで生産量が伸びています。

生産がもっとも多い品目はカレーで、その量は14万トン超で全体の約40%を占めています。次いで、つゆ・たれ類が4.2万トン、中華合わせ調味料などの料理用ソースが4.1万トン、パスタソース3.5万トン、かまめしの素とスープ類がそれぞれ1.4万トン、ご飯類(かゆが主体)が1.3万トンと続いています。

特につゆ・たれの伸びが著しく、鍋つゆや焼き肉たれなどの人気が高くなっています。

レトルト食品の生産量推移(単位:トン)
(公益財団法人日本缶詰協会 統計資料より)

2.レトルト食品の表示

レトルト食品の表示については、一般的な加工食品と同様に一括表示が義務づけられています。以下に一括表示例を挙げます。

レトルトカレーの場合のレトルト食品一括表示の例を記載した表
一括表示例(レトルトカレー)

(1)「食品表示法」について

食品の原材料や添加物、栄養成分などの表示方法を統一する「食品表示法」が2013年6月中に公布され、2年以内に施行されることとなりました。

食品表示法はこれまで食品衛生法、日本農林規格(JAS)法、健康増進法の3法に分かれていた表示ルールを一元化します。任意だったエネルギーや脂質などの「栄養表示」も義務化し、消費者にわかりやすくすることになっています。

一方で、厳密な表示が難しい加工食品の原料原産地や中食、外食でのアレルギー表示などの基準が今後の検討課題となっています。今後は一括表示についても情報収集しながら対応していく必要があります。

3.海外のレトルト食品の生産と流通

レトルト食品は、わが国が世界最大の生産、流通国となっていますが、海外では欧州や米国、オーストラリア、アジア諸国などで流通しています。特に東南アジア諸国や韓国、台湾などの普及がめざましいものとなっています。

(1)欧米でのレトルト食品の状況

欧州では、以前から缶詰や冷凍食品などが多く消費されており、その食習慣が消費者の間に根強く浸透していることから、レトルト食品の消費はあまり伸びていないのが現状といえます。

しかし、業務用向けの製品は多く、加工原料としてマッシュルームやグリンピース、キャロット、ポテト、ツナなどが利用されている。

(2)米国でのレトルト食品の状況

米国でのレトルト食品の生産量は5万トン程度とみられています。これは缶詰生産量の1%程度にすぎず、市場規模はあまり大きくありません。その背景は、米国が世界的な規模の缶詰生産国であると同時に冷凍食品の普及が最も高い国であり、市場は既に整備されているという見方が一般的です。しかし、鮭缶メーカーが業務用向けにスタンディングパウチに切り替えるなど、業務用向けの輸送コストや包装材料費削減のために積極的に取り入れられています。

(3)アジアでのレトルト食品の状況

欧米ではレトルト食品市場があまり大きな規模ではないのに対して、アジアでは湯を使う(ゆでる、蒸すなど)調理法が一般的なため、湯で温めて食べるレトルトパウチ食品の普及が進んでいます。

流通量の多い国は韓国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、中国で、これらの国では国内向けばかりでなく、輸出向けの生産も行っており、タイからツナやカレーなどが日本にも輸出されています。

(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)