食品事業者必見!知って得する豆知識

知って得する商品開発(商品開発プロセス)

2020年 3月 24日

前回は1.マーケティングリサーチを中心に説明をしました。今回は残りの2.商品開発コンセプト検討、3.商品設計、4.販売戦略の設定について解説します。

商品開発のプロセス

商品開発プロセス

1.マーケティングリサーチ(前回解説済)

前回解説したマーケティングリサーチでは、消費者視点での商品マーケティングリサーチ、バイヤー視点での商品マーケティングリサーチを行い、既存のマーケットで評価されている(売れている)商品の傾向をつかめたはずです。スーパーマーケットの醤油売り場のマーケティングリサーチを行いましたので、今日現在、こだわりスーパーマーケットの売り場においてお客様に支持されている醤油はどういうものかがわかったということになります。

マーケティングリサーチ項目を再掲しておきます。

消費者視点での商品マーケティングリサーチ

I-A どこで買う   スーパーマーケット・コンビニ・百貨店・専門店・WEB通販
I-B 誰が使う    家族・自分・ギフト
I-C 誰がターゲット 性別、年代、ライフスタイル、未婚既婚、単身・二人以上世帯
I-D 利用シーン   自宅・オフィス・外出携行/朝昼晩の食事・間食
I-E 目的      主菜・副菜・おやつ・味の調整
I-F どのように使う そのまま・レンジアップ・湯煎・炒め・煮る等
I-D 保存方法    使い切り・複数回利用を想定/要冷・常温/消費・賞味期限
I-E 価格      品質と価格のバランス
I-F 味       ターゲットに合ったおいしさの追求ができているか
I-G 原料      国産・輸入素材/添加物利用度

バイヤー視点での商品マーケティングリサーチ

II-A 商品価格     売りやすい価格帯か/利益が確保できるか/商品回転率はどの程度か
II-B 陳列しやすさ   サイズ感(幅・高さ)/売り場形状にマッチするか
II-C パッケージ    流通耐性のあるパッケージか/売り場で目立つか
II-D 販促のかけ方   POP・インストアプロモーション・チラシ
II-E 商品陳列量    どの商品を一番売り込みたいか
II-F 原材料・製造方法 原材料・製造方法へのこだわり度合い

2.商品開発コンセプト検討

今回は、商品開発コンセプト検討を行います。目的は、「だれに」、「何を」、「どのように」利用してもらう商品なのかを具体化することです。マーケティングリサーチで収集した情報に加え、社員一同を集め、醤油市場でこんな商品があったら便利ではないかという情報をすべてテーブルにのせ、商品のコンセプトを決定します。

商品マーケティングリサーチ項目の中にあった

I-B 誰が使う    家族・自分・ギフト
I-C 誰がターゲット 性別、年代、ライフスタイル、未婚既婚、単身・二人以上世帯
I-D 利用シーン   自宅・オフィス・外出携行/朝昼晩の食事・間食
I-E 目的      主菜・副菜・おやつ・味の調整
I-F どのように使う そのまま・レンジアップ・湯煎・炒め・煮る等
I-D 保存方法    使い切り・複数回利用を想定/要冷・常温/消費・賞味期限

を検討するプロセスになります。

Y社が今回の会議で決定した開発商品のコンセプトは、以下のとおりです。
「だれに」=40代以上の健康を意識する単身男女が自家需要で
「何を」=Z商品と比べ50%減塩した木桶仕込み醤油を
「どのように」=小さい100mlサイズを自宅で2か月程度の使い切りで

3.商品設計

商品設計は

  1. 売価原価設定
  2. パッケージデザイン
  3. 使用原料
  4. 製造方法
  5. 製造方法

等、具体的な商品の「形」を詰めていくプロセスです。商品設計の際、もっとも重要なのは市場に受け入れられる売価原価の設定です。こだわりの原料、こだわりの製法だから原価が高いというのでは、市場から受け入れられません。価格と品質のバランスの取れた商品設計を行いましょう。商品マーケティングリサーチ項目で表すと

I-F  味        ターゲットに合ったおいしさの追求ができているか
II-A 商品価格     売りやすい価格帯か/利益が確保できるか/商品回転率はどの程度か
II-B 陳列しやすさ   サイズ感(幅・高さ)/売り場形状にマッチするか
II-C パッケージ    流通耐性のあるパッケージか/売り場で目立つか
II-E 商品陳列量    どの商品を一番売り込みたいか
II-F 原材料・製造方法 原材料・製造方法へのこだわり度合い

を検討するプロセスになります。

Y社の新商品は「減塩50%うまさしっかり木桶仕込み醤油」です。脱塩装置を新規に導入したためコストアップになっているのですが、市場が受け入れられる原価売価を勘案し、売価は280円、卸価格は196円としました。
パッケージは商品マーケティングの結果からトレンドである「酸化防止ボトル」の採用を検討しましたが、価格が高すぎるため今回は導入を見送りました。

4.販売戦略の設定

販売戦略の設定は

  1. どのような販売チャネルで売るか
  2. 具体的な販路開拓手法はどうするか
  3. 商品プロモーションはどうするか

等を検討するプロセスです。販売チャネルは細分化が進んでおり、食品小売りだけをみても食品スーパーマーケット、食料品専門店、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどがあり、加えて消費者にダイレクトに売るEC、百貨店催事への出店などがあります。販売チャネルの設定の明確性が、販路開拓手法と商品プロモーションに大きく影響しますので、できるだけ具体的に設定しましょう。商品マーケティングリサーチ項目で表すと

I-A  どこで買う    スーパーマーケット・コンビニ・百貨店・専門店・WEB通販
II-D 販促のかけ方   POP・インストアプロモーション・チラシ

を検討するプロセスになります。

Y社新商品は、販売チャネルを「こだわり商品を扱うスーパーマーケット」に設定しました。そのため、販路開拓手法は、こだわり商品を中心に扱う卸売業者が年間2回主催する展示会への出店を軸にしつつ、自治体等が主催する商談会への参加で直接バイヤーへ営業をかける方針としました。消費者向けの商品プロモーションは、今回の新商品の市場規模が大きくないと判断し、売り場へのPOP支給など最小限のものにとどめることにしました。

以上、商品開発手法の一例をケーススタディで紹介しました。商品開発手法は様々なやり方がり、正解はありません。ただし、遊休設備の有効活用や安価で手に入る原料の活用など、自社都合での新商品開発だけは避けなければいけません。そのためには、市場ニーズを理解したうえで新商品開発ができる商品マーケティングリサーチを重視して新商品開発をしたほうが良いでしょう。そのうえで自社の商品開発力や営業力などを勘案し独自の商品開発プロセスを構築してみてください。

解説者

中小企業基盤整備機構 チーフアドバイザー 籾山 朋輝

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