闘いつづける経営者たち

「花木義麿」オークマ株式会社(第1回)

01.イメージ刷新に全力

「2013年は生産改革元年」。こう力説するのは工作機械メーカー、オークマの花木義麿社長だ。同社は本社工場(愛知県大口町)の今春の新工場棟稼働に向けて、生産改革を推進している。新工場棟は今後数年間にわたって総額200億円を投じる本社工場再構築計画の第1弾として整備される。「自動化と熟練の技が織りなす未来工場を構築し、世界一の高効率生産を実現する」(花木社長)と意気込む。「機電融合」で知られる同社は改革を重ねながら、“日本でモノをつくって世界で勝つ”戦略を鮮明にしつつある。

売りは「メード・イン・ジャパン」

米国IMTSで発表された5軸横型マシニングセンター「MU-10000H」

「機械はごつく、企業カラーは地味」とのイメージが強かったオークマ。就任7年目を迎えた花木社長によって、そんなイメージが最近変わりつつある。米シカゴ市で2012年9月に開かれた第29回国際製造技術展(IMTS2012)に各社が自慢のマシンを披露する中で、同社のデザイン性に富む5軸横型マシニングセンター(MC)「MU-10000H」は異彩を放った。「オークマが得意とする大型の5軸加工機、複合加工機などがフィットするのが米国市場。過去最高だった売上高を更新したい」と花木社長はその展示会場で、同社に吹く“フォローの風”をアピールした。

同機は自社最大サイズの自信作で、航空機やエネルギー関連などの産業が多い米国を意識して開発した。現地法人による顧客サポート、情報収集の成果の一つでありながら、売りは何と言っても「メード・イン・ジャパン」だ。ヤマザキマザックや森精機製作所など競合の工作機械メーカーが海外生産を増強しており、オークマも中国や台湾で工作機械を生産する。それでも主力拠点の可児工場(岐阜県可児市)を含む日本での生産割合は85%に上り、オークマはさらに国内生産にこだわり続ける。

モノづくりの理想形を追求

オークマ本社工場リニューアル後のメーン工場棟の完成予想図

そんな企業姿勢を明確に示したのが、12年8月に公表した本社工場の再構築プロジェクトである。約3年間にわたり3段階で行う計画で、商品ジャンル別に部品加工から組み立て、出荷までの「自己完結型一貫生産」の体制を整える。従来は機種別ではなく、加工なら加工、組み立てなら組み立てなどと、機能ごとに工場棟を分けるスタイルだった。まず13年3月期は、約70億円を投じることで、完成後32年経つ一部工場棟を増改築し、中・大型旋盤、複合加工機エリアを整備する。生産効率で従来比2倍、対象32機種の生産能力は同50%増(売上高)をそれぞれ伸ばす目標を掲げる。部品や中間在庫の過不足を抑制することにより、顧客ニーズを受けた設計変更などに柔軟に対応できるようにする。自動・無人化設備を導入して現場の担当者数を3分の1減らし、浮いた人員は社内に再配置する。

同プロジェクトは当初、12年初旬に公表されるはずだった。ただ、1ドル=80円前後の超円高と欧州の債務危機、中国の景気減速などに見舞われ、結論を出すのに時間がかかった。判断には慎重を極めたが「10-20年先を見据えたモノづくりの理想的な姿を追求する」(花木社長)方針をようやく図面化し、実行に移したのだ。プロジェクトを公表した場では「当社にとってアグレッシブ(攻撃的)な取り組み」と役員が語るのを横目に、花木社長は「果たしてそうだろうか。為替の影響がなければもっといいが」とつぶやいた。工作機械業界の中でも強気の受注予測で知られる花木社長は、モノづくり現場の改革でますます意を強くしている。

プロフィール

花木 義麿 (はなき よしまろ)

1942年(昭17)生まれ。愛知県出身。65年、名古屋大学工学部を卒業し、大隈鉄工所(現オークマ)に入社。99年常務、2001年オークマアメリカ社長、05年オークマ社長。精密工学会フェロー。数値制御(NC)装置「OSP」の推進役で、同社の技術陣の顔として知られる。「才気煥発(さいきかんぱつ)、切れ味鋭い技術者」「品格があり、基本思想にこだわる。論理的で実行力がある」といった社内外の声がある。趣味はゴルフ、サッカー観戦。「真摯(しんし)」を信条とする。

企業データ

企業名
オークマ株式会社
Webサイト
資本金
180億円
所在地
愛知県丹羽郡大口町下小口五丁目25番地の1
Tel
0587-95-9295
事業内容
数値制御(NC)工作機械(旋盤、複合加工機、マシニングセンタ、研削盤)、NC装置、工場自動化(FA)製品、サーボモーター、その他、製造・販売
連結売上高
1405億円(2012年3月期)

掲載日:2013年2月18日