ビジネスQ&A

職場にロボットを導入するうえでの基本について教えてください。

介護事業者ですが、人手不足解消策および従業員の労働負荷軽減のためにロボットを活用したいと思います。そこで、ロボットの種類や開発の状況、導入の手順などについて教えてください。

回答

ロボットには産業用ロボットとサービスロボットがあり、今後の成長の中心となるのはサービスロボットです。ロボットを導入する際には、(1)導入目的の明確化、(2)情報収集、(3)導入計画、(4)導入、(5)運用、の手順にしたがい導入を進めることで、初期の期待効果を得ることができます。

【ロボットとは?】

ロボット(robot)は、人の代わりに何らかの作業を自律的に行う装置、もしくは機械のことをいいます。Robotは、1920年チェコスロバキアの作家カレル・チャペックが書いた戯曲「ロッサム、ユニバーサル、ロボット会社」において用いられた、強制労働を意味するチェコ語のrobotaをもとに作られた言葉です。

【ロボットの種類】

ロボットは、産業用ロボットとサービスロボットに大別することができます。

産業用ロボットは、自動車や建設機械の溶接・塗装、電気製品の組立て、部品の搬送などが主な仕事で、全世界で現在約80万台が稼働しています。日本は世界で最も産業用ロボットを生産し、稼働させている国の1つです。一般的にティーチングプレイバック(教えた動作を繰り返し行う)という方法で動作します。

一方、専ら人の傍らで文字通りサービスを提供するロボットをサービスロボットといいます。仕事は掃除や留守番、警備、受付などさまざまですが、私たちの生活をサポートしてくれる強い味方となることが期待されています。そのためには自然なコミュニケーション、安全、状況変化への対応など、多くの技術課題をクリアする必要があります。

すでに、医療・福祉・介護ロボット、消防・防災ロボット、原子力用ロボット、宇宙用ロボット、教育・アミューズメントロボットなどが開発され、実用化が始まっています。

【今後成長が期待されるサービスロボット】

ロボットの市場規模は現在約1.6兆円といわれていますが、2025年には5.3兆円、2035年には約10兆円に成長すると見込まれています。その成長の中心となるのがサービスロボットです(図参照)。

ロボット産業の将来市場予測 ロボット産業の将来市場予測
図1 ロボット産業の将来市場予測(NEDO・経済産業省)

出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構HP

【ロボット導入の手順】

(1)導入目的の明確化

まず何のためにロボットを導入するのか考えましょう。スタッフの方と業務上の問題点や課題を話し合い、どのような業務で、どのような用途に、どのような効果を期待するかを経営者・管理者・現場スタッフで十分検討し、その目的を共有することが大切です。そのことによって、最もふさわしいロボットの機種選択を行うことができます。

(2)情報収集

上記(1)で確認した導入目的に応じて、ロボットの種類や機種に関する情報、用途、効果など多くの情報を収集しましょう。そのためには各種展示会に足を運んだり、あるいは個別にメーカーに問い合わせるなど、目的意識を持って情報収集することが大切です。

また、ロボット本体および付属品などの導入コスト、さらにはランニングコストも含めて、費用対効果を検討することが必要です。メーカーに実験データや事例データなどを見せてもらい、そのロボットを導入することでどのような効果、便益が期待できるかを十分に確認します。

(3)導入計画

候補機種に関する詳細情報や費用対効果の比較検討を行い、導入機種を決定します。導入機種の有効活用のために必要な知識や運用技術習得のための研修・トレーニング計画を立案します。また、導入後の使用作業や場所、評価の方法について検討しましょう。

(4)導入

ロボットの活用に当たっては、運用スタッフを決めておく必要があります。機種によってはかなりのスペースが必要です。あらかじめロボットの大きさを確認し、保管、訓練、使用のためのスペースが確保できることを確認することが重要です。

使用場所での電源やインターネット環境などが整備されているかも確認しましょう。受入れ体制を確認した上で、設置日を決定し、メーカーが実施する教育・研修を必ず受講して、その内容を理解する必要があります。

(5)運用

ロボット導入をスムーズに行い、初期の期待効果を得るには、PDCAサイクルを回すことが重要です。

  • Plan:使用目的を達するために、どのようにロボットを活用するかの計画を立案
  • Do:計画にしたがって使用
  • Check:検証・評価を行い、問題点や課題の洗い出し
  • Action:改善案の検討
回答者

中小企業診断士 林 隆男

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