ビジネスQ&A

新規ターゲット顧客企業リストの作り方を知りたい。

2021年10月18日

法人向け(BtoB)の新製品を販売しています。カスタム品であるため、顧客と商談しないと販売が難しいです。既存顧客を通じての紹介や、自社ホームページからの問合せから商談につながることはあるのですが、「待ち」の営業スタイルだけでは不足なので新規顧客開拓の取組を始めたいと思っています。まずは電話営業からと考えていますが、リスト作りはどのように進めていったらよいでしょうか?

回答

商品特性、ターゲット、自社が新規開拓にかけられるリソース(人員・時間・費用)を勘案し、自力で作るか外部から調達するかを決めます。リストができたら実際に電話営業を行い、手応えを確認しながら見直しを行って最適なターゲティングを目指します。

① 自力で作るか他所から入手するか決める

自力で作るのはたいへんですが、その分作成段階で選別が効き最初から精度が高めのリストができあがります。これに対し、他所から購入を行えば大量のリストが簡単に入手できますが、必ずしも自社の商品やターゲットと整合しないケースもあります。
営業による説明が必須の商品で、顧客ごとにニーズの見極めや窓口部門の探索が必要な状況ならば精度を優先して自作する方がロスが少ないでしょう。逆に、顧客ごとのカスタムや説明の必要が少ない商品で、ターゲットとする業界・部門も明確ならば数を優先して購入する方が効率が良いでしょう。
また、新規開拓の電話営業に何人投入できるのか、どのくらいの時間と費用をかけられるのか、も選択に影響を与えます。状況に応じて使い分けるようにしましょう。
以下の表に、自力/他力それぞれの主要な手段、メリット・デメリットをまとめてみましたのでご参考ください。

 

主要手段

メリット

デメリット

自力で作成

公開データのWeb検索、業界紙ランキング、業界団体名簿、四季報などの企業情報誌、展示会出展社リスト、 など

・作成の過程で顧客の情報が得られ、ふるいにかけられる
・的確な商談につながる

・手間がかかる
・件数を確保するのがたいへん

他所から入手

完成品リストを購入、自社用にアレンジしたリストを購入、データベース管理画面へのアクセス権購入、コンサルティングとセットで購入、 など

・時間が節約できる
・大量のリスト入手も可能
・独自の情報源にアクセスできることもある

・コストがかかる
・求めているリストがあるとは限らない
・端末操作に慣れが必要なものもある

② 自力で作成する場合の留意点

有望な企業リストを見つけてもデータ化されていなかったり電話番号が記載されていなかったりするので、Web検索と組み合わせてデータベースを作成する作業が必要になることが多いです。ただし、そのような調査の過程で、リストからはわからない情報が入手できたりもします。例えば、製薬業界のリストには社名が「〇〇製薬」となっている会社が多いですが、製造会社なのか販売会社なのか、医家向けなのか一般向けなのか、社名だけではわかりません。つまり、同じリストに載っていても中身が違うため、全てが自社のターゲットとは限らないことになります。
したがって、Web検索を行いホームページを個別に参照することで事業内容がわかれば販売のターゲットとなる会社かどうか早い段階で判断することができ、無駄な架電をしないですむことになります。また、企業のホームページには製品案内や事業内容の他、直近の課題や取り組み、会社の方針、組織図、事業所案内などが載っていることもあり、これはどの部門を狙ってアクセスすればよいかのヒントとなるだけでなく、実際の商談段階で顧客理解に基づいたトークをするための情報源となります。

③ 他所から入手する場合の留意点

独自の情報源を持つ会社から完成品のリストを購入することは、自社商品のターゲットと適合する場合は有効です。中小企業に特化したリスト、企業の人事部のリスト、広告宣伝部のリスト、販売商品別の小売店のリスト、業歴の長い企業のリスト、など様々なリストが存在しますので、例えば自社商品が人事の採用の困りごとを広く解決するようなものであれば、人事部リストに架電することでニーズにマッチした窓口に繋がることが容易になります。
他に、最近では自動的にネット内をクローリングし、Web上に公開されている企業情報を自動的に収集してデータベース化する仕組みを作ったうえで、このデータベースへのアクセス権を販売する形式も一般的になっています。この場合、地域・資本金・売上高・従業員数など色々な切り口でフィルタをかけ自社がターゲットとする企業の絞り込みを行うことができます。自分で管理画面を操作してダウンロードするなど一定の慣れが必要ですが、何度も条件を変えて試すことができる点は便利です。
さらに、データベースに独自の情報源を紐づけて、絞り込み条件の数を増やし付加価値の高いサービスとして提供する会社も登場しています。例えば、「海外M&Aを行った企業」や「工場を新設する計画のある企業」「新規事業を立ち上げた企業」など詳細な条件でリストを抽出できる点が魅力です。このような会社はコンサルティングサービスも付帯していることが多く、費用はかかりますが、自社に適合したリスト作成につき相談し、提案を受けることも可能です。

④ リストの精度を上げる

リストができたら、それを使って実際に架電していきます。架電した日時や、つながったかどうか、再架電のタイミング、判明した部署名・担当者名・商談の進捗状況などを記録しておきます。そうすることで、計画的な架電ができ、顧客情報も次第に蓄積されていきます。
元々電話営業からのアポイント取得成功率は良くて数%、悪いときは1%未満とも言われており、リストが適切かどうか判断するには一定量以上の活動を必要としますが、それでも明らかに手ごたえが悪くニーズに合っていないと感じた場合はリストの見直しが必要です。
抽出条件や抽出範囲の設定変更を行ったり、ベースとなるリストを刷新したりといった対策を行います。

まとめ

成果に繋げるには随時リストを見直し、適切な絞り込みによるターゲティングの最適化を図ることが不可欠です。振り返りができるよう抽出条件等を記録しておき、試行錯誤しながら粘り強く活動を継続していきましょう。

回答者

中小企業診断士 橋本 良一