ビジネスQ&A

専門家派遣の上手な活用法を知りたい。

2021年 3月 1日

公的機関の制度を利用して専門家に来てもらうことになりました。直近ではテレワークの導入を実現するのが目的ですが、できれば中長期的な販路拡大についても相談したいと思っています。そのようなことができるのかを含め、制度の利用にあたり気を付けるべき点が知りたいです。

回答

専門家派遣制度ならではのメリットを活かし、制度の目的と制約、専門家との相性、自社の体制を踏まえて成果が最大化できる課題を設定し、取り組みましょう。

専門家派遣のメリット

専門家に相談する機会は、リアルであれば街頭の相談会に参加したり、セミナーへ参加した時に質問したりするなどの方法で作ることができます。
ネットであればWeb を通じた質問やチャットを使った質問相談を受けている専門家もいます。
しかし、上記の方法では時間が限られている上に相談者の詳細な状況が分からない前提での回答となることが多いです。また他の相談者とのバランスもあり、自社に対して特別に時間をとってもらい、一般論を超えた踏み込んだ助言までもらうことは困難でしょう。
自社で専門家と顧問契約を結べば、もちろんこれらの問題は解決しますが、コストがかかる、どんな専門家を選んでいいか分からないといった問題も起こります。
専門家派遣では無料または安価に個別的かつ具体的な相談ができることが特長です。
さらに、通常は単発でなく一定期間継続的な支援が得られることも優れた点として挙げられます。

これらの特長を活かすことで以下のような具体的なメリットが得られます。

  1. 客観的な立場から自社を見る視点が得られる
    利害関係やしがらみのない外部の人として関わってもらうことで、思わぬ発見や新鮮な気づきが得られます。これは専門性に関わらず、外部性自体に価値があるからです。
  2. 専門知識、スキル・経験による問題解決が期待できる
    個別のテーマを解決するために必要な専門性を有していることで、困難な課題に対する的確な対応と迅速な解決が期待できます。過去に同様の問題解決をした実績がある人ならばなお信頼ができるでしょう。
  3. 時間がかかる取組に対する継続的な深い関与が可能
    進捗具合や状況の変化に合わせた助言などで、中長期的な課題に対してもより現実に即した支援をしてもらえます。

一方、専門家派遣制度では以下のようなマイナス面も考えられます。

  1. 制度の制約が厳しく利用しにくい
    派遣制度には利用条件が決められており、回数や目的・方法・期間などが限定されている場合がほとんどです。
  2. 相性の良い専門家が派遣されてくるとは限らない
    多数の登録専門家の中から最善のマッチングを目指したとしても、自社の課題と専門家の得意分野が微妙にずれていることや、専門家の持つメソッドや問題に対するスタンスが合わないことも起こり得ます。また、人間的にどうも好きになれないといったようなこともあるかもしれません。
  3. 必要以上に専門家に頼ってしまい成果が乏しい
    専門家の支援や助言を取り入れて主体的に実行する余力がどの程度あるかは重要です。せっかく来てもらったのだから使わないと勿体ないとつい考えがちですが、制度の基本は自社での取り組みを支援するためのものです。専門家に丸投げして余分な負担をかけすぎることは本来の成果創出に至らない原因となることがあります。

専門家派遣を上手に使うポイント

1.コミュニケーションをとる

専門家に期待する成果につき、要望をはっきり伝えることが重要です。自社の状況や体制は隠さず提示して専門家側の示すプランと納得できるまで擦り合わせてください。
そして実現可能な課題に絞り優先順位をつけて取り組むことで成功率が上がるでしょう。
どうしても折り合いがつかない場合は一回で完了することも一概に悪いこととは言えません。双方不安や不満を抱えたまま進めることは良い結果に繋がらないからです。

2.直接面談に臨める時間を大切にする

専門家派遣では時間が限られていますので直接面談できる時間は貴重です。
次の面談をするまでの間に企業側で様々な作業が必要な場合もありますが、そのような宿題はなるべく確実に実行し、その結果を次回の面談の時に示せれば有効な助言を受けることができるでしょう。

3.派遣終了後に自立できるよう意識する

自社でプロジェクトを組むなど人的な体制を整えれば困難な課題や中長期的な課題に取り組むこともできます。できるだけ専門家の知見を吸収し考え方や取り組み方を身につけるようにすると、専門家派遣が終わった後の自主的な取り組みにも繋がり、自社の力がアップします。

まとめ

派遣を通じて企業と専門家が同じ課題に取り組むことで、双方に気づきや見えてくるものがあることが多いです。その結果、専門家との良い巡り合わせができることもあります。
信頼できる専門家と出会えた場合は派遣制度のルールをよく確かめた上で、専門家個人との契約に移行することも選択肢です。
せっかくの制度ですから企業と専門家が相互に尊重し合い有効な課題解決ができるよう心がけたいものです。

回答者

中小企業診断士 橋本 良一