ビジネスQ&A

伝統工芸品の海外向けの販路を開拓するための支援策を教えてください。

創業から103年続く、従業員10名の輪島塗の漆器工房を経営しています。海外では日本ブームが起きていると聞きます。石川県の伝統工芸を海外に展開したいのですが、販路開拓をどのように進めたら良いかわかりません。どのような支援策があるか教えてください。

回答

日本ブームにより、伝統工芸品も販売機会が増えていますが、単に従来の製品を展示会に並べただけでは販売は限定的でしょう。欧州では漆器の美しさは認識されているため、高所得者層をターゲットに、現地のライフスタイルや嗜好に合わせた製品が提供できれば成功の可能性は高まります。

【日本ブームの状況】

「和食」がユネスコの世界遺産に登録されて以降、ますます日本ブームが広がっています。特にフランスでは、2009年よりJapan Expoが開催され、2015年7月の開催では過去最高の24万人を超える来場者を記録しました。

高価格が販売のネックだった漆器ですが、円安による割安感もあり、販売機会は増加しています。

【海外販路開拓の方法と支援策】

海外販路開拓の方法としていくつか考えられます。

1.無料アドバイスでの相談
  1. 中小企業国際化支援アドバイス
    (独)中小企業基盤整備機構(中小機構)北陸が実施する、本アドバイスは、金沢市内で直接担当専門家に相談ができる支援制度です。相談は無料で、毎月2回開設されています。
2.海外の展示会への出展の検討

単に展示会に出展しただけでは、得たい成果につながらない可能性が高くなります。
 最大の成果を上げるためには、

  1. なぜ出展するか?
  2. どこに出展するか?
  3. 何を出展するか?
  4. 得たい成果は何か?

という出展構想を何度も自問自答し、答えを明確にしておきましょう。

たとえば、前記の「II.どこに出展するか?」については、「漆器の技術を活かして現地のデザインに合わせて別の用途に使用してくれるようなニーズのある地域」のように、漠然とした「コンセプト」だけでも構いません。具体的な地域については、後で決めれば良いからです。

上記の出展構想が明確になったら、具体的に出展する見本市・展示会を特定し、それに合わせて展示物やプレゼン内容を考えていきます。

  1. ジャパン・パビリオンへの出展支援(海外見本市・展示会出展支援)
    (独)日本貿易振興機構(JETRO)は、豊富な海外見本市事業の経験をもとに、日本企業のニーズに応え、有望と思われる見本市・展示会を選定し、ジャパン・パビリオンとして出展しています。まずは、日本貿易振興機構が参加する見本市・展示会への参加を検討するのが良いでしょう。出展手続き、出品物の輸送の代行などが受けられます。
    また、一部のサービスは無料で利用できます。
  2. 見本市・展示会データベース(J-messe)
    日本貿易振興機構により運営されるJ-messeでは、日本貿易振興機構が参加しないものも含めて、国内外の見本市・展示会が検索できます。
展示会を活用した海外販路開拓の枠組み 展示会を活用した海外販路開拓の枠組み
図1 「展示会を活用した海外販路開拓の枠組み」
3.展示会出展支援
  1. 中小機構による「海外展示会出展サポート」
    上述の日本貿易振興機構が主催・参加する海外見本市・展示会への出展の準備段階での商談資料作成や契約などのフォローまでの一貫した支援を無料で受けられます(翻訳費用については、費用の3分の1を依頼者が負担)。
    <問い合わせ先>
    (独)中小企業基盤整備機構 販路支援部(展示会・トレードショー担当)
    TEL:03-5470-1529
    E-mail:kokusai-tenji@smrj.go.jp
  2. 国内外販路開拓・展示会出展支援事業費補助金
    石川県内に主たる事業所を持つ中小企業が、首都圏や海外で開催される展示会等へ出展する場合に、その費用の一部を助成する補助金です。
    (公財)石川県産業創出支援機構(ISICO)が主催しており、補助金限度額は、国内30万円、海外80万円(補助金額が10万円以上の事業が対象)です。

【ホームページ(HP)の作成】

海外からの受注を受けるに当たり、HPがないと問い合わせも受け付けにくいばかりか、HPもないということで信用にも関わってきます。また、HPがあってもデザイン性などが良くない場合には、顧客の印象も悪くなります。

石川県内の中小企業は、下記のサービスが利用できます。

1.ネットビジネスに関する専門家派遣制度(ドクタークリニック)

石川県産業創出支援機構(ISICO)が、県内の中小企業に対して、民間の専門化等を派遣します。「お店ばたけホームページドクター」が派遣されます。費用は無料です。

問い合わせ先は、ISICO産業振興部 産業情報課(お店ばたけ事務局)まで。

回答者

中小企業診断士 小野田直人