知的財産

特許料等の減免制度、中小企業等外国出願支援事業

2020.1.13

経営資源の限られている中小製造業では、製品の付加価値を高めて他社ができないものづくりをすることが生き残り戦略の1つとなります。この生き残り戦略をうまく働かせるためには、特許を取得して「他社ができない」状態を長く維持することが重要です。経済のグローバル化が進み、中小企業といえども世界を相手にビジネスをしていかなければならなくなってきている昨今では、世界を相手にしていくためには、国内のみならず外国での知的財産権の確保も考える必要があります。しかし、特許を取得するには費用がかかります。この費用に対する支援についてご紹介します。

特許を取得するための費用(国内)

特許料等の減免制度を説明する前に、特許を取得するための費用が「いつ」、「どれくらい」かかるのかを確認しておきます。日本で特許を取得するための費用には、特許庁に対して支払う費用と、弁理士等の手続代理人に支払う費用があります。特許料等の軽減は、特許庁に対して支払う費用のみが対象となります。
特許を取得するためには、特許庁に対して最低3回書類を提出しなければならず、それぞれについて特許庁に対する費用がかかります。(1)特許出願、(2)出願審査請求、(3)特許料納付という手続きです。

(1)特許出願

特許を取得するためには、特許を取りたい発明の内容を書類にまとめて特許庁に申請をします。これを特許出願といいます。この特許出願の際に「出願料」という費用がかかります。出願料は1件当たり14,000円です。

(2)出願審査請求

提出した書類は特許庁で審査され、合格したものだけが特許を取得できます。開発方針の変更により特許を取る必要がなくなるなど、審査を受ける必要のない特許出願が全体の半数ほどあります。そこで、審査を希望する場合には出願審査請求という手続きを行うこととしています。この出願審査請求の際に「審査請求料」という費用がかかります。審査請求料は1件当たり138,000円+(請求項の数×4,000円)となります。

※1件の特許出願には、一定の範囲にある複数の発明を「請求項」として記載することができます。たとえば、「よく消える消しゴム」を発明した場合に、請求項の1つに「よく消える消しゴム」を記載し、別の請求項に「よく消える消しゴムを付けた鉛筆」を記載して、2つの発明について特許を取得することが考えられます。このように、1件の特許出願には複数の請求項が存在するのが一般的です。

(3)特許料納付

審査に合格すると、特許を取得することができます。ここでも、合格をすればそれだけで特許を取得できるものではなく、「特許料」を支払わなければなりません。特許料は年単位でかかるため、「年金」とも呼ばれ、その額は何年目の特許料かにより以下のようになります。

ア. 第1年~第3年まで 毎年2,100円に、1請求項につき200円を加えた額
イ. 第4年~第6年まで 毎年6,400円に、1請求項につき500円を加えた額
ウ. 第7年~第9年まで 毎年19,300円に、1請求項につき1,500円を加えた額
エ. 第10年~第25年まで 毎年55,400円に、1請求項につき4,300円を加えた額

年毎の特許料

減免措置の対象となる者と措置の内容

特許庁に対して支払う3種類の費用のうち、すべてが減免の対象になるわけではありません。減免の対象となるのは、審査請求料と特許料(第1年分~第10年分)です。出願料と第11年分以降の特許料は、減免の対象とはなりません。
なお、軽減される額は減免対象者により異なり、2分の1から4分の1です。下表のように中小企業でも企業の状況により軽減率が異なります。

中小ベンチャー企業(法人)は、設立後10年未満で資本金額又は出資総額が3億円以下の法人であり、大企業(資本金額又は出資総額が3億円以下の法人以外の法人)に支配されていないことが要件となります。若い企業は軽減率を大きくしています。

このほか、同じ2分の1の軽減率でも減免対象者としていくつかの中小企業のタイプがあります。中小企業(会社)は一般的な中小企業の要件を満たし、大企業に支配されていないものです。仮に大企業に支配されている場合でも、一定の研究開発要件を満たせば研究開発型中小企業として減免対象となります。また、法人税非課税であれば、業種によらず資本金額又は出資総額が3億円以下の法人が減免対象です。

外国で知的財産権を取得するための費用は高額

外国で知的財産権を取得するための費用は一概にいくらとはいえませんが、国内と比較して相当に高額となることは間違いありません。高額になる主な理由は、次の3つと考えられます。

(1)外国での知的財産権取得には国別の手続きが必要

知的財産権は国ごとに取得するものです。個々の国でかかる費用は日本とそれほど差がなくても、複数の国で手続きを行うと、それだけ費用が増えてしまいます。

(2)自分で直接手続きをすることが難しい

日本であれば自分で手続きを行うことも可能であり、この場合は特許庁の費用のみがかかります。しかし、外国となるとそれぞれの国で制度が異なるため、それを調べて自分で手続きを行うことは格段に難しくなります。
また、国によっては必ず現地の手続代理人(弁理士等)を介して手続きを行わなければならないこともあります。そのため、外国出願をする場合は、以下の流れで手続きを行うことが一般的となり、手続代理人の費用も増えてきます。

外国出願する場合の手続きの流れ

(3)翻訳が必要になる場合が多い

知的財産権を取得させるかどうかの審査は、原則として各国の特許庁が独自に行います。したがって、それぞれの国が指定する言語で手続きをしなければなりません。多くの場合、英語、中国語、韓国語の3つの言語への翻訳が必要になるでしょう。翻訳にかかる費用は書類の文字数しだいですが、数百万円かかるケースも珍しくありません。

このような理由から、外国出願をする場合、特許では百万円単位、意匠や商標でも数十万円の費用がかかります。中小企業では、多額の費用をかけて知的財産権を取得するのが難しいところも多いでしょう。
そこで、中小企業向けの外国出願に対する費用支援として「中小企業外国出願支援事業」をご紹介します。

中小企業等外国出願支援事業の支援の流れ

中小企業等外国出願支援事業による支援は、補助金(中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金)の形で行われます。以下でご紹介する流れは平成31年度のものですが、毎年度ほぼ同じ形で実施されています。詳細は以下のホームページをご参照ください。

中小企業外国出願支援事業による支援の流れを、下図で確認しておきます。

中小企業外国出願支援事業による支援の流れ

まず前提として、日本の特許庁に出願をしていることが原則となります。補助金を申請する時点で日本への出願を終えていなければなりません。その後、補助金の申請書類を提出し、審査を受けます。審査に合格すれば、外国出願の費用支援を受けることができます。応募受付期間が1ヵ月程度と短いことが多いため、ご注意ください。
補助金による補助を受けられることが決定した後に外国出願を行います。補助の決定のタイミングと外国出願の期限をしっかりと管理することが重要になります。出願に要した費用等を支払った後、実績報告(出願完了報告)をすると補助金額が確定し、補助金が交付されるという流れになります。

支援を受けられる対象者

平成29年2月27日に、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。この法律案の中に、特許料等の軽減に関する改正が含まれています。これによると改正法施行後は、すべての中小企業を対象として審査請求料、特許料(第1年分~第10年分)が半減されるとなっています。今後の法改正の動向にも注意しておきましょう。

  1. 中小企業者(個人事業者を含む)
  2. 中小企業者で構成されるグループ
  3. 商工会議所、商工会、NPO法人等、事業協同組合等(地域団体商標の外国出願)

なお、2.中小企業者で構成されるグループとは、「グループ構成員のうち、中小企業者が3分の2以上を占め、中小企業者の利益となる事業を営む者」をいいます。

支援を受けられる補助金の額と経費の種類

中小企業等外国出願支援事業で受けられる補助金は、次のとおりです。

中小企業外国出願支援事業で受けられる補助金

また、補助の対象となる経費は次のとおりです。冒頭に、外国出願が高額となる理由として挙げた費用がカバーされていることがわかります。

経費区分

内容

外国特許庁への納付手数料

a) 出願手数料
b) PCT国際出願に係る各指定国への移行時の手数料(日本国移行に係る費用は除く)
c) 商標のマドプロ出願の出願手数料
d) 意匠のハーグ出願の出願手数料
e) 外国特許庁等への出願料と同日に支払う費用 (審査請求料、優先権主張料、補正料、出願維持年金、米国IDS費用、PPH費用等)

代理人費用

a) 外国出願に係る国内代理人(弁理士)費用
b) 現地代理人費用
c) 銀行振込手数料・送金手数料および振込に要する費用
d) 出願国の制度上、出願に必要であることが認められる経費 (公証人証明申請費用、委任状作成費用等)

翻訳料

a) 翻訳に要する費用(「1WORDの単価×WORDの数」等の内訳を請求書等に明示してください。)

審査の方法

最後に、「中小企業知的財産活動支援事業費補助金」の選考方法を確認しておきます。この補助金を受けるには審査がありますが、主に次の3点が審査されることになります。

  • 先行技術調査等の結果から見て、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと
  • 助成を希望する出願に関し、外国で権利が成立した場合等に、「当該権利を活用した事業展開を計画している」または「商標出願に関し、外国における冒認出願対策の意思を有している」中小企業者等であること
  • 産業財産権に係る外国出願に必要な資金能力および資金計画を有していること

この3点を簡単にまとめると、「(1)権利を取得できる可能性があり、(2)権利を取得した場合にその権利を活用する計画があり、(3)手続きに必要な費用を支払うことができる」ことが求められることになります。これらについて提出された書面を審査し、1ヵ月半程度で結果が通知されます。

まとめ

  1. 特許料等の減免の対象となる料金は、審査請求料と第1年分~第10年分の特許料のみである。出願料は軽減されない
  2. 一般的な中小企業では、審査請求料と特許料(第1年分~第10年分)が原則の額の半分に軽減される
  3. 外国出願を行う場合、「中小企業等外国出願支援事業」を利用すると、2分の1の費用補助を受けることができる
  4. 中小企業等外国出願支援事業を利用するには、あらかじめ日本の特許庁に出願をしていなければならない
  5. 中小企業等外国出願支援事業は補助金の形で行われるため、補助金の申請をして審査に合格しなければならない
  6. 審査で見るポイントは、「権利を取得できる可能性があり、権利を取得した場合にその権利を活用する計画があり、手続きに必要な費用を支払うことができる」かどうかである