研究開発

冒認商標無効・取消係争支援事業

2020年1月内容改訂

自社の社名やロゴマーク、商品の名称は、自社と顧客をつなぐ大切な架け橋です。ところが近年、海外において自社と無関係の企業や個人が、自社の社名等を商標登録する事例が増えています。

冒認商標とは

自社の商品が社会に受け入れられて広まると、その商品の名称や会社自身の社名・ロゴマーク等に他社との識別や品質保証の機能が生まれます。このような機能を基に形成された「何らかの良いイメージ」をブランドといいます。ブランド自体は目に見えませんが、ブランドを代表する名前やマーク等を商標として登録することで、ブランドを保護することができます。

自社ブランドにかかわる商標について自社で商標登録をすれば問題はありません。ところが、最近、自社と無関係の第三者が勝手に商標登録をしてしまうケースが増えています。このような商標を「冒認商標」といいます。自社がその国でビジネスをする可能性を見越して、その際に金銭を要求できるよう、先回りをして商標登録をしている例が多く見られます。

冒認出願に対応するには

海外で現地企業等から企業ブランドや地域団体商標を冒認出願されると、その国でビジネスをする際に他社の商標登録にも対応しなければならなくなります。特に中国や台湾で冒認出願が多いことから、特許庁や日本貿易振興機構(ジェトロ)でも対応を始めています。
以下のウェブサイトでは、冒認商標に対する対応策がよくまとまっています。「冒認出願対策リーフレット」を確認するだけでも、対応の方向性を考える助けになるでしょう。

冒認商標無効・取消係争支援事業の概要

冒認商標への対応として、異議申立や取消審判請求、訴訟等の冒認商標の無効・取消係争をとることができますが、高額の費用が発生することは避けられません。このような場合にその費用の一部を補助する制度として、「冒認商標無効・取消係争支援事業」があります。以下でご紹介する流れは平成31年度のものですが、毎年度、ほぼ同じ形で実施されています。詳細は以下のホームページをご参照ください。

(1)冒認商標無効・取消係争支援事業の内容

冒認商標無効・取消係争支援事業は、「中小企業等海外侵害対策支援事業」の1つで、海外で現地企業から自社の所有する商標を冒認出願された中小企業に対し、冒認商標無効・取消係争に要する費用の一部について補助金を受けることができるものです。補助の対象となるのは、異議申立、無効・取消審判請求、訴訟等(拒絶査定不服審判費用、商標買取費用、損害賠償金、和解金を除く)に要する費用です。これらに要した費用のうち3分の2が、500万円を上限として補助されます。

(2)冒認商標無効・取消係争支援事業の対象と申請要件

冒認商標無効・取消係争支援事業の対象は、海外で現地企業から自社の所有する商標を冒認出願された中小企業および地域団体商標を冒認出願された組合、商工会、商工会議所およびNPO法人です。これらの者が以下の要件等を満たす場合に申請することができます。

  • 係争対象国で第三者がすでに出願または登録している商標と同一または類似の商標または地域団体商標を1つ以上日本で有していること
  • 支援終了後3年の間に判決、和解等の係争に係る進展があった場合は、ジェトロに対して報告義務を負えること

(3)冒認商標無効・取消係争支援事業の補助対象企業の選定

冒認商標無効・取消係争支援事業では、以下のすべての要件を満たす企業が補助対象として選定されます。

  • 取り消そうとする冒認商標が、日本国で申請者が有している商標権等と同一または類似であること
  • 冒認商標により、日本企業である補助対象企業に何らかの被害が生じている、または生じる可能性が高いこと
  • 冒認商標が無効・取消になった後、補助対象企業自身で当該国に出願または事業活動を行う意志が明確であり、係争活動の結果が有用に利用されると判断されること
  • 助成を受けられなかった場合の対応策を含め、冒認商標への対応策が組織として十分に検討されていること
  • ジェトロ以外の機関から、同一の冒認商標取消に要する費用につき同様の補助(海外知財訴訟保険の支払い対象となる案件を含む)を受けていないこと

冒認商標無効・取消係争支援事業の流れ

冒認商標無効・取消係争支援事業による支援は、補助金(冒認商標無効・取消係争支援事業間接補助金)の形で行われます。以下に全体の流れを示します。

(1)申請内容打ち合わせ→(2)申請書の提出→(3)審査→(4)結果を通知→(5)助成対象経費の支出→(6)実績報告書の提出→(7)確定支払額を通知→(8)補助金支払請求書の提出→(9)補助金の支払

なお、本事業で助成の対象となる経費は、採択後から補助対象期間の末日までの間に発生したものに限られます。

平成31年度の場合では、申請書の提出期限が10月31日(1次公募)、補助対象期間の末日が翌年1月15日であったことから、非常に短期間に発生したものだけが補助対象経費となります。異議申立、無効・取消審判請求、訴訟等は通常、決着までに長期間を要します。したがって、この事業で補助されるのは、異議申立や無効・取消審判請求、訴訟等を行う時点で必要な経費のみであることも多いでしょう。決着までにどれくらいの期間がかかり、総額の費用がどの程度になるのかを事前に確認しておくべきです。

可能であれば自社で商標登録をしておく

そもそも冒認出願をされないようにするためには、先に自社で商標登録をするのが一番です。もちろん、商標登録には費用がかかりますので、商標登録の費用と冒認出願がされる可能性を天秤にかけて、自社に利益のある選択をすべきでしょう。
冒認対策として商標登録出願をする場合、「中小企業等外国出願支援事業」を利用することもできます。助成対象経費の2分の1、1案件につき最大30万円が助成されます。中国1ヵ国であれば費用もそれほど高額にはなりませんので、重要な商標は登録を行うことも考えておくとよいでしょう。

まとめ

  1. 自社の社名やロゴマーク等が、海外において無関係の第三者に先に商標登録をされる事例(冒認商標)が増えている
  2. 冒認商標への対応として、異議申立や取消審判請求、訴訟等を行う場合に、冒認商標無効・取消係争支援事業を利用することができる
  3. 冒認商標無効・取消係争支援事業による支援では、冒認商標無効・取消係争支援事業間接補助金として、要した費用の3分の2(最大500万円)が補助される
  4. 可能であれば、海外でも自社で商標登録をしておく