市場調査データ

トランクルーム(2022年版)

2022年10月21日

「トランクルーム」の名称で広く知られるレンタル収納スペースは、近年、大きく成長したビジネスの一つ。年々、市場規模が拡大するなか、「リモート勤務に向けた自宅でのワークスペース確保」などコロナ禍による居住環境の変化にも後押しされ、日経新聞によれば2021年までの8年間に店舗数も倍増して1万2000店を超えたという。20代〜60代までの男女1000人に対するアンケートをもとに、現在の利用実態や今後の利用意向を探ってみた。

1.現在の利用状況

〈図a〉トランクルームの利用状況(n=1000)
〈図a〉トランクルームの利用状況(n=1000)

「現在の利用状況」〈図a〉を見ると、現在、過去を通じて「一度も利用したことがない」が931人(93.1%)と、回答者の大半を占めた。ただし、「利用したことがない」が96%を占めていた前回のアンケート調査結果(2019年6月に実施)と比較すると、若干ではあるものの利用したことのある人の割合が増えている。これまで利用してこなかった理由としては、記述式自由回答欄で多くの人が指摘していた「家にある収納で間に合っている」「預けるほどの物は持っていない」といった点が考えられるだろう。一方で今後については、同じく記述式自由回答欄において「状況が変わったら検討する」「これから必要になったら考える」など、将来の利用に含みを持たせた回答も散見された。

2.利用分野

〈図b〉トランクルームの利用分野(n=1000)
〈図b〉トランクルームの利用分野(n=1000)

トランクルームをどのような形で利用するかについて聞いた「利用分野」〈図b〉の回答として、「利用したことがないためわからない」を除いて最も多かったのは、「リフォームや引越しなどの際の一時的な仮置きスペースとして」の79人。続いて「自宅の収納に代わる半永久的な収納スペースとして」(59人)となった。このアンケートにおいては、トランクルームは、半永久的な収納場所としてよりも一時的な仮置きの方にニーズがあることがうかがえる結果となった。

3.コロナ禍の影響

〈図c〉コロナ禍がトランクルームの利用に与えた影響(n=1000)
〈図c〉コロナ禍がトランクルームの利用に与えた影響(n=1000)

トランクルームの利用に、コロナ禍が与えた影響について聞いた質問で最多となった回答は、「必要性を感じることも、影響もなかった」の772人(77.2%)。また、コロナ禍をきっかけとしたトランクルーム市場の伸長を伝える報道などとは逆のベクトルとなる「むしろ利用する機会が減った」という回答も120人(12%)と多かった。一方で、「初めて利用するきっかけになった」(12人)、「利用が増えた」(9人)も少数ながら存在し、記述式自由回答欄には、「在宅時間が長くなったことで、家に物が増えた」「外出できない反動でネットショッピングが増え、物が多くなり過ぎた」など、コロナ禍の影響について語ったコメントも寄せられた。利用が促進されたとする回答者(21人)に、「必要性は感じたが、結局利用に影響はなかった」(87人)という利用に向けて前向きな意識の変化があった層を加えると、1割以上がニーズの高まりを感じていたと受け取れそうだ。

4.トランクルームの利用にかける費用

〈図d〉トランクルームの利用にかける月額での費用(n=1000)
〈図d〉トランクルームの利用にかける月額での費用(n=1000)

トランクルームにかけるおおよその月額利用料を聞いた設問に対して、「利用がないため0円」を除いて最も多かったのは「3000円未満」の57人。次いで「3000円〜5000円未満」(25人)、「5000円〜1万円未満」(20人)の順となり、やはり価格帯が低いほどニーズが高いと予想できる。トランクルームは、常に手元に置いておくほどではないが、手放すことはできないような荷物の保管場所として長期的に使用するケースも多いため、なるべく価格を抑えたいというユーザーの本音が読み取れる結果となった。

5.今後の利用意向

〈図e〉今後の利用意向(n=1000)
〈図e〉今後の利用意向(n=1000)

今後、トランクルームを利用したいと思うかという質問に対して、「ぜひ利用したい」(27人)と「どちらかと言えば利用したい」(87人)という前向きな回答者の合計は114人(11.4%)。一方、「あまり利用したくない」(155人)と「全く利用したくない」(432人)というネガティブな意見の合計は587人(58.7%)となった。ただ、およそ3年前に行われた前回の調査では今後の利用に肯定的な人の割合がわずか5%であったことを考えると、トランクルームの市場が拡大しているとするメディアや業界の発表も間違いではなさそうだ。また、「どちらとも言えない」と回答した人も299人(29.9%)おり、記述式自由回答欄でも「必要があれば利用を検討する」という声が少なくなかった。事業を行う場合は、この全体の3割ほどを占める潜在利用層に、利用に積極的な1割強を足した4割強を主なターゲットとして、ビジネスを展開していくことになるだろう。

6.性別・年齢別の今後の利用意向

〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)
〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)

今後の利用意向について、性別と年齢のセグメント別に見ると、「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」という前向きな回答の割合が最も高かったのは20代女性。ただしその後には、40代男性、20代男性、30代男性、50代男性と男性が続き、性別で見た場合、60代を除く全年代で前向きな回答が1割を超えていた男性の方が、より利用意向が高いといえそうだ。年代別で男女ともに利用意向が高かったのが20代。記述式自由回答欄では、トランクルームを利用したい理由として、自宅の収納スペースの狭さを挙げる人が少なくなく、20代は、比較的コンパクトな単身者向けの集合賃貸住宅に住む人が多いことが、このような結果につながったと考えることもできそうだ。

7.まとめ(ビジネス領域としてのトランクルーム)

近年はメディアでも、トランクルーム市場の伸長を伝える報道が増えているが、今回のアンケート結果からは、そうした報道が示す盛り上がりと実際の一般消費者の意識との間にはまだまだ少なからず隔たりがあることがうかがえた。ただし今回の調査における「今後の利用意向」に関する質問で、前回わずか5%だった利用に肯定的な回答が、11.4%まで増えていたことを踏まえると、これからの利用増に向け、期待が持てる環境になったとはいえそうだ。業界への参入者も増える中で成功を収めるには、想定利用者のニーズを踏まえ、利便性、コストパフォーマンスなどで競合を上回る要素が必要となる。例えば本調査の「利用分野」に関する設問では、「リフォームや引越しなどの際の一時的な仮置きスペースとして」が多くなったが、これは「継続的に利用するもの」といったこれまでのトランクルームのイメージを覆すものといえる。こうした消費者ニーズを巧みに捉え、例えばスポット利用のユーザー、継続利用のユーザー双方に向けたサービスを打ち出したり、独自の料金システムを構築することなども、一つの有効な差別化ポイントになり得るだろう。

なお、トランクルームのトレンドやビジネスの特徴、開業のポイントなどに関しては、当サイトの業種別開業ガイド「トランクルーム(レンタル収納スペース)」編を参照。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査期間:

2022年6月24日〜6月27日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2022年10月

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