業種別開業ガイド

靴磨きサービス

  • 靴磨きサービスは、古くから駅前などの路上で行われていたサービスであるが、最近、路上営業の取り締まりが厳しくなったことや靴磨き職人の高齢化により激減している。路上で営業するためには所轄の警察署から発行される「道路使用許可」と、都道府県が発行する「道路占用許可」が必要だが、新規で許可を取ることは難しく、現在営業している高齢の職人たちが営業を止めると、路上での靴磨きサービスは自然消滅的に淘汰されると考えられる。その一方で、最近では地下街やオフィス街に店舗を構えて靴磨きサービスを提供する店が出てきている。
  • 靴の市場規模については、長期にわたって縮小傾向が続いている。特に紳士靴市場はビジネススタイルのカジュアル化に伴い、低価格化が進んでおり、靴磨きサービスの対象となる本格的な革靴の市場の縮小が著しい。また、路上での靴磨きサービスが全盛だった戦後間もない時代は、道路の舗装も未熟で靴がすぐに汚れてしまったが、現代は街が整備され靴がそれほど汚れなくなったため靴磨きを頻繁にする必要もなくなっている。このような時代背景も靴磨きのニーズ減少の理由として挙げられる。しかし、一方で、不況や消費行動の変化により、良い靴を修理しながらでも長く使うという行動も定着してきており、靴磨きのニーズは根強く存在していると考えられる。
  • 店舗型の靴磨きサービスは、まだ爆発的に普及はしていないが、料金が明瞭で、人目にさらされずサービスが受けられるという、従来の路上での靴磨きサービスのイメージを払拭する新業態として、今後の展開が期待されている。

1.起業にあたって必要な手続き

開業にあたって必要な資格はなく、原則的に参入は自由である。一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等が必要となる。法人であれば必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きを行う。

靴磨きの技術については、独自に習得して開業する人が多いが、靴磨き店を展開する企業が靴磨き教室などを開いている例もある。

2.起業にあたっての留意点・準備

1)経営形態

起業にあたっては、独自に技術を習得して設備や資材を揃えて起業するパターンと、すでに店舗展開している企業のフランチャイズに加盟したり、のれん分けの形態で起業するパターンが考えられる。店舗型の靴磨きサービスは比較的新しい形態であるため、多店舗展開している企業はそれほど多くないが、各社は店舗展開に意欲的である。多店舗展開を狙うのであれば、起業当初から多店舗展開を考慮した店構え、サービスを検討しておくことが重要である。

2)立地

利用顧客の第一のターゲットは、革靴を履くビジネスマンかキャリアウーマンである。そのため、出店立地は、駅構内の店舗や地下街、オフィスの店舗街が最適である。店舗の広さは5坪ほどでも営業可能だが、従来型の靴磨きとは違うイメージを出すため個別ブースを置いた10坪以上の店舗も多い。

3)サービス内容

現在出店している店舗のサービス内容は、汚れ落とし、ワックスがけ、艶出し、劣化防止用ケア、消毒脱臭などが主であり、所要時間は5分~30分、料金は500円~3,000円程度が一般的である。

どの店舗も、その場で磨くサービスと靴を預かって磨くサービスを実施し、時間のない顧客、靴を磨かれているのを見られたくない顧客など、様々なニーズに応えている。また、靴の丸洗い、修理までを行っている店舗もある。

従来の靴磨き店とは異なる特別感を演出するため、職人がネクタイやお洒落なギャルソン風エプロンなどを着用している店舗も多い。短時間ではあるが個別ブースで顧客と向き合って対話しながらサービスを行うので、職人にも接客の要素が求められるようになってきていると言える。

営業面に関しては、イベント等での露店営業などで知名度を上げる方法や、来客が見込み難い土日の売上確保の方法を工夫する必要があるだろう。

3.必要資金例

駅近くの5坪の路面店舗で開業する際の必要資金例

必要資金例

4.ビジネスプラン策定例(モデル収支例)

1)経営形態

2)損益計算のシミュレーション

  • 初期投資一括計上分は、開業費の金額
  • 減価償却費は、設備工事費・什器備品費の額を5年で償却したもの
  • 労務費は職人、人件費は経営者(管理者)の報酬
  • 必要資金、売上計画、シミュレーションの数値は、状況によって異なります。
    また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

最終内容確認2013年5月

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