中小企業の海外展開入門
「シブクリエイツ」 巨大ビルの内装工事でASEANに
東京ミッドタウン、新丸ビル、六本木ヒルズ。誰もが知っているこれらの巨大ビルでは、壁などの内装に木目が使われており、来訪者の目を引いている。この木目の内装工事を手掛けているのがシブクリエイツだ。単なる内装工事だけでなく、自社工場を持ち、木目パネル「SIVパネル」の製造から行っていることが大きな特徴だ。自社でパネルを製造できることから、様々な受注に対してスピーディーに対応できることが評価されている。
キャンバスの枠を超えた創造力
シブクリエイツの社長である渋澤聡氏は元は画家であった。海外滞在期間も長かったが、心機一転1997年にシブクリエイツを設立した。設立するまでの4年間ほどは知人の会社で内装建材の営業をしていた。その経験から1人で絵を描く事のほかに、大勢で力を合わせてモノを作る建築の楽しさを感じるようになり、シブクリエイツを創業したという。
創業当初は美大生をアルバイトに雇い、天井画や壁画を描いていた。また、渋澤社長自ら積極的に内装建材の営業を行い、取引先を広げていった。SIVパネルは、緻密な設計図を基に自社工場でミリ単位の加工製造がなされる内装パネルである。そのため、工事現場にパネルを持って行っても改めての大きな加工作業を必要とせず、建築現場で大量に出るはずの廃材も抑えることができる。また、作業の効率化から工事期間の大幅短縮も実現できる。さらに、パネルを張り替えることによりビルや商業施設を季節ごとに演出することも可能になった。オーダーできるデザインは約2,500種類もあるという。
ビルの内装工事には高い技術力が必要である。巨大な空間を手掛けるシブクリエイツにとって職人の技術力は何よりも大切なものだ。そこでシブクリエイツでは、高い技術力と品質保持のために、社内にマイスター制度(職人技術を収めた者への資格付与制度)を導入している。こうした取組みが高い技術力を持つ職人を育て、依頼主の高い満足度に繋がっている。
海外での人材育成を開始し、現地法人を設立
社会問題の1つとして、少子高齢化の時代背景とともに若者の職人離れがある。建設現場からも若者が減っている。このままでは技能継承はもとより、若者の人手不足から建設業界が苦境に陥ることは目に見えていた。この問題を懸念した渋澤社長は、海外に職人を育てる学校を作り、2-3年間教育した後に日本で働いてもらおうという構想を思い描いた。
どの国でそれをやろうかと調査会社にマーケット調査を依頼したところ、ベトナムが適しているとの報告を受けた。さっそく渋澤社長自らベトナムのすべてを建築大学を視察した。その結果、ホーチミン市のホンバン大学と提携の話があり、シブクリエイツ学科を開設することができるに至った。シブクリエイツ学科では、シブクリエイツの技術を学んだ学生が3年後には卒業することになる。しかし、全員を受け入れるほどの採用枠がシブクリエイツにはなかったため、ベトナムに現地法人を設立し、そこで雇用することを考えた。これがシブクリエイツの海外展開の第一歩となった。
海外マーケットの開拓者
シブクリエイツのベトナム支社(SIVCREATES VN Co., Ltd)は、現地技術者を採用し、設計から施工までのすべてを自社で行える建築会社としてスタートした。15名ほどの規模だが、日本人の1人の社員以外は全員がベトナム人である。
ベトナム支社の特徴は、完全に現地に向けて会社を作ったところにある。一般に日系企業が海外展開する際には、同じく海外展開した日系企業から受注を取ることでビジネスを行うパターンが多い。建設会社も同様で、ベトナムで展開しているものの仕事は日系企業から取ってくるというやり方をしている企業が多いという。しかし、シブクリエイツはそのやり方を採らなかった。結果として同社の品質の高さの好評さもあり、シブクリエイツは「現地の仕事を積極的に取りに行く日本の建設会社」というポジションを獲得している。
ベトナムでは同社の木目パネルの営業も行っている。メイドインジャパン製品への信頼は高く、高価格にも関わらず好評だと渋澤社長は語る。内装に使うパネルは日本では広く普及しているが、ベトナムではまだこれからだ。まずは内装パネルの認知度向上の段階から始めて、積極的にマーケットを作っていく方針だ。
企業データ
- 企業名
- 有限会社シブクリエイツ
- Webサイト
- 代表者
- 代表取締役 渋澤 聡
- 所在地
- 東京都杉並区下井草5-11-20
- 事業内容
- 建設業(内装仕上工事)