中小企業の海外展開入門

「コスモ計器」エアリークテスター技術サービスで海外展開

タイ法人でリークテスターを積んだ自動装置を確認する

コスモ計器のエアリークテスターは自動車部品の漏れ検査に使われる。日本の自動車産業の成長と共に歩み、1980年代の日米自動車摩擦の時代に海外展開を始めた。進出動機は顧客に納めたリークテスターが自動車メーカーの海外進出に伴って海外工場で運用されるようになり、メンテナンスサービスを海外でも求められるようになったためだ。現在は海外売り上げが全体の55%と、過半数を占めるまでに育っている。

82年に初めての海外代理店を台湾に設置し、83年には韓国支社、84年には米国支社を設置した。古瀬智之社長は「テスターの生産、営業は日本国内でも、製品を使われる場所が海外工場になり、サービス体制の構築が求められた」と振り返る。海外展開を始めた当初は日本人がマネージャーとして赴任し、組織運営や技術指導を担った。

韓国支社の失敗から学ぶ

外国人社員に技術を教授

だが進出当初はうまくマネジメントできない拠点もあった。「毎年、売り上げが伸びる成長期だったから抱えていられた」と振り返る。韓国支社の閉鎖が、海外展開の方針を変えるきっかけになった。当時、支社の経営状態を把握できない状態に陥り、閉鎖を決めた。

「販売よりも顧客へのサービスを最優先にする経営方針を理解してもらえなかった」という。そこで支社の中で一番仕事を楽しんでいた若手に会社を起業させ、事業を引き継がせた。すると売り上げが4倍に伸びた。古瀬社長は「顧客と一緒になって考えられる現地の人に、経営も任せることが一番と学んだ」と振り返る。

古瀬社長は現在も「進出判断は営業よりもサービス。テスターがある程度その国で稼働し、サービスで食べていけるようになってから進出する」と方針を貫く。進出形態に代理店や現地法人などのこだわりはない。パートナーの条件はコスモ計器の技術者と一緒にユーザーの工場にいけることだ。トラブルが起こった際に、コスモ計器と一緒に顧客の現場に入り、テスターの周辺装置を含めて改善していける企業を根気強く探している。

さまざまな業種と連携

サービスによる収入だけでも人件費の低い新興国ではパートナー企業は会社を経営できる。だが、先進国ではテスターが売れないと利益確保が難しい。そこで、ドイツでは自動装置メーカーのP+K社と組んだ。P+K社産業用機械を製作しており、サービスの技術レベルは十分。P+K社が自動装置を作り、コスモ計器のテスターを組み込む形で利益を分け合える。

ブラジルではリークテスターメーカーのTEXと組んだ。一見すると競合相手だ。TEXは開発力が高いが周辺技術が薄くなっていた。そこでコスモ計器がバルブなどのテスター周辺の空気回路などを支援することでウィン-ウィンの関係を築けた。

一方で、サービス重視の戦略はテスターの技術革新によってサービスが陳腐化するリスクも抱える。ところが古瀬社長は「我々のやり方でリークテスターのすべての市場をとれるわけではない」と割り切る。フランスの競合メーカーは安価なテスターを薄いサービス体制で提供している。「リークテストを自分でなんとかするユーザーにとっては安価なテスターで十分だ。どちらのビジネスモデルの方が優れているということはない。しのぎを削る顧客だけでなく、すみ分けになってしまっている顧客も存在する」と明かす。

人を育てるには時間がかかることもリスクの1つだ。だが、古瀬社長は「人材は蓄積する。初めの1人は大変でも、1人目を育てれば、1人が2人。2人が4人と増えていく。時間も労力もかけてきたため、今では簡単にはまねできない競争力になった」という。今後も愚直にサービスを磨いていく。

企業データ

企業名
株式会社コスモ計器
Webサイト
代表者
古瀬 智之
所在地
東京都八王子市石川町2974-23
事業内容
製造(工業用計測器と工業用プラスチック製品の製造販売、計器の校正業務)