闘いつづける経営者たち

「柳内光子」山一興産株式会社(第3回)

03.会社を育んだ地域に感謝

即断即決、直感で決める

2004年に浦安商工会議所の会頭に就任し、現在は唯一の女性会頭を務める柳内光子社長。「浦安市に生コンの主力工場があり、市内企業への納入も多いため、地域に貢献したいという思いで引き受けた」と振り返る。就任を機に、古くなっていた会館の建て替えも決めた。

ちょうど増築計画中だった隣接の消防本部と相談し、立地のレイアウトも最適化した。会館の建設は寄付金によるため無借金だ。「“即決即断”が私の取り柄で、物事は直感で決める。組織内の風通しを良くし、アイデアが活発化するように意識改革を重ねた。目標を明確にすることで、今年度も会員が約50社増える見込みだ」と胸を張る。

産学官で地域ブランドを開発

就任以来、力を入れているのは文化活動だ。「浦安市は経済産業で知られていても、文化・スポーツ活動が不足していた。漁村の歴史が残る元町と埋め立て地による新興街では、異なる特色を持っている。こうした歴史を積極的に発信する施策を打ってきた」と力を込める。

2009年に産学官連携による地域ブランド開発プロジェクト「浦安の絆」を立ち上げ、お酒やチョコレートを開発。最近は東京湾産の塩「龍宮のおくりもの」を新発売した。市内の食べ歩きルートを紹介するイベント「浦安バル街」も2012年から開催している。115店舗が参加して無料の巡回バスを走らせ、街の魅力を知ってもらう企画だ。

商工会議所でありながら、産業活性化にとどまらず地域振興まで包括的に担っている。柳内社長は「浦安観光コンベンション協会の会長も務めており、一体的に進めている。観光地として盛り上げることで経済効果も上がる。同協会では数年前から、ディズニーランドを訪れる観光客の流れを山本周五郎の小説『青べか物語』の舞台になった元町地域へも誘導する教育旅行プログラムを始め、手応えを感じている」と語る。

このように柳内会頭のリーダーシップでさまざまな試みを進めている。「すべての活動を支えているのは、浦安が好きだという思いだ。私が前に出ることで役に立つなら労は惜しまない。数年前から浦安市が企画する婚活パーティーの運営も会議所で担い、市民交流を手助けしている。また会頭に就任した2004年に倫理法人会を立ち上げ、組織を拡大してきた。モーニングセミナーは毎回約130人が参加し、国内トップの規模だ。魅力的なゲストを呼ぶなどして常に工夫している」と柳内社長。

浦安商工会議所は、2009年に産学官連携による地域ブランド開発プロジェクト「浦安の絆」を立ち上げ、酒やチョコレートなどを開発

震災を乗り越え映画を完成

さらに、浦安市を舞台にした映画「カルテット」(2011年公開)では、エグゼクティブ・プロデューサーを務めた。「もともと市政30周年の記念事業として市が後援していたが、東日本大震災の発生で市域の86%が液状化被害を受け、製作を中断してしまった。しかしそんな時だからこそ映画を完成させるべきだと考え、私費を投じて支援に乗り出した」と打ち明ける。観光協会や地元企業も資金を寄付した。液状化した市内でロケ撮影を敢行し、700人以上の市民がエキストラとして参加した。鶴田真由さん、細川茂樹さん、剛力彩芽さんらが主演を務め、音楽を通した家族再生物語として完成。結果的に震災復興の象徴として、地域全体を盛り上げることにつながった。

「経営者であれば、会社を育ててくれた地域への感謝は不可欠だ。企業の歴史を1つの物語として紡ぎたいという私の思いを、むしろ浦安市が生かしてくれている。これまで経済界で培ったネットワークを生かし、地域に還元したい」。こうした思いが、市政の発展に取り組むエネルギーの源となっている。

プロフィール

柳内 光子 (やない みつこ)

1939年東京都生まれ。1959年より生コンクリートの製造を始め、1963年に内山コンクリート工業(現内山アドバンス)、1969年に生コン・建設資材総合商社の山一興産設立を設立。地域密着型の製版一体サービスを確立した。1998年に社会福祉法人豊生会(現江戸川豊生会)を設立して福祉事業に参入し、現在は医療法人社団健勝会、学校法人草苑学園も運営。2004年浦安商工会議所会頭に就任。2007年藍綬褒章を受章。2012年渋沢栄一賞を受賞。

企業データ

企業名
山一興産株式会社
Webサイト
資本金
5,000万円
所在地
千葉県浦安市北栄4-20-10
事業内容
建設資材販売(生コンクリート、セメント、骨材 他)
売上高
505億円(2013年度)

掲載日:2014年4月14日