中小企業・小規模事業者によるカーボンニュートラルの取り組み事例
“危機感”から着手したカーボンニュートラル。 永く続けられる方法を選んで積み重ねることを大切に:コンドウ印刷株式会社(新潟県長岡市)
2026年 2月 6日
企業データ
- 企業名
- コンドウ印刷株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1982年4月(創業は1977年10月)
- 従業員数
- 22名
- 所在地
- 新潟県長岡市南陽2丁目951番地12
- 業種
- 印刷業
食品、化粧品をはじめとした幅広い業種のラベルシールの製造を手掛ける同社。
大手取引先からの働きかけがきっかけで、2007年に環境活動を開始。これまで省エネを中心にできることを着実に積み重ねてきた。中小機構の支援を受け、CO2排出量の算定やCO2削減ロードマップを策定。現在、中小企業版SBT取得に向けて準備を進めている。
代表取締役会長 近藤清規氏、代表取締役社長 近藤保子氏にお話を伺った。
[取り組みのきっかけ]
早く取り組むべきと感じた“危機感”から

新潟・長岡の地で約半世紀にわたりラベルシール専門の印刷業者として発展を遂げてきた同社。過去に業界コンテストで入賞するなど、機能性とデザイン性を兼ね備えた確かな技術力は大手取引先から厚い信頼を得ている。企業が持続的に成長するためには、社員が働きやすい環境づくりと地域貢献の姿勢が大切だと、近藤保子社長は語る。
「社員が健康的にいきいきと仕事に打ち込めるよう、例えば残業時間削減や有給休暇取得推進といった働き方改革、定期的なストレスチェックや社内ウォーキングイベントなどに取り組んできました。これらの取り組みが評価され、2020年から6年連続で『健康経営優良法人』(※1)に認定いただいています。また研修制度を拡充し、社員のキャリア支援も積極的に行っています。今後も社員が安心して働ける環境を守っていきたいと思います。
地域との関わりでは、主に地元の学生向けにインターンシップや職場体験の受け入れを行っているほか、地元の自治体などが開催するセミナーに登壇しています」(近藤保子氏)
同社の環境活動の始まりは、今から約19年前の2007年まで遡る。

「取引先の大手企業の主導で、『①廃棄物の減量化②省エネの推進③汚染物質の排出抑制』に取り組みました。取引先の関与が終了した際に、3つの活動を継続すべきか社内で検討した結果、続けることになりました。全館照明のLED化をはじめ、太陽光発電設備の導入、設備・機器ごとのエネルギー使用状況に合った電力契約の締結などに取り組んできました」(近藤清規氏)
省エネを中心に環境活動に地道に取り組んできた同社。
カーボンニュートラル(以下CN)に取り組むきっかけは“危機感”からだという。
「CNの存在を知ったとき、働き方改革や地域貢献と同様、経営課題として取り組む必要があるテーマだと思いました。印刷・ラベル業界はエネルギー依存度が高いことから、近い将来、取引先の大手企業からCNへの取り組み要請が来ることは予測できました。CNは取り組み始めてから成果が出るまでに時間がかかるため、少しでも早く動かなければと“危機感”を感じ、まずは情報収集から始めました」(近藤保子氏)
国や自治体が主催するCNセミナーに積極的に参加。転機となったのは2024年、長岡市主催の省エネ・再エネ産業振興プラットフォーム(※2)の総会に参加した際、初めて耳にした「SBT」(※3)に興味が湧いたことだ。
「自分でもSBTについて調べてみて、ぜひチャレンジしたいと思いました。時を同じくして、中小機構がCO2排出量の算定やCO2削減ロードマップ策定支援を行っていること(※4)を知り、CNの第一歩として支援を受けたいと思い申し込みをしました」(近藤保子氏)
(※1)健康経営優良法人に関する説明は以下URLを参照。
(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
(※2)以下URLを参照。
(長岡市)
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/sangyou/cate18/platform.html
(※3)SBTとは、Science Based Targetsの略称。科学的根拠に基づいて設定する温室効果ガス(GHG)排出削減目標のこと。企業等のCNの目標設定・取組の認定(SBT認定)を指すこともある。
(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/decarbonization_05.html
(※4)本支援は、「事業再構築相談・助言」の専門家派遣を活用した支援です。CO2排出量の算定等について専門家がアドバイスを行います。(無料・最大3回)
(中小機構)
https://www.smrj.go.jp/sme/sdgs/favgos000001to2v.html
[具体的な取り組み]
中小機構のアドバイザーの支援を通じて、社員がCNを“自分ごと化”
永く続けられる方法を選んで積み重ねることを重視

申し込み後、北林博人アドバイザー(以下、北林AD)(※5)による全3回の支援を受けた同社。北林ADのアドバイスのもと、Scope1、2の算定のほか、2040年までのCO2削減ロードマップを策定するに至った。近藤保子社長曰く、大きな成果は、社員がCNに取り組む意義を理解し、CNを“自分ごと化”できたことだったと語る。
「1回目の支援の際、世界のCNを取り巻く状況に始まり、当社のリスク管理の観点からBCPとCNのつながりについて丁寧にお話いただきました。この話を聴いた社員は、CNが自社事業にも影響があることを知り、CNが身近に感じられたといいます。CO2排出量の計算など、いきなり専門的な話から入るのではなく、なぜCNに取り組む必要があるのか、社員に寄り添った分かりやすい説明を頂けて大変良かったです」(近藤保子氏)
また、経営資源に限りのある中小企業がCNに取り組むには、無理なく継続できて経営に効くことを意識することが大切だと、近藤清規会長は言う。
「現場では、知恵と行動を磨くことを意識しています。例えば、2024年10月には本社の屋根に遮蔽材を設置しました。内気温を下げることで空調効率が上がり、結果的に使用電力の減少に繋がりました。他にも、工場長を中心に、印刷機械の稼働時間の調整や小型印刷機の有効活用にも取り組んでいます。これらの取り組みは大きな設備投資は必要ありません。
『環境負荷を減らし、コスト削減できればその分の利益が増える』とする考え方を社員と共有し、“永く続けられる方法を選んで積み重ねる”ことを大切にしています」(近藤清規氏)
「直近は、電気の基本料金の削減を目的にデマンドコントロール(※6)に取り組みました。
今は、調達する電力の排出係数を下げるために、非化石証書の購入や再生エネルギー比率の高い電力プランへの切り替えを検討しています」(近藤保子氏)
(※5)北林博人アドバイザーの経歴は以下を参照。
https://www.smrj.go.jp/regional_hq/kanto/sme/adviser/ool3bn000000hdjb.html
(※6)「デマンドコントロール装置を導入して、最大使用電力をコントロールし、契約電力をできるだけ下げる」こと。
(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_196.pdf
[感じたメリット・課題]
大きな効果が得られた電気料金の削減
金融機関からの評価や社員のモチベーションもアップ
大きな効果が見られたのは電気料金の削減だ。
「デマンドコントロールや自社内全ての照明のLED化、太陽光発電による電気料金の削減額は年間で約330万円になりました。遮熱材設置による空調の効率化や、印刷機械の稼働効率化による電気料金の削減効果も出始めています」(近藤保子氏)
金融機関からも取り組みを評価されている。
「今までの取り組みを評価頂き、金融機関から第6回新潟SDGsアワード(※7)に推薦されました。このように目に見える形で評価を頂けると、ますます励みになります」(近藤保子氏)
セミナーへの登壇依頼も徐々に増え、社員のモチベーションも上がっているという。
「長岡市の省エネ・再エネ産業振興プラットフォーム総会で登壇する機会を頂くなど、当社の取り組みを対外的に発信する場面も徐々に増えてきました。また、メディアに出ることで、社員のモチベーションはアップしていると感じます。通常業務のなかで省エネにつながる提案をしてくれますし、SNSでも積極的に取り組みを発信してくれています」(近藤清規氏)
また、苦労した点も語っていただいた。
「当初は、専門用語の理解に苦労しました。先行事例も少なく、取り組んだ成果がはっきりとは分からないなかで進めていくのは不安がありましたが、北林ADに丁寧にご説明いただいたことが大きかったです。中小機構の支援は、専門性と分かりやすさのバランスがとても良かったと思います」(近藤保子氏)
「社員数も限られていますので、通常業務に加えてCNに取り組むことは正直大変です。
社員の負担にならないよう、体制や進め方は工夫を重ねていきたいと思います」(近藤保子氏)
(※7)地域創生プラットフォーム SDGsにいがた
https://sdgs-niigata.net/
[今後の展望]
中小企業版SBT認証取得に向けた準備を
最後に、近藤清規会長と近藤保子社長に今後の目標について一言いただいた。
「印刷・ラベル業界では、CNの機運が高まっているとはいえない状況です。当社の取り組みがロールモデルまたパーツモデルとして、少しでも参考になればうれしいです。
目下の目標は中小企業版SBTの取得です。もちろん取得した事実も大切ですが、申請に向けた準備の過程で『何をすべきか』を明確にすること、また取り組みの方向性が間違っていないと認識できることにも意味があります。通常業務と並行しての準備は大変ですが、必ず最後までやり遂げたいと思います」(近藤保子氏)
「従前から機械ごとのエネルギー使用量の把握に努めていますが、その精度を高めていきたいです。エネルギー使用量の高い設備の稼働時間を減らすために、適切に業務工程を見直すことができ、生産性の向上にもつながると思っています。これからも社員とともに、できることからコツコツと取り組んでいきたいです」(近藤清規氏)