中小企業とSDGs

第27回:「ジェンダー平等」「働きがい」のロールモデルから女性たちの応援者に「ブリリアントアソシエイツ株式会社」

地元産ビーツを使った「ピンク華麗(カレー)」などピンクの商品群を取りそろえ、鳥取発のブランドイメージを広げている「ブリリアントアソシエイツ」(鳥取市)は、CO₂削減から始まったSDGsへの取り組みも本格化させている。とくに力を入れている「ジェンダー平等」「働きがい」の分野では、同社代表取締役の福嶋登美子氏がロールモデルをつとめることで女性活躍の推進に貢献してきた。現在、中小企業応援士もつとめる福嶋氏は、後進の女性たちを応援する立場となり、「チャンスがあれば(起業などに)挑戦してほしい」と呼び掛けている。

2022年 6月20日

女性の働きがいを大切にするブリリアントアソシエイツ株式会社。左から2人目が代表取締役の福嶋登美子氏
女性の働きがいを大切にするブリリアントアソシエイツ株式会社。左から2人目が代表取締役の福嶋登美子氏

ピンクの商品群で鳥取発のブランドイメージ広める

ピンクの商品群を販売する鳥取大丸の「HANAKIFUJIN」
ピンクの商品群を販売する鳥取大丸の「HANAKIFUJIN」

同社は行政の取り組みに呼応する形でさまざまなプロジェクトを進めてきた。「ゲゲゲの鬼太郎」の作者、水木しげる氏や「名探偵コナン」の作者、青山剛昌氏の出身地である鳥取県が「マンガ王国」として地域の活性化を図った際には、「華貴婦人(はなきふじん)」4姉妹という、ロココ調の華やかないでたちの独自キャラクターを設定した。また、1世帯あたりのカレーの消費量・購入金額が多いことから、カレーで盛り上げようと県が呼びかけると、同社は、鮮やかな赤が特徴のビーツの色素を使った「ピンク華麗(カレー)」を2014年に発売。その後、わさびやマヨネーズ、酒、化粧品などピンクの商品群を次々と発売した。

知らず知らずのうちにSDGsに取り組み

施設内に設置されている太陽光発電パネル(上)とEV充電器
施設内に設置されている太陽光発電パネル(上)とEV充電器

このように行政との連携を重視してきた同社は、行政からの指摘や助言でSDGsに取り組むこととなった。最初のきっかけは同社が展開していた「仁風閣(じんぷうかく)貴婦人プロジェクト」だった。これは、鳥取市内の白亜の洋館で、国の重要文化財である仁風閣をモチーフにして鳥取発の地域ブランドを創出しようというプロジェクトで、その一環として、市内観光の回遊性を高めるため、2012年に三輪自転車タクシーを導入し、運行を開始した。当初はフランスから輸入した自転車を活用していたが、翌年に電動アシスト付き三輪自転車「プリンセスキャリッジ」を独自開発した。

これを目にした県職員からの勧めで、2013年12月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2013」に「プリンセスキャリッジ」を出展。すると、会場を訪れて同社のさまざまな取り組みを知った金融関係のコンサルタントから「CO₂削減につながる取り組みを行っている。環境省のカーボン・オフセットの認証を受けてみたら」とのアドバイスを受けた。それに従って事業に応募したところ、温室効果ガス吸収量増加につながる広大な森林を管理する鳥取県日南町からオフセット・クレジット(J-VER、現在は「J-クレジット」に移行)を購入することで2014年に環境省から認証を受けるとともに、県からは「J-VERとっとりの森を守る優良企業」と認定された。また、ほぼ同時期に、県の事業として太陽光発電パネルを同社の施設内に設置。さらに、経済産業省から次世代自動車充電インフラ整備促進事業の認定を受け、EV(電気自動車)普通充電器2基も設置した。こうした一連の流れの中で、「SDGsのゴールであるクリーンエネルギーや環境問題への意識が高まっていった」と福嶋氏は話す。あれよあれよという間に事が進み、知らず知らずのうちにSDGsに取り組むこととなった格好だ。

ジェンダーレスの化粧品で目標を具現化

「ジェンダーレス」をキーワードにした「ブリリアントオランジェリー」は平井知事(右)にプレゼント
「ジェンダーレス」をキーワードにした「ブリリアントオランジェリー」は平井知事(右)にプレゼント

こうしてSDGsへの取り組みをスタートさせた同社が現在、とくに力を入れているゴールが「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」の2つ。女性が代表をつとめ、従業員の8割を女性が占める同社には、もっともふさわしい目標といえる。

このうちジェンダー平等の実現については商品でも具現化している。昨年12月に「ジェンダーレス」をキーワードにしたスキンケア化粧品「ブリリアントオランジェリー」を発売。女性だけでなく、皮脂が多く水分が少ない男性の肌も意識して開発されたものだ。「昨今のコロナ禍の影響でリモート会議が増えたことで、男性もパソコンの画面上で自分の顔を見る機会が多くなり、見た目への意識が高まってきている。また夫婦など男女一緒に同じ化粧品を使うことで、パートナーとのコミュニケーションも増える」と福嶋氏。新商品発表の際には、鳥取県庁を訪れ、平井伸治知事に「ぜひ使ってください」とプレゼントした。今年夏には第2弾としてファンデーションを発売する予定だ。

転機となったスウェーデン視察

働きがいと経済成長については、ジェンダー平等にも関わるが、同社では女性に責任ある仕事を任せている。これは雇用形態に関係ないもので、パートであっても能力があればマネージャーに起用している。「女性にとって働きがいのある仕事を作り続けることが経済成長につながり、そして、それによって力をつけた女性が増えることで、さらなる経済成長を生みだす」という考えだ。

話は20年前にさかのぼるが、こうした女性の活躍に対する福嶋氏の意識は、2002年に県の事業として視察に訪れたスウェーデンでの体験を機に大きく変わったという。同社を創業する前、夫の仕事を手伝っていた福嶋氏は、県から派遣される形で、女性の社会進出が進んでいるスウェーデンを訪問。国会議員や閣僚の半分が女性で占めるなど、女性が男性と同じ立場で堂々と働く様子を目の当たりにした。「鳥取県の女性の就業率は全国的にみても相当高いのだが、パートなど補助的な仕事が多く、女性が当たり前のように活躍しているスウェーデンは全く異なっていた」と振り返る。

これが一つの契機となり、その2年後に起業。ちょうどその頃、女性の意見を行政によりいっそう反映させようと、国・地方とも諮問機関や関係団体などのメンバーに女性を起用する動きが活発化していた。福嶋氏も県産業振興機構の評議員に選任されたほか、鳥取ロータリークラブで初の女性会員となるなど、官民問わず要職に就くことが多くなった。「当時の鳥取には女性のプレーヤーがまだ少なかったこともあり、私は周囲から女性活躍のロールモデルとして育ててもらった」(福嶋氏)という。

チャンスを生かし、風に乗って飛び上がって

女性たちに挑戦と飛躍を呼び掛ける福嶋氏
女性たちに挑戦と飛躍を呼び掛ける福嶋氏

図らずも「ジェンダー平等」「働きがい」のロールモデルをつとめる格好となった福嶋氏は、昨年5月に中小機構から中小企業応援士を委嘱されたこともあり、今や応援する立場となった。そして、自身がそうであったように、とくに起業を志す女性たちをサポートしたいと考えている。

「チャンスや能力は誰にでもあるものではない。もしそれらがあれば挑戦してほしい。風が吹いているときには、その風に乗って飛び上がってほしい。夢を夢で終わらせず、実現してもらいたい」。SDGsの目標実現に取り組むとともに、女性たちに挑戦と飛躍を呼び掛けている。

企業データ

企業名
ブリリアントアソシエイツ株式会社
Webサイト
設立
2004年6月2日
資本金
300万円
従業員数
22人
代表者
福嶋登美子 氏
所在地
鳥取県鳥取市大榎町3-3
事業内容
サービス業(飲食・観光) 、食品加工業

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