「出勤停止」と「自宅待機」の違いについて、定義、法的性格と根拠、賃金請求権の有無とその期間に分けてみていきます。
【定義】
「出勤停止」とは、服務規律違反に対する制裁として労働契約を存続させながら労働者の就労を一定期間禁止することをいいます。
一方、「自宅待機」とは、解雇や懲戒解雇の前置措置として、それら処分をするか否かにつき調査または審議決定するまでの間の出勤を禁止する、企業が従業員を出社させるのは不適当と認める場合に出勤を禁止することをいいます。 このように「懲戒処分としての出勤停止」と「自宅待機」の違いをしっかりと区別しておく必要があります。
【法的性格と根拠】
「出勤停止」の法的性格は懲戒処分となります。懲戒処分は、懲戒の事由、種類、程度が就業規則に明記されていなければなりません。一般的な就業規則には、懲戒処分の種類として下記のようなものが規定されています。
表1 懲戒処分の種類
| 項番 |
名称 |
意味 |
| 1. |
戒告 |
始末書を提出させず将来を戒めるもの |
| 2. |
譴責 |
始末書を提出させて将来を戒めるもの
(戒告に加えて始末書を提出させるもの) |
| 3. |
減給 |
給与を減額するもの |
| 4. |
出勤停止 |
一定期間の出勤を禁止するもの |
| 5. |
昇格停止 |
次期の昇格{資格(等級)の引き上げ}を行わないもの |
| 6. |
諭旨退職 |
懲戒処分として、退職届の提出を勧告し、即時退職を求めるもの |
| 7. |
懲戒解雇 |
懲戒処分として、使用者が一方的に即時解雇するもの |
懲戒処分を有効にするためには、上記のように就業規則に明記しておかなければならない明確性の原則に加えて、法令制限遵守の原則、不遡及の原則、二重処分禁止の原則、平等性の原則、相当性の原則、適正手続きの遵守の原則があります。ここでは、これらの詳細な記述は省略します。
一方、「自宅待機」の法的性格は、業務命令となります。会社が有する業務命令権によって、従業員に「自宅で待機する」という労務の提供を求めるものです。
【賃金請求権の有無やその期間】
出勤停止期間中は、一般的には賃金を支給しません。また、出勤停止期間に法令上の制限はないため、公序良俗に反するような著しく長期間に渡るものでない限り、上限期間の有効性が否定されることはないと思われます。判例をみると、生理休暇の不正取得を理由になされた6箇月の懲戒処分につき、3箇月を限度で有効とした判例があります。
実際のところは、出勤停止とする期間を1週間以内または10-15日程度とするのがほとんどです。民間のシンクタンクの調査をみても、出勤停止を設けている上場企業の約9割は、出勤停止期間の上限を1箇月以内としているようです。なお、退職金などの算出根拠となる勤務年数などに当該期間を算入しないのが一般的です。
一方、自宅待機期間中は、「自宅で待機する」という労務の提供を求めるため、原則として、賃金の支払義務が生じます。ただし、下記のように一定の条件があれば、賃金支払義務が免除されるという判例もあります。
- 労働者の方から就労を拒否している場合であって、そのことについて使用者に責任がない場合
- 不正行為の再発、証拠隠滅のおそれがあるために自宅待機させた場合 など
簡単に図示すると、次のとおりです。
表2 出勤停止と自宅待機の違い
| 項目 |
出勤停止 |
自宅待機 |
| 法的な性格 |
懲戒処分 |
業務命令 |
| 根拠となるもの |
就業規則(懲戒処分)を適用 |
業務命令権 |
| 賃金請求権 |
無給 |
有給(休業手当) |
| 対応期間 |
1週間以内/10~15日程度 |
調査又は審議決定するまでの間 |
「出勤停止」や「自宅待機」をするときには、これらの違いをしっかりと認識をして、弁護士や社会保険労務士などの専門家に確認しながら、適切な対応をすることが肝要です。
※このQ&Aにおける自宅待機は、懲戒処分を前提とした「出勤停止」と「自宅待機」を比較したものです。ウイルスの大流行などにより、会社が休業を余儀なくされた場合の対応とは異なりますので、ご注意ください。
仕事の減少による自宅待機を社員に命じるときの注意事項についてはこちらをご覧ください。