【目標管理制度(MBO)とは】
目標管理制度(MBO;Management By Objectives)は、1950年代から60年代にかけて、米国の経営学者、ピーター・ドラッカーらによって提唱されたプログラムで、個々の担当者に自らの業務目標を設定・申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理する手法です。
MBOにおける目標設定は、「個人のモチベーションアップ」と「組織目標と個人目標のリンク」の二つの視点から検討して行きます。各々における目標設定のポイントと、目指すべき状態を表1に示します。
表1 目標設定のポイントと目指すべき状態
| 視点 |
目標の設定ポイント |
目指すべき状態 |
| 個人のモチベーションアップ |
- 自発的な目標設定
- 期待される成果を具体的に述べる。
- 測定や評価出来る形で表現する。
- 目標を完了すべき期間を明確に定める。
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すべてのメンバーの目標が連鎖している(目標~手段の体系として連なっている)。 |
| 組織目標と個人目標のリンク |
- 上位から下位の階層に順番に目標を設定していく。
- 目標設定の後、達成方針を提示する
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【個人のモチベーションアップ】
まず「どうすれば個人のモチベーションを高め、その能力を最大限に発揮できるか」という観点からは、「自発的な目標設定」が要求されます。MBOでは、目標を自ら設定することが重視されていますが、その理由を理解するには「ノルマによる管理」と「目標による管理」の違いを認識することが必要です。
「ノルマ」とは、ある作業者(もしくはグループ)に対して「一定期間内にどれだけの成果をあげなさい」という形で示される「数値的な責任や義務」を指しています。
一方の「目標」も、「いつまでに、何を、どれだけやるか」を明確にしたものである点は、ノルマと大きな違いはありません。しかしMBOでは、両者には「上位者から与えられるか、自ら設定したものか」という違いがあるとされています。
つまり、上位者から与えられた「ノルマ」は、メンバーにとって苦痛以外の何物でもありませんが、自ら設定した「目標」は、何とかそれを達成しようという意欲を喚起するカンフル剤になると考えているのです。
とは言え、メンバー自らが設定した目標であれば、どのような内容でもよいというわけではありません。
MBOにおける目標は、「期待される成果を具体的に述べたもの」でなければなりません。たとえば、ただコストを削減したいとか、サービスの向上を図りたい、品質を向上させたいというだけでは不十分です。このような「願い」を、測定や評価ができる形で表現して、はじめて「目標」となるのです。具体的には、「部門のコストを7%削減する」、「サービスの向上を図り、すべての電話注文を受けつけてから24時間以内に確実に処理する」、「品質を向上させ、返品を販売量の1%以下にとどめる」といった形にするのです。
併せて、それぞれの目標を完了すべき期間も明確に定めるようにしましょう。目標の設定も含め、このとき留意することは、上位者とメンバーが面接において十分話し合った上で決定することです。双方確認することが重要です。
さて、メンバーが自ら目標を設定することで、モチベーションが高まり、一人ひとりが仕事に意欲的に取り組むようになったとしても、みんながバラバラの方向を向いて努力していたのでは、組織全体の成果につながりません。そこで、MBOのもう一つの柱である「どうすれば個々人の活動を組織全体の成果に結び付けることができるか」が問題となります。
MBOでは、個人の目標達成が組織全体の目標達成に結び付くような工夫が必要になってきます。これが「組織目標と個人目標のリンク」です。
【組織目標と個人目標のリンク】
組織目標と個人目標の統合は、具体的には次のように進めます。まず、メンバーが一斉に目標設定をしたのでは、皆がバラバラの方向を向いてしまう可能性がありますので、組織がピラミッド構造をしていることを前提に、部門トップから目標設定をはじめ、トップの目標設定が終わったらその下の管理職が、そしてまたその次へと、上位から下位の階層へと順番に目標設定を行っていく—という方法が考えられました。
ここで注意したいのは、リーダーは自分の目標設定を終えた段階で、「その目標をどのようなやり方で達成していくか」という方針を提示すべきであるという点です。これによりメンバーは、リーダーの目標と方針を受け、上位の目標を達成するために自分は何をすべきか、あるいはどこまでやるべきかを、その方針の範囲内で検討することができるようになるのです。
つまり、上位目標と方針が提示されることで、メンバーが設定する目標に一定の方向性を与える(制約を加える)ことができるというわけです。これによって、最終的には組織全体の目標とメンバー一人ひとりの目標が有機的に結び付くのです。
このように、すべてのメンバーの目標が「目的—手段の体系」として連なった状態のことを「目標が連鎖した状態」と呼びます。これこそが、組織の業績を向上させる秘訣となります。この状態を目指して、目標管理制度を上手に運用してください。