ビジネスQ&A

アフターコロナにおけるSDGsの取組み方について知りたい。

2022年 3月23日

「SDGs」について、当社でも勉強し取組みを開始したところでしたが、コロナ禍もあって非接触対応や資金繰りなどに追われ「SDGsどころではない」状況になっていました。少し落ちついたので、また取組みを再開したいと思いますが、どのような点に気をつけたらいいでしょうか。

回答

コロナの影響で全世界的に取組みが停滞したかのように感じられる時期はありましたが、SDGsの重要性は変わりませんし、むしろ高まった部分もあります。以下に示すように「見極め」「見直し」「見通し」がキーワードです。

コロナ以前のSDGs

コロナ前のSDGsは一種のブーム的な要素があり、既存の取組みをSDGsと結びつける「ラベル貼り」にとどまっているという批判がされることもありました。持続的な社会を実現しなければ、資源の枯渇や気候変動による環境破壊が社会・経済の混乱を引き起こし、生命の危険にまで及ぶ、と理屈ではわかっても「自分ごと」として意識するには限界があったように思われます。ピンとこないまま、とりあえずSDGsに取り組んだために、本業とは別の取って付けたような活動になってしまったり、周囲に向けたパフォーマンスの意味合いが強くなってしまったりする傾向も否定できませんでした。

1. コロナ禍により、変わったこと・変わらないことを「見極める」

コロナ後に変わったこと

コロナ禍を経て人々の行動・生活意識が大きく変わり、ライフスタイルのオンライン化・インドア化が進んだことで、商品・サービスの需要も変動しました。それに伴い、生産体制・提供方法・決済手段などの変更対応が必要となりました。また、人と人がリアルに対面で接触することを前提に設計されていたビジネスにおいてはビジネスモデルの変更や事業自体の転換まで、大きく変化しました。

世界の遠くで起こったことが身近な生活に多大な影響を与えるという体験、感染症を抑え込むにはグローバル社会の協力が必要という実感、経済活動は環境・社会の影響を受ける脆いものであるという認識など、危機感の共有を通じて人々の意識も大きく変わりました。世界的な環境意識・社会意識の変化により、脱炭素やESG(環境・社会・ガバナンス)投資など、ここへきてグローバルな取組みはいっそう加速した感もあります。

コロナ後も変わらないこと

一方、持続可能な社会実現のため「誰一人取り残さず」環境問題・社会問題・経済問題を解決していこうとするSDGsの基本理念は不変です。もともとゴール3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットの一つに「伝染病の根絶・感染症への対処」は挙げられていました。コロナ禍はSDGsの先見性・普遍性を証明する機会になるとともに、取組みを怠るとどのような危機に陥るかを示す警鐘ともなりました。

また、コロナ禍の発生に関わらず、自然災害や経済格差、不正労働などESG問題の危機的状況は変わらずに続いています。

2. 変化を受けて取組みで変えなければならない点を「見直す」

変化したことと変化しないことを見極めたら、これまでの取組みについての見直しが必要です。コロナ禍の変動が事業に影響している場合、以前に設定した取組みや目標を見直す必要が出てきます。例えば、ある製品での廃棄物の量を削減する目標を立てていたとしても、製品自体の需要が減り生産量が減っているようなら、取組みの有効性や目標値の再検討が必要です。また、コロナにより労働環境が変化して従業員への負荷が増えているようなら、従来は設定していなかったワーク・ライフ・バランスに対する取組みを新設したり、これまでは優先度が低かったテレワーク推進の取組みを強化したりといった対応が必要です。さらに、コロナ禍で事業の存続リスクが高まっているなら、より困難な課題への挑戦や経営者が率先しての活動推進が必要になってきます。

いずれにしても、過去の取組みを漫然と復活させるのではなく、これを機会に一度見直してから改めて取り組むことが重要です。

3. 変化をチャンスと捉え、将来を「見通す」

見直しの際には、既存の取組みについてだけでなく、事業の将来性を考慮した新しい取組みについても検討しましょう。特に、コロナ禍によりこれまでの事業からの転換を図っていく必要がある場合は、SDGsを手掛かりに将来を見通していくことが有効です。SDGsの活用により、社会課題の解決を取り込んだ中長期的な成長事業を構想しやすくなり、目先の対応に陥る危険性を減らすことができます。これまではマイナスの回避のために活用されることが多かったSDGsですが、今は積極的な価値創造の手がかりとしての側面が注目されています。

変化が少ない環境では、どうしても既存の延長線上にある取組みに終始してしまいがちですが、大きな変化を迫られている今の状況はある意味で飛躍のチャンスでもあります。中小企業にとっては、今まで以上にSDGsを「本業に組み込む」ことの重要性が高まっていると言えるでしょう。

回答者

中小企業診断士 橋本 良一