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中小企業から日本経済再生のカギを読み解く:一橋大・野中名誉教授と豊永理事長対談

2023年 4月 25日

野中郁次郎氏(右)と豊永厚志理事長

一橋大学名誉教授で中小企業大学校総長の野中郁次郎氏が、中小企業をテーマにした書籍の出版に向けて、中小機構の豊永厚志理事長と対談した。長期低迷する日本経済の再生に向けて必要なものは何か、中小企業の経営から学ぶべきポイントなどについて意見を交わした。

野中氏は、日本の企業経営について「失われた30年は、知的イノベーション力が劣化したからではないか。その大きな要因として、アメリカ型経営をモノマネした論理分析の偏重にある。数値や量が先行すると、人間の創造性やチャレンジ精神などが阻害されてしまう」と問題提起した。一方、豊永理事長は「古い手法を頑なに守ろうとする意志も働いていたのではないか。新しいものを生み出せばいいが、入れようとしない風潮があったようにも感じる」との見方を示した。

中小企業の経営から学ぶべきポイントについて、豊永理事長はコロナ禍で回復が早かった中小企業の事例を紹介。「回復には2つのタイプがある。ひとつは事前にITやDX、他社との提携をやっていたところ。もうひとつのタイプは仲間に『この方向に進んでいこう』と呼びかけて、一緒に同じ方向に進んでいくような取り組みをしたところは回復が早かった」と指摘した。

これを受けて、野中氏は「日本の元気な中小企業では、理想とする共通善を求めつつ、現場・現実・現物の只中で共感し、知的対話でコンセプトを作って新しいものを生み出し、実践するプロセスがきちっと習慣化されている。そういう会社にはイノベーションがたえず生まれる。これは日本的経営がもともと持っていた底力だと思う」と語った。

野中氏は書籍の出版に向けて、元気印の中小企業の経営者とも対談を重ねており、こうした経営者の取り組みや考え方から日本経済復活の答えを紐解いていく。