事業承継・事業再生

事業承継の円滑化のための支援策

2022年1月内容改訂

最近では、新聞記事やニュースで「事業承継」という言葉を聞かない日はないほど、中小・小規模事業者の事業承継問題が話題になっています。国は事業承継を最重要課題と位置づけ、円滑な事業承継のための支援策を多数用意しています。

事業承継の支援策を活用しよう

日本経済を支える中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継は、国を挙げて最優先で取り組むべき課題です。しかし、事業承継対策は往々にして後回しにされがちです。

2021年版「中小企業白書」では、これまで経営者年齢のボリュームゾーンだった団塊の世代の経営者が引退している一方で、70歳以上の経営者の割合が2020年も高まっていることから、経営者年齢上昇に伴い、事業承継が進んでいる企業とそうでない企業に二極化している、としています。

【年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布】

出典:2021年版「中小企業白書」P.II-306

ここでは、事業承継の支援策やツールの概要をご紹介します。これらを上手に活用して、早期に円滑な事業承継の一歩を踏み出しましょう。

経営承継円滑化法による事業承継円滑化に向けた総合的支援

現経営者が後継者に事業を承継する場合、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」に基づいて、次の(1)~(3)のような事業承継の円滑化に向けた支援を受けることができます。

事業引継ぎ支援事業

事業承継には、親族承継と親族外承継があります。さらに、親族外承継は役員や従業員への承継と、M&A等の社外への承継に分けることができます。

事業承継に関する制度

※遺留分とは、相続人が最低限受け取ることができる民法上の遺産割合のことをいいます。現経営者に自社株以外の財産がほとんどない場合には、相続時に後継者以外の遺留分権利者が得られる遺産が遺留分に足りないことがあり、そのときは後継者が遺留分権利者から「遺留分に相当する金銭を支払う請求(遺留分侵害額請求)」を受ける可能性があります。

20年ほど前は、親族内承継が全体の約9割を占めていましたが、ここ10年で親族内承継が激減し、親族外承継が6割超となっています。

「事業引継ぎ支援センター」では、国の事業引継ぎ支援事業として、後継者のいない中小・小規模事業者の事業引継ぎを支援しています。具体的には、事業引継ぎの専門家が、後継者のいない中小企業・小規模事業者とその経営資源を引き継ぐ意欲のある中小企業者等に対して、助言、情報提供、M&Aのマッチングを支援しています。「事業引継ぎ支援センター」を事業承継の相談先の1つとしてご活用ください。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等及び、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度です。

この補助金は、(1)経営革新と、(2)専門家活用の2種類の補助金から構成されています。

(1)の経営革新には、さらに【I型】経営者交代型、【II型】M&A型の2種類があります。また、(2)専門家活用には、【I型】買い手支援型、【II型】売り手交代型の2種類があります。

類型ごとに要件や補助上限額が異なりますので、詳細は以下のWEBサイトにてご確認ください。

中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業(よろず支援拠点全国本部)

中小企業・小規模事業者の高度で専門的な経営課題に対し、課題に応じた専門家派遣等を支援する事業があります(「よろず支援拠点」)。「よろず支援拠点」は全国各地にありますので、事業承継でお悩みの際の相談窓口としても利用できます。

中小企業成長支援ファンド

新事業展開、事業の再編・承継等により新たな成長・発展を目指す中小企業者は、中小機構のファンド出資事業のファンドによる資金提供や販路拡大等の経営支援を受けることができます。後継者不在等の問題を抱える中小企業は、検討してみてください。

事業承継に関するパンフレット

中小企業の円滑な事業承継のために、中小企業庁から「経営者のための事業承継マニュアル」や「事業承継ガイドライン(平成28年12月)」が公表されています。

「経営者のための事業承継マニュアル」には、「事業承継自己診断チェックシート」が付録としてついており、事業承継の状況について簡単にチェックすることができます。また、どちらのパンフレットにも事業承継のサポート機関としてどのような機関があるかも記載されていますので、参考にしていただければと思います。

個人事業者の事業承継

平成31年度税制改正で、個人事業者の事業承継を促す「個人版事業承継税制」が創設されました。2019年1月1日から2028年12月31日の間に行われる相続・贈与が対象となります。以下のような、事業を行うために必要な多様な事業用資産の相続・贈与に対し、納税額の全額(100%)が納税猶予となります。

まとめ

  1. 国は事業承継を最重要課題と位置づけ、円滑な事業承継のための支援策を多数用意している
  2. 経営承継円滑化法による事業承継円滑化に向けた総合的支援には、1)遺留分に関する民法特例、2)金融支援、3)税制措置(事業承継税制)の3つがある
  3. 「事業引継ぎ支援センター」では、国の事業引継ぎ支援事業として、後継者のいない中小・小規模事業者の事業引継ぎを支援している
  4. 事業承継を契機として新しい取り組み等を行う場合などで事業承継・引継ぎ補助金が活用できる
  5. 「よろず支援拠点」は、事業承継で悩んだ際の相談窓口として利用可能
  6. 後継者不在等の問題を抱えている場合は、中小企業成長支援ファンドによる資金提供や販路拡大等の経営支援を受けることも考えられる
  7. 個人事業主の事業承継を促進するため、個人版事業承継税制がある(2028年12月31日までの時限立法)