コロナ禍をきっかけに事業を見直し、再構築するための7つのステップ

第7回 ステップ(6) 再構築の方向性を事業再構築補助金などで「見える化」しよう

2021年2月09日

当初のステップ(6)は、「再構築の方向性を経営革新計画などで「見える化」しよう」としていましたが、3月に「中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)」の公募開始が見込まれることから、経営革新計画を事業再構築補助金に読み替えて考えていきたいと思います。 というのも、「補助金申請書=事業見直し・再構築計画」になるからです。 なお、事業再構築補助金の最新情報は経済産業省のホームページで随時ご確認ください。

中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)リーフレット(2月6日現在)
中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)リーフレット(2月6日現在

1.中小企業への補助額100万円~1億円の「事業再構築補助金」

予算総額1兆1,485億円におよぶ、令和2年度第3次補正予算の目玉事業のひとつになります。個々の中小企業への補助額は100万円~1億円(2/3補助)となっており、近年の中小・小規模事業者向けの補助事業と比較すると、予算規模や補助額が大きいことからネット上の記事も多く注目を集めているようです。 しかし、気をつけないといけないことは「補助率は2/3であり、1/3は自社から資金が流出する」という点です。「補助金を受け取る」ことが目的になり、「投資対効果」で採算性の見込みがない投資を行ってしまうと、コロナ禍で厳しくなっている事業をさらに追い込むことになるので注意してください。

2.経済産業省のリーフレットに例示された「事業再構築補助金」の活用イメージ

経済産業省作成のリーフレットでは、事業再構築補助金の活用イメージが業種毎に例示されています。

中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)リーフレット(2月6日現在)
中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)リーフレット(2月6日現在)

この活用イメージ一つひとつは限られた文字数で書かれているため、目を通された方によっては「風が吹けばおけ屋が儲かる」的に感じるかも知れません。しかし、本シリーズ「コロナ禍をきっかけに事業を見直し、再構築するための7つのステップ」の第1回から第6回までのすべてに目を通していただいた皆さまには、「なるほど!そういう視点もあるのか!」と感じる方もおられるかと思います。
大切なことは、

コロナ禍という環境変化を受けて採算可能性ある事業見直し・再構築に取組む

ことであり、あくまでも補助金は「事業見直し・再構築のための最も有利な資金調達手段」のひとつであることを忘れない点にあります。
例え補助金があってもなくても、事業見直し・再構築に取組むこと自体は揺らぎません。第1回から第6回でお考えいただいた方にはおわかりいただけると思います。

3.事業再構築補助金の特徴は何か

ハンバーガーチェーンのマクドナルドは、2020年12月決算で営業最高益を計上しました。売上の過半はテイクアウトであり、さらにドライブスルーの売上が好調といいます。
第5回「ステップ(4)コロナ禍で変化した顧客や世の中のニーズを読み取ろう」で考えたとおり、「店内飲食よりもテイクアウト」「店に入るテイクアウトよりは車の中で買うことが出来るドライブスルー」が、いまのニーズなのでしょう。

ドライブスルーで商品を購入するイラスト

今回の事業再構築補助金は、従来の中小・小規模事業者向けの補助金ではなかった「建物費」「建物改修費」が対象となっている点が大きな特徴となっています。

駐車場をお持ちの飲食店であれば、ドライブスルー用に建物を改修して「店に入るテイクアウトよりは車の中で買うことが出来るドライブスルー」というニーズに応えることもあり得るかも知れません。
また、「既存事業を縮小・廃止しないと事業再構築補助金は申請できませんか」というご質問を多くいただきます。今後公開される公募要領を確認することが第一義ですが、事業の現場では「再構築した事業の採算性を見ながら既存事業の整理を行う」という世界も多くあります。
まずは「どう事業を見直し・再構築するか」に集中した上で、今後公開される公募要領を確認しましょう。

4.事業見直し・再構築の方向性を練った上で補助金申請書を使って「見える化」しましょう

補助金申請は採択されるに越したことはありませんが、たとえ不採択になったとしてもムダなことはありません。なぜなら、補助金を申請すること自体がご自身の事業の見直し・再構築のあり方を深く考える行為であるからです。よって大切なことは、商工会・商工会議所、認定経営革新等支援機関、補助金コンサルティング会社などに、ご自身の事業のあり方を「丸投げ」しないことです。
ご自身の事業を一番知っているのはご自身です。まずは、本シリーズ「コロナ禍をきっかけに事業を見直し、再構築するための7つのステップ」の第1回から第6回に今一度お目通しいただき、事業の方向性を考えてみましょう。その上で各支援機関に相談してみてください。

次回第8回(最終回)は、「ステップ(7) 事業を見直し・再構築のするために様々な支援制度を活用しよう」をテーマに、事業再構築補助金以外の施策活用を含めて考えていきます。

文責

中小機構 中小企業支援アドバイザー 古川忠彦