市場調査データ

eラーニング

2023年2月8日

社会のデジタル化に伴い、近年、着実な成長を続けてきたeラーニング。コロナ禍の影響を受けて多くの組織で研修のオンライン化が進み、各種調査でも法人向け、個人向けを問わず、eラーニング市場が大きく伸長したことが報告されている。では、eラーニングに対する個人の利用実態や今後の利用意向はどうなっているのか。20代以上の男女1000人に聞いた。

1.現在の利用状況

〈図a〉eラーニングの利用状況(n=1000)
〈図a〉eラーニングの利用状況(n=1000)

eラーニングの利用状況を聞いた設問において、「まだ一度も利用したことがない」が708人(70.8%)で最多となり、次に「かつて利用したことがある」の148人(14.8%)が続く結果となった。「週に2、3度」から「年に数度」までを合わせた現在の定期ユーザー数は144人(14.4%)。性別、年齢を問わず多くの非ユーザーが利用しない理由として記述式自由回答欄で指摘していたのが、「必要性を感じない」「興味がない」「特に学びたいものがない」という点。また、「パソコン操作が苦手」「オンライン学習の環境がない」「そもそも『eラーニング』とは何かがよく分からない」という意見も散見された。

2.利用分野

〈図b〉eラーニングの利用分野(n=1000)
〈図b〉eラーニングの利用分野(n=1000)

eラーニングでどのようなテーマを学んでいるかを聞いた設問において、「まだ一度も利用したことがないのでわからない」を除き最多となったのは、「ビジネスセミナーなどを含むスキルアップ系」の140人(14.0%)。その後に「各種検定等を含む資格取得系」(65人)「英会話などの語学系」(63人)が続いた。それ以外の運動系18人(1.8%)や趣味関連11人(1.1%)はいずれも1%台にとどまり、全体的にはビジネスなどで必要とされるであろう分野を学ぶ傾向が強く表れた。記述式自由回答欄においても、自分のキャリア等における「必要性」について言及した回答が多数見られた。

3.コロナ禍の影響

〈図c〉コロナ禍がeラーニングの利用に与えた影響(n=1000)
〈図c〉コロナ禍がeラーニングの利用に与えた影響(n=1000)

コロナ禍がeラーニングの利用に与えた影響に関しては、「興味を感じることも、影響もなかった」が561人(56.1%)と最多となったが、「初めて利用するきっかけになった」が59人(5.9%)、「利用頻度が増えた」が61人(6.1%)、「むしろ利用が減った」が129人(12.9%)と、コロナ禍によってeラーニングの利用に何らかの影響があったという回答は約25%に及んだ。そのほかに注目したいのは「興味は増したが、結局利用に影響はなかった」という、実際の利用には至らなかったものの、eラーニングへの意識が前向きに変化した層が190人(19.0%)も存在した点だ。記述式自由回答欄においても、「在宅勤務でできた時間を有効活用したい」「オンライン学習への抵抗が少なくなった」「非対面で気軽に学習できる」など、コロナ禍がeラーニングへの意識向上につながったことをうかがわせる回答も数多く見られた。

4.eラーニングの利用にかける費用

〈図d〉eラーニングの利用にかける月額の費用(n=1000)
〈図d〉eラーニングの利用にかける月額の費用(n=1000)

eラーニングの利用にかける月額の費用感について聞いた設問で、「まだ一度も利用したことがないのでわからない」を除いて最多となったのは、「無料動画投稿サイトなどの活用に限っているため0円」の215人。記述式自由回答欄においても「費用感」を意識した回答が多く、「お金を出してまで学習したいとは思わない」「(無料の)ユーチューブがあるから不要」「eラーニングを利用しなくても無料アプリなどで勉強できる」といった意見も多かった。一方で、費用をかけている層も合わせると93人(9.3%)となり、全ユーザーのうち3割程度はコストをかけてeラーニングを利用していることがわかった。eラーニングの事業を行うにあたって価格について考えるなら、「学びに対価を払っても良いと考える顧客層の見極め」と「提供価値と価格設定のバランス」がポイントとなりそうだ。

5.今後の利用意向

〈図e〉今後の利用意向(n=1000)
〈図e〉今後の利用意向(n=1000)

eラーニングに対する今後の利用意向を聞いた設問では、「ぜひ利用したい」(87人)と「どちらかと言えば利用したい」(174人)と答えた人の合計は261人(26.1%)。一方、「あまり利用したくない」(95人)と「全く利用したくない」(258人)という消極的な回答をした人の合計は353人(35.3%)となった。注目すべきは、最多となる386人(38.6%)が「どちらとも言えない」を選んだことだろう。記述式自由回答欄では、「自分にとって必要な機会があればまた利用するかもしれない」「資格取得などに備えて今後、利用するかもしれない」「必要な分野のeラーニングがあったら考える」など、多くの人が「必要性があれば利用を検討する」と指摘している。この「必要性」を上手に捉えることができれば、先の利用意向を持つ26.1%の層に、この「どちらとも言えない」という中間層を足した6割以上がターゲットになり得るかもしれない。

6.性別・年齢別の今後の利用意向

〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)
〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)

また、今後の利用意向について、性別と年齢別に捉えた〈図f〉を見ると、「どちらかと言えば利用したい」「ぜひ利用したい」を合わせた積極的な回答の割合が最も高かったのは、20代男性。次に続いたのは50代男性だったが、そのほかは男女ともに年齢が若いほど積極的な姿勢が高い傾向があるという結果になった。eラーニングを利用しない理由として、記述式自由回答欄では「忙しさ」を挙げる回答が多数あったことを踏まえると、50代男性は「仕事による忙しさが一段落して、自己研鑽への意欲が高まった」と考えることもできそうだ。

7.まとめ(ビジネス領域としてのeラーニング)

今回のアンケートでは、eラーニングの定期ユーザーは全体の15%弱となり、「コロナ禍によってeラーニングの利用が大きく拡大した」というイメージ通りの結果にはならなかった。ある程度の利用者はいるものの、「社会に定着した」というにはまだ至らない数字だろう。しかし、コロナ禍による影響を尋ねた質問で「(結局利用に影響はなかったが)興味は増した」という回答が2割弱あったことは注目すべき点だ。eラーニングは、例えば食料のように生活にとって不可欠なものではなく、前述のとおり「必要性を感じない」「興味がない」といった回答も多く見られた。つまり関心を持つ層と持たない層が大きく分かれることが特徴といえる。そうした分野において関心を持つ層が2割近く増えたということは、ある意味で大きなチャンスといえるかもしれない。この機会を生かすには、「自分にとって必要かどうか」で判断するという利用者のニーズをしっかり捉えた上で、価格に見合った価値あるコンテンツを提供できるかがポイントとなりそうだ。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査期間:

2022年11月16日〜11月19日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2023年2月

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