市場調査データ
コワーキングスペース/レンタルオフィス
2023年3月22日
コロナ禍や働き方改革の進展などもあり、近年、ビジネスの現場に急速に浸透したテレワーク。それに伴い、存在感を増しているのがコワーキングスペースやレンタルオフィスだ。駅の中などに個室スタイルのスペースを見かけることも多くなった。では実際、こうした施設の利用状況や今後の利用意向はどうなっているのか。20代以上の男女1000人に対するアンケートの結果から、ビジネス領域としてのコワーキングスペース/レンタルオフィスの可能性を考察する。
1.現在の利用状況
コワーキングスペース/レンタルオフィスの現在の利用状況を聞いた設問において、大多数の929人(92.9%)が「まだ一度も利用したことがない」と回答した。このアンケートの対象者は、主婦やリタイア層なども含む消費者全般であるため、そもそもこのような施設を必要としない人も多数含まれる。ただ記述式自由回答欄では、「自宅でできる」というテレワーク実践者からのコメントも多く、ほとんどが「テレワーク=自宅での仕事」と捉えているようだ。なお、そのほかの71人のうち「かつて利用したことがある」が41人。つまり、このアンケート調査においては、コワーキングスペースやレンタルオフィスの現在のユーザー数は30人(3.0%)にとどまっているということがわかった。
2.利用時間
コワーキングスペース/レンタルオフィスを1日にどのくらい活用するかを聞いた設問においては、「まだ一度も利用したことがないのでわからない」(929人)を除くと、「1時間〜3時間未満」が30人(3.0%)、「3時間〜5時間未満」が21人(2.1%)、「5時間〜8時間未満」が11人(1.1%)、「1時間未満の短時間利用」が6人(0.6%)、「8時間以上」が3人(0.3%)の順となった。就業時間のベースを1日8時間と捉えるなら、その全てをコワーキングスペースやレンタルオフィスで過ごすという人はユーザーの中でも少数派のようだ。記述式自由回答欄では「取引先を回る時に利用すると効率がいい」「隙間時間を有効活用できる」など、短時間のスポット利用の価値を訴える声があった。
3.利用の決め手
コワーキングスペース/レンタルオフィスを選ぶ基準について聞いた設問において、「利用したことがないのでわからない」(813人)を除くと、「コスト」の59人(5.9%)と「立地・アクセス面」の55人(5.5%)がほぼ横ばいで並び、「設備の充実度」(42人)がそれに続いた。何に重きを置くかはユーザーごとに異なるようだ。そのほかは「利用のしやすさ」(23人)、サービス面(8人)の順となった。
4.コロナ禍の影響
コロナ禍がコワーキングスペース/レンタルオフィスの利用に与えた影響に関しては、「初めて利用するきっかけになった」が28人(2.8%)で、「利用頻度が増えた」が11人(1.1%)。全体からすると小さな数字に見えるが、現・旧ユーザーが71人(7.1%)であることを踏まえると、そのうちの半数以上はコロナ禍によって利用に積極的な影響を与えられたことになる。また、「必要性は感じたが、結局利用に影響はなかった」の155人(15.5%)は、全体からしても決して少なくない数字だろう。これにコロナ禍で利用に積極的になった層を加えた2割程度が、同ビジネス領域の現在のターゲット層と捉えることができそうだ。
5.今後の利用意向
コワーキングスペース/レンタルオフィスに対する今後の利用意向を聞いた設問では、「ぜひ利用したい」(27人)、「どちらかと言えば利用したい」(102人)という積極的な利用意向を持つ人の合計が129人(12.9%)。ここに、利用への含みを持たせた「どちらとも言えない」の396人(39.6%)を加えた525人(52.5%)が、今後、ターゲットになり得る層と考えられる。繰り返しになるが、このアンケートの調査対象にはそもそもテレワークを必要としない人も含まれる。それを踏まえると、テレワークを必要とする層はコワーキングスペース/レンタルオフィスに大きな期待を寄せていると考えられそうだ。実際、「誘惑の多い家でやるより集中できそう」「子どもがいると自宅でのテレワークは難しい」「自宅ではオンライン会議がやりづらい」など、自宅以外の作業スペースを求める声も多数上がっているほか、「本業では必要ないが、副業に有効活用したい」といった声もあった。
一方で、「あまり利用したくない」(103人)、「全く利用したくない」(372人)からは、「必要性の有無」以外に「利用後に清掃が入るなら」「最近消毒を怠る人も増えてきた」など、不特定多数の人と空間をシェアすることの衛生面を懸念する声も聞かれた。また、「近場にそういった施設がない」「そもそもそのような施設を知らない」「利用の仕方がわからない」という声も多数あったが、こうした層は施設の数が増え、適切なプロモーションがなされた場合、ターゲット層に転ずる可能性を秘めているかもしれない。
6.性別・年齢別の今後の利用意向
今後の利用意向について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図f〉を見ると、「どちらかと言えば利用したい」「ぜひ利用したい」を合わせた積極的な回答の割合は、20代男性が突出して高かった。そのほか20〜40代女性、30〜50代男性はほぼ横ばいという結果に。また、積極的利用意向が低かった60代以上男女は、「全く利用したくない」「あまり利用したくない」を合わせた消極的利用意向の割合も高いという結果になった。
7.まとめ(ビジネス領域としてのコワーキングスペース/レンタルオフィス)
今回のアンケートでは、コワーキングスペース/レンタルオフィスの現状のユーザーは3.0%になり、テレワークの浸透が与えた利用増への影響は、現時点ではまだまだ小規模にとどまっているという結果になった。ただ、主婦やリタイア層に加え、記述式自由回答欄で多かった「リモートでできる職種ではない」という層など、このような施設をそもそも必要としない層が一定数いるというアンケートにおいて、今後の積極的利用意向を持つ層と、状況に応じて利用を検討する層を合わせると全体の半数超。これは、今後この領域でのビジネスを考える人にとって心強い数字といえるだろう。
ここまでに挙げた以外にも、利用に積極的な層からは「自宅や会社以外に仕事や趣味をする場所が欲しい」「仕事をするならある程度の設備は重要だ」「最近はおしゃれなスペースも増えた」「24時間使えるなら利用頻度が増えるかも」「今の時代に合っていて便利」などのコメントが寄せられた。一方、消極的な層からは「図書館や喫茶店でいい」「セキュリティや防音が心配」「知らない人とシェアするのが苦手」「利用条件がわかりにくい」「会社が利用を禁止している」「仕事用PCがデスクトップなのでリモートできない」などの声が挙がった。このうちのいくつかは、解決手段を見つけやすい課題といえるだろう。テレワークの普及という時代の後押しを受けながらも、そこにどう自社の独自性を加えていくかという視点が、ビジネス化の糸口になるかもしれない。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
- 調査期間:
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2022年11月19日〜11月21日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2023年3月