市場調査データ

美容院(2023年版)

2023月 11月 29日

私たちの暮らしに欠かせない存在となった美容院。定期的に美容院を利用することを、もはや「生活の一部」と考えるユーザーも少なくない。一方、年々右肩上がりで増え続ける美容院の店舗数は2021年度に26万件超※となり、競争は激しさを増している。コロナ禍を経た美容室ユーザーの利用状況や考え方に変化はあるのか。20代以上の男女1000人を対象にアンケート調査を実施した。

※厚生労働省「令和3年度衛生行政報告例の概況」より

1. 現在の利用状況

〈図a〉美容院の利用状況(n=1000)
〈図a〉美容院の利用状況(n=1000)

美容院の利用状況について聞いた設問において、最多となったのは「2〜3か月に1回程度利用している」の331人(33.1%)。続いて「まだ一度も利用したことがない」が143人(14.3%)で2位となり、「月に1回程度利用している」の133人(13.3%)、「かつて利用したことがある」の128人(12.8%)、「3ヶ月〜半年に1回程度利用している」の124人(12.4%)が僅差で続いた。

現在のユーザー数(利用率)は729人(72.9%)に上り、これは2008年に当サイトで行ったアンケート調査の61%と比ベて11.9ポイントもアップしていることになる。一方、「利用したことがない」という非ユーザーは、08年の30%が今回は14.3%に減少。アンケートの対象や項目等の違いはあるものの、この15年で多くの非ユーザーがユーザーに転じたと考えて間違いなさそうだ。

2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

〈図b〉性別・年齢別に見た美容院の利用状況の内訳(n=1000)
〈図b〉性別・年齢別に見た美容院の利用状況の内訳(n=1000)

美容院の利用状況の性別・年齢別の割合を示した〈図b〉を見ると、男女間の違いが極めて顕著に表れているのがわかる。女性は、60代以上を除く各セグメントでユーザーの割合が90%超に達し、60代以上女性のユーザー割合も90%近くとなっている。一方の男性は、おおむね年齢が上がるほど非ユーザーの割合が増していき、60代以上男性に至っては非ユーザーがおよそ7割。そのうち4割強が「まだ一度も利用したことがない」となった。とはいえ、08年の調査でも女性の利用率は93%だったことから、15年間で利用が拡大したのは男性ユーザーの方と考えられる。その背景には、低価格・小型・スピード重視の店舗が拡大したことや美意識の向上も影響しているかもしれない。

男性に多い美容院の非ユーザーは、代わりに理容室を利用しているケースが多いようで、記述式自由回答欄では「理容室の方が価格面、予約方法などのシステム面において使いやすい」といった趣旨の回答が多く寄せられた。また、「髭剃り」をはじめとするサービス面で、あえて理容室を選択するという声も少なくなかった。提供価値の違いはあるものの「髪型を整える」というユーザーの目的にアプローチする点では重なる部分も多い両業態だけに、こうした声からビジネスのヒントが見つかる可能性もあるかもしれない。

3. 利用の基準

〈図c〉美容院の利用判断の基準(n=1000)
〈図c〉美容院の利用判断の基準(n=1000)

美容院を選ぶ際に最も重視するポイントを聞いた設問において、最多得票となったのが「低価格。スピードや手軽さ」の253人(25.3%)。「スタッフの人柄や店内の居心地の良さ」の220人(22.0%)がそれに続き、「家や職場、最寄駅といった生活圏内からの距離」の182人(18.2%)、「質の高さやメニューの豊富さを含むサービス面」の144人(14.4%)という順になった。

4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳

〈図d〉性別・年齢別にみた美容院の利用の基準の内訳(n=1000)
〈図d〉性別・年齢別にみた美容院の利用の基準の内訳(n=1000)

美容院の利用判断の基準を性別・年齢別に見た〈図d〉の結果も興味深い。女性は各年代で「スタッフの人柄や店内の居心地の良さ」を重視する傾向があるのに対し、この項目を重視する男性は各年代とも比較的少ない。記述式自由回答欄でも、女性からは店員との楽しいコミュニケーションや店員からの的確なアドバイスなどを評価する声が挙がる一方、男性からは「コミュニケーションレスを希望」「話をしたくない。髪の診断などは不要」といった意見が散見された。この辺りの男女間のニーズの違いは、店のコンセプトやターゲットを考える上で重要なヒントとなり得るだろう。

5. 利用にかける費用

〈図e〉美容院1回の利用にかける費用(n=1000)
〈図e〉美容院1回の利用にかける費用(n=1000)

美容院1回の利用にかける費用について聞いた設問において、最も多かったのが「5000円〜1万円未満」の250人(25.0%)で、「3000円〜5000円未満」の208人(20.8%)がそれに続いた。3位以降は「利用したことがない」の138人(13.8%)、「1000円〜2000円未満」の129人(12.9%)、「2000円〜3000円未満」の113人(11.3%)、「1万円〜2万円未満」の111(11.1%)、「1000円未満」の41人(4.1%)の順。2万円以上かけるという超高額ユーザーも10人(1.0%)いるなど、美容院の利用にかける費用には大きな幅があることがわかった。

6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳

〈図f〉性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(n=1000)
〈図f〉性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(n=1000)

美容院1回の利用にかける費用にも、性別・年齢別に傾向の違いが表れた。男性ユーザーはほとんどが5000円未満にとどまっているのに対し、女性は5000円以上を投じている割合が40代50代は6割強、20代・30代・60代以上でも50%前後に及ぶという結果になった。中でも30代・40代女性の20%強は、1回の利用に1万円以上を投じる高額ユーザーとなっている。性別や年代でターゲットを検討する場合、この辺りの傾向を踏まえると押さえるべきポイントが見えてくるかもしれない。

7. コロナ禍の影響

〈図g〉コロナ禍が美容院の利用に与えた影響(n=1000)
〈図g〉コロナ禍が美容院の利用に与えた影響(n=1000)

コロナ禍が美容院の利用に与えた影響に関しては、過半数の556人(55.6%)が「利用頻度にも利用の基準にも影響はなかった」と答えた一方で、「利用頻度が減った」が231人(23.1%)に上ったことから、その影響の大きさを伺い知ることができる。記述式自由回答欄では、「コロナが怖い」「マスクを外さないでOKのところなら(行きたい)」という声も根強くあり、感染を恐れて利用頻度を絞っているという層もまだ一定数いるようだ。

ただ、「影響はあったが、今はまた元に戻った」が163人(16.3%)に上ることからもわかるように、徐々にコロナ前の生活に戻りつつあることはポジティブな傾向といえるだろう。記述式自由回答欄では、「コロナが明けて外に出る機会が増えてきたので、身だしなみにまた気を使い始めた」「美容院はもはや生活の一部。コロナがあっても頻度は変えられない」といった声も寄せられた。

8. 今後の利用意向

〈図h〉美容院の今後の利用意向(n=1000)
〈図h〉美容院の今後の利用意向(n=1000)

美容院の今後の利用意向について、最も多かったのは「ぜひ利用したい」の507人(50.7%)。続く「どちらかと言えば利用したい」の157人(15.7%)と合わせると664人(66.4%)となった。記述式自由回答欄では「家でカットやカラーはできない」「清潔感を保つため」「(美容院を使うと)ヘアスタイルが長持ちする」「癖毛なので定期的に縮毛矯正する必要がある」「美容院に行くと気分がアガる」「ストレス解消、リフレッシュ効果もある」「暑いのでさっぱりしたい」などの声が寄せられた。

一方で、この積極的利用意向を持つユーザーの割合(66.4%)が、現ユーザーの割合(72.9%)を下回っていることにも注目しておきたい。上記の質問で「どちらとも言えない」を選択した人からは「髪が伸びるので仕方なくいっているがあまり好きな空間・時間ではない」「美容院は高いので経済的に難しい」「予約が面倒」といった声が寄せられており、現ユーザーもその全てが現在の利用状況を前向きに捉えているわけではなさそうだ。

9. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図i〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)
〈図i〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1000)

美容院の今後の利用意向について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図i〉を見ると、20代・30代女性は「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」を合わせた積極的利用意向を持つ割合が90%超。そのほかの女性の各年代も90%近くとなった。「自分好みの髪型にしてくれる」「いつまでも若々しくいたい」「コスパがいい」「綺麗にしてもらえると心が満たされる」などの声が上がった。

一方の男性は、積極的利用意向を持つ割合が最も高かった30代男性でも60%弱、最も低い60代以上男性では30%に届かない結果となり、ここでも男女間の意識の差がはっきりと表れた。利用に消極的な層からは「値段が高い」「理容室(床屋)で十分」「美容院は敷居が高くて入りづらい」「バリカンでセルフカットするようになった」などの声が寄せられた。

10. まとめ(ビジネス領域としての美容院)

繰り返しになるが、美容室の現在の利用率は72.9%となり、08年調査時の61%よりも大幅に上昇。また、08年調査時30%だった「美容院を利用したことがない」という非ユーザーの割合は14.3%となるなど、15年前よりさらにユーザー層を拡大させていることがわかった。ただし、当時から女性の利用率は90%超と高かったため、男性ユーザーにも利用が広がったことが利用率拡大の背景にあると考えられる。全国に26万件超がひしめき合うと言われる美容院のビジネスにおいて、新規ユーザーの開拓は選択肢の一つとして有効だが、ここまで説明してきた通り、美容院のユーザーは男女間のニーズや意識が大きく異なるため、どの層をターゲットにするかは慎重に検討した方が良さそうだ。

利用に積極的な層からは、ここまでに紹介した以外に「ハレの日くらいは利用したい」「とても相性の良い美容師さんがいるから」「美容師さんとの会話も楽しい」「髪に関するアドバイスも嬉しい」「クーポンやポイントなどが利用できる」などの声が寄せられた。一方、利用に消極的な層の複数人から上がったのは子供などの親族が美容師なので、美容院に行かずに自宅などで切ってもらっているという声も。目指す人も多い職種だけに、このようなケースは今後も増えるかもしれない。こうした人を含む、髪型を整えるといった美容院の主な提供価値を必要としない人たちにも、例えばネイルやエステなど別の価値を提供してアプローチをしていくかどうかという面なども、ビジネスを考える上での検討課題の一つといえるかもしれない。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2023年7月3日〜7月10日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。サンプル数(n)1000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2023年11月

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